休場日で閉鎖されているゲート。
そこから引き返しがてら、波除神社に吸い込まれていく。
拝殿前には茅の輪が設けられている。
メンバーはそれぞれ左回りに3周するのだが、その様子に違和感を覚えた。
(これ・・・8の字にくぐるんじゃなかったか?)
よく確かめると、やはり8の字様にくぐる、と但し書きされている。
だが、皆さほど気にしていないようだ。
築地場外市場をあとにする頃、入れ違いに来る人の波が大きくなっていた。
まだ小雨は落ちてくる。
傘は要りそうで要らない。
来た道を戻ることになった。
場所も店名も失念したが、銀座あたりの何やら上等なフレンチ風のカフェになだれ込む。

一休み終えて店の外へ出る。
・・・雨は上がったようだ。
『銀座だし、近くにクロムハーツのお店があるんじゃないか?』
調べてみると、すぐ近くにあることがわかった。
店先に看板はない。
ただ、銀色に輝く百合の紋章のみがかけられている。
店内にはごく少数の商品が展示されているだけで値札は見当たらない。
それはまさに高級宝飾品店のようだ。
実際、どれを取っても思い浮かぶ金額とは合致しないだろう。
ひとつ勉強になったのは、値段は米ドル建で決められるということだった。
だとすれば、ひと頃からすればこのところの円安傾向で最低でも3割から5割は価格上昇していることになる。
ビルの谷間に『もう手が届かねーー』という切ない叫びが響いた。
(銀細工なのに、たいしたもんだねぇ。)
それは何事においても同じではあるが、興味のない者にはこの程度の感想しか浮かんでこない。
もう少し、いろんなことに興味を持つべきであろう。
人生は短いのだから。
夜は、いつもの居酒屋へ行くことに決まった。
まだ時間があるというので、ひとまずハッピーアワー狙いの前哨戦へ向かうことになるのだが、それですらもまだ早い時刻である。
それが理由なのかどうかはさておき、ソニービルへ立ち寄ることになった。
8Fではサウンドプラネタリウムが上映されており、少々待って鑑賞する。
ハイレゾ音源でのコンテンツは、少々ゲインを上げても破綻しない。
それどころか音声の自然な響きと奥行きが鮮明さを伴って耳に押し寄せる。
目の前に設置されているアンプと1本のスピーカーは家庭用程度のものらしい。
それらはしばらく興味を失っている間にかなりの進化を遂げていた。
興味というものは持ち続けるべきものであることを知る。
人生は短いのだから。
プラネタリウムを観終えて退場するのに、係員は混雑を理由に階段へ誘う。
降りていくとそこはショールームになっていて、階を下るとともに古き良き時代の製品展示に変わっていく。
懐かしい機材を眺めながら、適当に、まったく適当に作った放送劇でコンクール参加し、各校発表中にもかかわらず顧問の眉毛太い先生とお地蔵さんのような部員に黙って他の二人と会場を抜け出し、姫路城を堪能したことを思い出す。
授賞式が始まるタイミングで会場に戻るとなぜが自校の名が呼ばれていて、訳も分からずに賞状を貰ったら佳作だった。
なにがウケたのか、未だにわからない。
話を戻さねばならない。
時刻はようやく午後3時。
まだハッピーアワーに届かない。
我々一行は信号を渡って東急プラザ銀座へ入っていく。
屋上からの眺めは・・・ひとつの発見があった。
エルメスの入るビルの屋上に、騎士(?)の像が掲げてある。
真下からはまず見えない場所なのだが、何かのこだわりなのだろう。
ひとつ階下に降りると、飲食店や雑貨店がある。
ガチャガチャをやろうとして商品が出てこない者や、どこかで見たような妙なキャラクターのトートバッグを買う者。
皆、好き好きに彷徨うのがいつものスタイル。
館内はどこも暖房が効いていて喉が乾く。
同じフロアのひと休みに入ったお店で小綺麗なお飲み物を頼んでみる。
炭酸系だったはずが、底の濃いシロップを混ぜてるうちにガスが全部抜けてしまうという物哀しい出来事を経験しながら、まあ兎にも角にも潤うことはできた。
そのうち、いい時間になってきた。
つづく