その男性が語ったこととは・・・
着任早々、同僚から宿直室に関する
不気味な噂を聞かされましたが、
根っからの現実派であった私は
そのような話は気にもとめませんでした。
そして、私が宿直当番になった夜のことです。
午前1時を過ぎ、そろそろ眠ろうか、と思ったとき、
どこからか奇妙な声が聞こえてきたのです。
最初、鳩の鳴き声かと思ったそれは、
次第にこちらに近づいてくるようです。
その時私は、以前聞いたあの噂を思い出し、
全身総毛立ちました。
「宿直の夜、ある食べ合わせをすると、
『それ』が現れ、一晩中、共に踊り狂う羽目になる」
改めてデスクの上を見ました。
そこには小腹が空いたときの為にと買っておいた二つのパンと、
湯呑みになみなみと注がれた茶がありました。
『それ』の条件は偶然、整ってしまったのです・・・。
機械的なファンク・ビートが聞こえ始めた時、
私は絶望と恐怖に震えながら、ゆっくりと振り返りました。
部屋の中央には、全身レザー・ファッションで固めた、
妙に色白で彫りの深い、ロングヘアの男が立っていました。
それは下腹部を強調しつつ、
音楽に合わせこちらに向かって後ずさりしながら、
甲高い奇声を発したのです。
「ポゥ。」

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