暴風雨のなか(室戸市→安芸郡東洋町) | 日本一周(分割)自転車紀行

日本一周(分割)自転車紀行

2010年、MR4F(折りたたみ自転車)で突然西へ。
東海道、山陽道、山陰道を駆ける。

そして2年後、再び自転車に跨る…

ただし、自転車走行ではなく自転車旅行。
観光も食事も目的だし、宿泊はホテル。
普段は自転車に乗らない。

これでも日本一周できる…のか?


翌2015年9月24日8時。
目を覚ますとカーテンを開けて窓の外を見る。


窓の外に見えるのは凄まじい強風、
そして豪雨。

かつて無いほどの
暴風雨が吹き荒んでいた。


窓を閉じていても轟音が響いていたので、
正直、想像はできていた。

しかしこうして目にすると
かなりショックである。


食堂に行き朝食を食べながら考える。

本来ならば今日の旅程を大幅に再考したいレベル。
しかしそうもいかない事情もある。


2日後には帰らなければならず、
航空チケットをもう取っているというのもある。

ただそれ以上に深刻なのが、
地理的な問題である。


何しろここは四国南東端の室戸岬。

室戸市の中心街でもなんでもなく、
周囲に建物すらほとんどない。

要するに雨足が弱くなるのを待とうにも、
何しろ待つ場所がない。

無理を言えば居させてくれるかもしれないが、
とにかく何もすることがないのも厳しい。


結局、どんなに雨が降ってようが、
どんなに風が強かろうが、
走ることが最良の選択肢。

そう心に決めて
上下に雨具を付けて宿を出る。



窓から
窓の外を見ると、暴風雨が吹き荒れていた…




室戸荘の背後、山側には中岡慎太郎像がある。

この像も桂浜の坂本龍馬像と同様に有志による設立で、
やはり海というキーワードで置かれており
室戸岬に謂れがあるわけではない。

今の状況を見れば一目瞭然だが、
風雨が激しい室戸岬では設置に苦労もあり、
坂本龍馬像よりもやや遅れて建てられた。

坂本龍馬像と向かい合っているという噂もあったが、
特にそういうことはなく海の向こうを見ているようだ。


雨のなか走り続ける。

道脇にはところどころにホテルなど観光施設があるが、
当然のように誰も外には出ていない。


車通りもほとんどない。

昨日、室戸岬に向かっているときにも思ったが、
脇道もほとんどない国道なのに交通量が少ない。

室戸岬は南東に出っ張った位置にあるので、
徳島市に向かう人はショートカットするのだろう。

この道は文字通り室戸岬専用のようなものだ。


海沿いに出ると周囲に建物もなくなり、
本格的に自分しかいなくなる。

左手はすぐ山になっていて、
右手は荒れ狂う海。

こんなところを走っていて
大丈夫なのだろうか。

実はもうみんな避難していて、
自分だけ取り残されているんじゃなかろうか。

そんな思いもしてくる。


夜の箱根で味わって以来の孤独感。
いや今回は不安感の方が強いだろうか。

とにかくこの状況から
抜け出したいのは同じだ。


♪チャランチャラーン

何やら音がなった気がするが、
それ以上は何も聞こえない。


ひょっとしたら市役所あたりからの
案内放送か何かだろうか。

本当に自分だけ気が付かずに
走っているのではないだろうか。

負の発想しか浮かんでこないのも箱根と同じ。

この状況を抜け出すには
とにかく走るしかない。


野根川を渡るとようやく小さな町に入り、
人こそいないものの車は現れてくる。

雨宿りができるところを見つけてひと息つく。

何しろ海沿いは建物がないので、
この雨宿りできる状況だけでもホッとする。


スマホを見てみると、
緊急速報のエリアメールが来ている。


どうやら先ほどの音は
僕のスマホから鳴っていたようだ。

通常マナーモードにしているので
音がなるという認識がなかった。


ここ東洋町は大雨警報および洪水警報、雷注意報、
強風注意報、波浪注意報…

そして大雨警報には
浸水害、土砂災害が含まれている。


やはり警報だったが自分のスマホだとは思わなかった。
そもそもエリアメールが来たのは初めてだ。

しかし冷静に考えてみれば、
あの海沿いの一本道で警報を受けてもどうしようもない。

逃げろと言われても逃げられない。
思えば怖いことだ。


少し雨宿りしたものの、
雨足はまるで弱くならない。

建物の屋根の下に立っているだけなので、
ここに長くいても仕方がない。

再び走り出す。


今日はこんな状況なので少し詳しく調べてみたのだが、
残念ながらこの先も当面ファミレスなどは一切ない。

唯一落ち着けそうなところが道の駅だ。



中岡慎太郎像
中岡慎太郎像

灯台
裏の山上には灯台がある

走り始める
暴風雨のなか走り始める

海沿いの道
海沿いへ

海
海が荒れている





トンネルを2つ抜けると甲浦(かんのうら)地区に入り、
間もなく右手に「道の駅東洋町」が見えてくる。


道の駅東洋町は産直物などが売っている普通の道の駅。
食堂のメニューにも特に目を引くものがない。

ただ体力を奪われているので食事はしたい。

そこで、かろうじて地元感がある
「チキンとトマトの煮込みカレー地元野菜のせ」を食べる。


そしてポンカンソフトクリーム。

何でも東洋町はサーフィンとポンカンの町らしく、
これは紛れもない名物である。

さすがにこの天気ではサーフィンをする人は見えなかったが、
最後に名産にたどり着けてよかった。

正直まったく暑くはなく、
むしろ寒いのがつらいところだが…


カレーとソフトクリームを食べ終えると、
道の駅東洋町を出る。


ここ東洋町は高知県の北東端。

高知県は東西には長いが南北には短いため、
もう徳島県は目の前である。


そしてここ甲浦は久し振りに鉄道が
やって来ている地でもある。

少し内陸には阿佐海岸鉄道阿佐東線の甲浦駅があり、
乗り継げば徳島駅にも行くことができる。

これで何かあっても安心である。


鉄道がなかったのは高知県の南西と南東部。

南東部は奈半利駅と甲浦駅まで来ているのだから、
それを結んでもよさそうなものだが、
ともに室戸市を目前に途切れてしまっている。

旅行的には非常に不便なのだがバスはあるようだし、
まあ普段生活している人は車社会だし関係ないのだろう。


そんなことを考えながら走ると、
すぐに徳島県海部郡海陽町に入る。



道の駅東洋町
道の駅東洋町

チキンとトマトの煮込みカレー地元野菜のせ
チキンとトマトの煮込みカレー地元野菜のせ

ポンカンソフトクリーム
ポンカンソフトクリーム





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2016年9月24日

室戸岬(室戸市)~徳島県境(東洋町)
走行距離:約42km(google map)

■暴風雨のなか
(室戸市→安芸郡東洋町)