■ ごはんの好みが変わったお年頃

そういえば、最近わたしのごはんの好みも変わったのよ。

今まで普通に食べていた「カリカリ」って、このひとが呼んでいるドライフード。だんだんあんまり食べたくなくなっちゃったの。15歳っていう年齢のせいなのか、お腹の「厄介な同居人」のせいなのかは分からないけれど、硬いものより柔らかいものが恋しくなったのよね。

お皿の前でプイッと顔を背けるわたしを見て、このひとはすごく心配そうな顔をしてた。

「バサラ、これなら食べるかな…?」

そう言ってこのひとが開けたウェットフードのパウチ。お皿から漂ってくる、なんとも言えない良い匂い……!

一口食べてみたら「なにこれ、すごく美味しいじゃない!」って、あっという間にペロリと平らげちゃったわ。このひとも「よかったー!食べてくれた!」って、すごくホッとした顔をして喜んでいたの。

でもね、このひと、一つ大きな計算違いをしていたみたい。一度こんなに美味しいウェットフードの味を知ってしまったら、もうあの味気ないカリカリには戻れないのよ?

次の日、お皿にはいつものカリカリが盛られていたけれど、わたしは完全スルー。「ねえ、昨日のおいしいやつは?」って、このひとの顔をじっと見つめてあげたわ。

結局、このひとが根負けしてウェットフードを出してくれた。それ以来、カリカリは「ただの飾り」として扱うことに決めたの。

最近、このひとがため息をついているのよ。

「バサラ……ウェットフードしか食べないとなると、私がお仕事に行ってる間、お昼ごはん抜きになっちゃうよ……?」

そうか、ウェットフードって出しっぱなしにできないのよね。このひとがお仕事に行っている間、わたしのごはんを出してくれる人がいなくなっちゃう。

「どうしよう、自動給餌器の保冷剤入りとか探そうかな…」って、またスマホでブツブツ言いながら検索を始めたわ。

わたしとしては「お昼は寝てるから、朝と夜に美味しいのをたっぷりくれればいいわよ」とも思うんだけど、このひとはわたしがお腹をすかせないか心配でたまらないみたい。

■ 日向ぼっこの場所が変わった日(6月29日)

食べ物の好みだけじゃなくて、最近は少しだけ自分の体にも変化を感じているの。

今まで、わたしのお気に入りの場所といえば、3段ケージの上。あそこから見下ろしながら日向ぼっこするのが日課だったんだけど、最近はどうもそこまで登るのが億劫になってきたのよね。

だから、床で休むことが多くなったの。それに気づいたこのひとは、すぐに床にバスタオルを敷いてくれたわ。うん、悪くないわね。ここなら安定して眠れるわ。

でも、このひとはそれだけじゃ満足しなかったみたい。「お腹の腫瘍に負担がかからないように」って、バスタオルの下に座布団を持ってきたの。

最初はわたしも「あら、なかなか気が利くじゃない」って座布団の上で落ち着いていたんだけど……寝返りを打とうと動いた瞬間、コロリンッて転がり落ちちゃったのよ!

びっくりしたわ。このひとも慌ててたけど、やっぱりフカフカすぎるのは安定しないのよね。結局、座布団は取り外されてわたしの横に置かれたけど、わたしはもう乗るそぶりも見せなかった。「気持ちは嬉しいけど、それはもういらないわよ」っていう、わたしなりのメッセージね。

■ 待望のマジックテープ服が届いたけれど(6月30日夕方)

ピンポーンって音がして、このひとが待ちに待っていた新しい術後服が届いたの。背中のスナップボタンが擦れて傷になっちゃったから、新しくポチッた「マジックテープタイプ」のお洋服よ。

いつものように腫瘍部分を消毒して、新しい服をお着替え。相変わらず右足の付け根あたりからは滲出液と血が漏れちゃうんだけど、このひとも「もう、こまめにパッドを替えるしかないね」って、そこは諦めたみたい。賢明な判断よ。

でもね、この新しい服、着た瞬間からなんだか違和感があったの。右足の付け根あたりが、やたらと緩いのよ。

このひとも首を傾げていたわ。「どうせマジックテープで調整できるんだから、足周りの部分をもっと長くして、キュッと絞められるように作ってくれればいいのに……」

全く同感ね。せっかくのマジックテープなんだから、もう少し融通が利いてもいいと思うわ。

■ ペロペロ事件と、ハンカチのクッション

それからしばらくして、わたしはくつろぎながら毛づくろいを始めたの。「ペロペロ、ペロペロ……」

その音を聞いて、このひとが「あ、また足を舐めてるのかな?」って様子を見に来たの。でも、このひとが目にしたのは、足を舐めるわたしじゃなかった。

緩くなった服の隙間から、わたしが直接「お腹の腫瘍」を舐めている姿だったのよ!

「ああっ! バサラ、ダメダメダメ!!」

このひとは大慌て。そりゃそうよね、舐めたらばい菌が入っちゃうもの。結局、届いたばかりの新しいマジックテープ服は即座に脱がされて、またあの「背中が擦れるスナップボタンの服」に逆戻りよ。

でも、このひともただじゃ転ばないわね。スナップボタンが当たって痛かった背中の部分に、小さめのハンカチを折りたたんで挟み込んだの。ハンカチがクッション代わりになって、これなら擦れても痛くないわ。

「ごめんね、しばらくこれで我慢してね」って、このひとは申し訳なさそうに撫でてくれた。

■ わたしたちの試行錯誤は続く

ケージから床へ。カリカリからウェットフードへ。新しい服から古い服へ。座布団は却下で、ハンカチは採用。

なんだかバタバタしているけれど、このひとが一生懸命わたしのことを考えて、あれこれ工夫してくれているのは伝わってるわ。

カリカリを卒業したわたしと、お昼ごはん問題に頭を抱えるこのひと。お洋服の問題もまだ解決してないのに、次から次へと悩みが尽きないわね。

でも、わたしのために一生懸命スマホで調べてくれるその時間は、嫌いじゃないわ。美味しいウェットフード、明日もよろしくね。

―― バサラ