抵抗を封じ、無理なく崩す | 中山隆嗣の「活殺自在」

中山隆嗣の「活殺自在」

武道と癒しを中心に、生き方、日々のことを綴ります。

 空手道は打突系と思っている方が多いようですが、本来は武器術も含む総合武術です。当然、投げ技や関節技も存在し、このブログでもそのことは書いてきました。


 今日のお話は崩しからの投げをテーマにしたものですが、これは火曜日の稽古の後半の内容です。前半の稽古は基本を中心に行ない、移動稽古として数をこなしました。その模様は先日、2回に渡って綴りました。その上で今日は後半のお話になるわけですが、ここでは2組に分けました。


 出席者と内容を考慮してのことですが、今日のお話は上級者の組の稽古のことです。もう1組は先輩組の一人に任せ、「基本動作(きほんどうさ)」・「基本型(きほんかた)」を中心の稽古をやってもらいました。


 さて、ここから上級組の稽古の話になりますが、前述したように崩しから投げ技につなげることがテーマです。その際、注意したことは強引な内容にならないようにということで、いかに自然に相手の間合いに入り、相手の抵抗を封じて投げることができるか、という点に留意してもらいました。


 そこには相手の反射の活用であったり、中心軸の崩しの意識などが必要になりますが、どうしても最初は力みがちになることは容易に想像できます。だからこそ、稽古の最初のほうで、自然に崩す、抵抗させない、というイメージについて何度も繰り返し説きました。


 その技のベースは「形(かた)」の動作であったり、千唐流で教授される技であったりしますが、そこに至る過程を重視したのが今回の稽古です。


三十六歩 双手手刀切り上げ  最初に稽古したのが、左のイラストに示される動作からの展開例です。「三十六歩(さんしーる)」の中の「双手手刀切り上げ(もろてしゅとうきりあげ)」と呼ばれる動作ですが、この動作を崩しから投げ技として行ないました。


 その様子を写真にでも撮っておけば説明しやすいのですが、あいにく当日はカメラがなかったので文章だけによる説明になります。


 攻撃する側は、こういう時の定番である「右中段追い突き(みぎちゅうだんおいづき)」です。


 それに対して受ける側はほんの少し左方に動いて相手からの「突き」を捌いて、同時に右の上肢で相手の上肢を巻き込むような感じで捕ります。その時のイメージはイラストの右手同様、掌が上を向くようにし、そのことが捕った側の脇の締めにつながり、しっかりロックしたような状態になります。


 捕った瞬間に腰を落とし、「四股立ち(しこだち)」になります。


 その際、相手の姿勢を崩すことが必要になりますが、脇の締めが甘い、あるいは体幹部と上肢の連動が上手くいかない等の理由で、せっかく捕った相手の上肢を引き落とせず、肩が上がったような状態になっています。これでは相手の姿勢を崩すことにはならず、そうなれば腕力で投げる、ということになります。


 それでも左側の上肢の使い方が上手くいけば、まだ武技らしくはなりますが、この点もなかなか上手くいきません。


中心軸のイメージ   その際、相手の中心軸をいかにうまく崩せるか、ということが大切になりますが、左の「手刀(しゅとう)」が活躍することになります。


 具体的には相手の首に「手刀」を当てることになりますが、ここでは打つというよりも圧しつつ中心軸を相手に意識させないような感じで捻り崩す、という状態にします。


 この時、腕力に頼るような上肢の使い方になれば相手の無意識の反射により抵抗されることが予想されますが、そのような反射を起こさせないような拍子で行なうことで、相手からすれば気付かないうちに崩されていた、という状態を作り出すわけです。


 首に「手刀」を当てるというのは、その部位が人体構造上大変弱い箇所であり、だからこそ刺激の加減により過度な反射を伴わずに崩すことも可能になるのです。


 そこでは首を切るような動きも必要になりますが、そういう微妙なところが文章だけではお伝えできないところであり、実技として経験してもらうところです。


 稽古ではその組全員に崩しの際の身体感覚を体験してもらいましたが、いずれも自然に腰が反るような感じになり、抵抗が叶わなくなりました。そこには微妙な軸の回転と崩しが連動し合っているわけですが、こういうところが「手の内」の部分であり、このブログで「見えない技」と呼んでいるところです。


 さて、一連の流れで腰が反る、ということをお話ししましたが、そこまでになったら後は床に向かって上体を落とすようにすれば技は完了します。ただ、稽古でそこまで行なえば危険なので途中で止めますが、技をかける側に余裕があれば相手が崩れてもそれを支えるだけのことができ、その全体の動作があまりにも自然で見た目にはゆっくりなので本当に投げられるのかと思った人もいるでしょう。でも、実際に自分がかけられると抵抗できないということを実感します。


 後はその経験をベースに稽古してもらうことになりますが、投げることを意識するとどうしても腕力に頼る感じが出てきます。初めての技でもありますので当然なのですが、試合シーズン以外の稽古ではこのような内容が多くなりますので、この時期、ぜひそのような動きを身に付けてもらえればと願っています。


首投げ  続いて行なったのは「首投げ(くびなげ)」の一種です。


 最終的には左のイラストのように上肢を相手の首に巻きつけて投げる、という技です。


 今回の稽古ではここまでの状態する過程を意識してもらい、そこでは「受け」を活用してではなく、体捌きを活用してもらいました。


 相手からの攻撃は前述の場合同様ですが、それに対して右肩を左方向に可能な限り捻り、上体もそれに連動した動きにしてもらいます。もちろん、それに合わせて左足も斜め前ステップしますが、その動作により瞬間的に相手の視界から消えるようにします。


 その上で相手の死角から上肢を首に巻きつけ、投げるわけです。


 ここでやはり力技になるケースが散見されました。


 その際、互いの中心軸が離れていますが、これが力技になる原因です。逆に言うと、中心軸をいかにきちんと合わせることができるか、ということが無理なく自然に投げるためのコツになるわけですが、こういうことも頭では分かっていても身体が上手くコントロールできず、投げる方向に自信の身体を動かし、その状態から相手を引き寄せようとしてしまいます。同体で動くというイメージが重要であり、それも「同化の意識」の具体例なのですが、その習得にはまだまだ繰り返しが必要なようです。


 この技についてもまだお話ししたいことがありますが、そこまで書くと長くなりますので、足りない部分はこの技を稽古した時にお話しできればと思います。






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