最近、必ず「形(かた)」の稽古を入れていますが、細かなところが曖昧になり、その動作では解釈が異なってくる、というケースを見かけます。
たくさんのポイントを上手く処理しきれていないためでしょうが、一つ一つ丁寧に自分のものにしていき、より質の高いものに磨いていかなければなりません。その為の具体的な方法論の一つが分解・解釈の理解であることを、このブログでも何度かお話ししました。
最近は一緒にというより、各自の課題ごとに行なうことが多く、同じ「形」の場合はグループを作る、という状態で稽古しています。そのため、複数の「形」を同時に見ることになりますが、そういう中での実例をお話しします。
テーマは前述した技の分解・解説に関係し、動作の意味の理解と質に関することになります。
上のイラストは「正整(せいさん)」の最後のほうに出てくる「掬い受け(すくいうけ)」ですが、左側に示されている状態で、両手の間隔が開いている人がいました。
そこでこの状態の解釈について尋ねましたが、何となく理解はしているようです。でも、それではその意に沿ったものではないでしょう、という話になりました。
つまり、この技を一つの行為として理解したにすぎず、形骸化した動作になっていたのです。
同様のケースは他にも散見されましたが、そこからタイトルにあるような「魂を入れる」という表現が出てくるわけです。
では、それに必要な分解・解説ですが、以下のようになります。
相手からの「中段足刀蹴り(ちゅうだんそくとうげり)」を両「掌底(しょうてい)」を用いて「掬い受け」を行ない、そのまま捻るという技です。
そのためには、まず相手の「足刀」をきちんと捕らなければなりませんが、冒頭でお話ししたケースの場合、両手の間隔が広くなっており、それでは「蹴り」が当たっている、という状態だったのです。
当然、その次の展開となる捻る動作も不能になるところから、結果的にこの技には魂が入っていないことになります。
この分解・解説の稽古も、大会シーズン以外の時期、何度かやっていますが、その稽古が意識の下に根付いていなかったのでしょう。こういうチェックを繰り返す中で定着していくことですから、それはそれで良いのですが、一つの事例を通じ、他の箇所でもその意味を考えてもらうようになれば、質の向上が期待できます。今後の課題として取り組んでもらうことを願います。
続いて「二十四歩(にーせーし)」に出てくる「下段双手手刀交叉受け(げだんもろてしゅとうこうさうけ)」の箇所ですが、ちょっとしたところに気が回っていないため、それでは技の意味がなくなっています、という状態でした。
「形」の中ではゆっくり行なうところであり、その分、フォームなどをしっかり観察することができます。そういう箇所では身体の使い方が難しく、だからこそ、あえてゆっくり行なってその際の身体操作をしっかりしたものにする、という意味も含まれています。
そういう稽古で培った身体操作を、実戦の場では素早く行ない武技とするわけですが、稽古の意義を理解せず、曖昧なままに行なうようなことでは、せっかくゆっくり行なう意味がありません。
この技に関する細かなポイントについては先日のブログに書きましたので割愛しますが、「突き」の際の手首の状態を前提とします。
そこでは、相手の技の質も関係し、正しいフォームの「突き」だからこそ、この「受け」も活きてくることになります。「形」として行なう場合は、そのことをベースに、どういうフォームにしたらしっかり相手の手首を捕り、固定できるかということを実際に体験してもらいながら理解してもらいました。この日、「二十四歩」の稽古をしていた人たちは、先日この技について説明した時には欠席していましたので、新鮮だったようです。
この「受け」を用いた時のイラストですが、相手が「下段突き(げだんづき)」で攻撃してきた時を想定したものです。
「形」の中では斜め前に前進しながら「交叉立ち(こうさだち)」になり、そこで受けることになりますが、「受け」のポイントを話した後は、「二十四歩」を稽古しているグループの人たちでこの部分だけを集中して稽古していました。
前述した「正整」の分解・解説の稽古同様、これまで何度も行なっていますが、約束事ということから、上辺だけ動作になっており、まずこの部分がきちんとできていないと、次の展開はない、という実感が希薄だったようです。
捕りのポイントが分かり、自分の動きに問題がある、ということが理解されれば「形」の稽古にも、また武技として行なう時にも質が異なってくるはずですが、それを期待したいと思います。
「二十四歩」の分解・解釈では、ここから2つの技に展開しますが、稽古ではそこまでは説明しませんでした。第一段階である「受け」に特化したわけですが、これは技全体に関わる大切なことと理解してもらい、その後の「形」に活かしてもらいました。
他にもいろいろありますが、長くなりますので、今日はここまでにしたいと思います。
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