次の展開のために受けの意識を変える | 中山隆嗣の「活殺自在」

中山隆嗣の「活殺自在」

武道と癒しを中心に、生き方、日々のことを綴ります。

 昨日の続きです。


 「二十四歩(にーせーし)」や「三戦(さんちん)」で多用される「扇受け(おおぎうけ)」ですが、これまでお話ししていなかったその際の身体意識・操作についてお話ししたのが昨日のブログです。


 今日はその「受け」を使用する際、ちょっとした意識の違いが次に続く反撃技に影響する、という話ですが、もちろんそれは「扇受け」の場合だけでなく、「受け」一般の話としても活用できることです。この考え方は、「受け」という武技を、単に相手からの攻撃をブロックする、ということではなく、反撃に転じる際のターニングポイントにする為、という位置づけで考えることになり、重要な内容を持ちます。


 これまで「受け」に関しては、「受け即攻撃」という概念はお話してきました。強烈な「受け」により、それをそのまま接触部位に対する攻撃にする、というものですが、その場合はそれである種の完結になります。でも、今回の話は広義の連続技であり、そういう意識で「受け」を見直すわけです。


 もっとも、その具体的な様子は「形(かた)」の随所に存在しており、全体的なイメージは空手道を稽古している方であればご承知のはずです。


前進後退 受けから突き















 例えば、上のイラストは「中段外受け(ちゅうだんそとうけ)」から「中段逆突き(ちゅうだんぎゃくづき)」という、いろいろな流派のいろいろな「形」・「型」の中でよく見かける連続技の一例です。


 まさしく今日のテーマになっている具体例ですが、次に続く技によっては「受け」にちょっとした意識を加味することで、その武技の質が変化するケースがあります。


 今日のお話は先日稽古した「二十四歩」の分解・解説のアドバイスをした時のことですから、その具体例をその中からピックアップしてお話しします。


扇受け  昨日のブログでも登場したイラストですが、「扇受け」を行なっている様子です。左右同じフォームで受けるため、いずれの側でも受けることができ、それぞれにそこからの展開があります


 この日、タイトルにある内容でアドバイスした技は、左のイラストにあるように右側で受けた時の展開でしたが、前述の通り、そういう意識は他の場合でも活用できますので、ここでアドバイスしたことはこの技の限ったことというより、「受け」全般で意識してもらうよう話しました。


 今後の稽古全てで実際に意識できるかどうかは不明ですが、その重要さを理解すれば自ずと実践するものと思います。こういうことは身体の中に染み込ませることが重要ですので、まずはその「理」を理解し、その上で数をこなければなりません。「理」の理解が稽古の際のセルフチェックを容易にしますので、今後の稽古では折に触れこの話をし、しっかり頭と身体に染み込ませていきたいと思います。


二十四歩解説1番












 さて、「扇受け」からの展開例として2つ挙げたいと思いますが、その内の1つが上のイラストです。


 前述の通り、「扇受け」の右側で受けた場合からの技ですが、受けた直後、「上段突き(じょうだんづき)」を行ない、連続して「中段突き(ちゅうだんづき)」を放つ、というものです。


 今日のテーマと絡む大切なところは、直後の「突き」のためにどう受けるかです。


 約束事というつもりで行なう場合、あまり意識しないかもしれませんが、相手の上肢の位置関係で「突き」の出しやすさが変わる、ということに気付かなくてはなりません。接触後にすぐに同じ側で反撃するわけですから、その時の両者の位置関係で反撃の「突き」にも影響が出ることになりますが、相手の上肢の位置が高くなっていれば、反撃する側の「突き」の邪魔になります。その結果、ターゲットが上手く補足できない、反撃の「突き」のコースがずれる、技の威力が減じるなどのことが出てきます。


 そうならないためには、「受け」の時点でその展開を前提に一工夫し、接触時に相手の上肢の角度が下がるようにします。その為には、昨日お話ししたことの中で出てきた上肢のフォームの維持が必須であり、「受け」で相手の上肢を押える、という意識で行なってもらいました。


 この意識で行なうと、わずかですが相手の上肢の角度が変わり、反撃の「上段突き」が出しやすくなっている様子が客観的に見ても分かります。接触時の身体操作のことですが、このようなことが武技の手の内として働くわけで、きちんと入る技とそうでない技、という分岐点になることを改めて実感してもらいました。


二十四歩解説2番  2つ目が左のイラストに示してあります。


 先ほど同様、「扇受け」の右側で受けた後の展開ですが、受けたほうと同じ側で「猿臂(えんぴ)」を放つ、という技です。


 「上段突き」に転じる場合とどこが異なるか、という意識で見ていただきたいと思いますが、前述の技が相手の上肢の上のほうに展開しているのに対して、この技は下方で展開しています。


 その場合、前述の「受け」の意識は逆効果になります。相手の上肢の角度が下がっているようであれば、脇の下に「猿臂」を放つことは難しい、というわけです。


 この違いは武技の質を理解する時に大切です。見た目は同じ「受け」でも、その後の反撃技により接触時のちょっとした操作の違いを要求され、その意識の有無が武技の質に影響する、という事実の理解が必要なのです。


 そこでこの展開の場合の「受け」の意識ですが、ここでは相手の「突き」を後方に受け流す、ということが大切になります。


 最初の技の場合、相手の上肢を押さえるという意識が必要であり、その際は「突き」のベクトルを下方に向けるようにしましたが、今度の場合は床との角度は変わらずに、左方に向けるようにした(攻撃側を基準にした場合)わけです。


 この意識は那覇手系の流派で行なわれる「外受け」の用法と重なることになりますが、それがそのままこの技に生きていることになります。見た目は同じ「扇受け」ですが、「見えない技」の部分では異なる技なのです。このような意識の有無が技の質に大きく影響を与えますが、武技を行為だけで捉えていれば、何が違うのか分からないままに過ぎ去っていくことになります。


 今回の稽古が出席者に良い影響になることを願っています。






 ▼活殺自在塾公式HP
 (活殺自在塾のHPは上記をクリック)

   ※武術の修行と生活の両立を図るプログラムで塾生募集中


 ※活殺自在DVD第1巻「点の武術」、大好評発売中!

   アマゾンでも販売を開始しました。

   神保町(東京)の「書泉グランデ」でも販売しています。

   ユーチューブにダイジェスト映像 http://youtu.be/e5CUX-zn9Zk


 ※活殺自在DVD第2巻「極意の立ち方」、発売開始!

   アマゾンでも発売開始しました。

   神保町(東京)の「書泉グランデ」でも販売しています。

   ユーチューブにダイジェスト映像 http://youtu.be/FGwnVXcgCBw



活殺自在DVDシリーズ第2巻「極意の立ち方」/中山隆嗣,道田誠一

¥5,940

Amazon.co.jp


活殺自在DVDシリーズ第1巻 「点の武術」/中山隆嗣,道田誠一
¥4,860
Amazon.co.jp

 

 
 
 
秘めたパワーを出す、伝統の身体技法 だから、空手は強い!/中山隆嗣
¥1,512
Amazon.co.jp

 

 
 
 
東洋医学と武術でカラダを変える 空手トレ! 強くなる鍛え方 [DVD]/中山隆嗣
¥5,400
Amazon.co.jp