※これは個人的な検討です。真似しないでください。
とうとうフレームに手を出します。
キャブレターを変えてパワーアップしたら、加速時に轍でハンドルがフラフラ。
それもそのはず、シートポジションからして後輪の真上に座っているようなものですから、フロントが浮くわけです。
タイヤを交換してかなり改善しましたが、さらなる直進安定性を求めてスイングアームを伸ばそうと思います。
これについては失敗すると即事故に繋がるので、慎重に進めたいと思います。
まずは検討。
建築の知識しかないのですが、持ってる知識を活用するしかないので簡単に構造計算から。
スイングアームを両端ピン固定の単純梁として考えると、曲げモーメントは下の図のようになります。
曲げモーメント=曲がる力なので、スイングアームを延長した場合の材にかかる力が分かります。
式で分かる通り、曲げモーメントは長さの二乗に比例して大きくなります。
なので、スイングアームを延ばせば伸ばすほど、その二乗に比例して材が曲がりやすくなります。
100㎜延長を考えているので、500mmから600mmになります。
そうなると長さとして1.2倍、曲げモーメントでは1.45倍になるということです。
曲がる力が増えれば当然フレームが折れ曲がってしまいますので、そうならないように単純な延長ではなく補強が必要になることがここから分かります。
スイングアームを切って伸ばして適切に溶接すれば、とりあえず材料強度としては元の強度と同様のものはできます。
「もともとタンデム走行を前提としたフレームなので、100㎜の延長ならそのマージン内」という考えもあるのですが、説明した通り長さの二乗で曲がりやすくなるので、安全性を考えて補強を入れる延長方法を前提としたいと思います。
引き続き計算の話になりますが、今度は断面二次モーメントを検討します。
これは材のたわみに関係する計算です。
鋼管の断面二次モーメント、プレート材の断面二次モーメントは、以下の計算式になります。
強度を増すために補強プレートを溶接したいと思っているので、その断面二次モーメントも一緒に考えます。
現在の部材を公式に入れて計算すると。
丸鋼(外径30㎜、内径23.6㎜):3.14/64*(30^4-23.6^4)=0.049*499795=24,521
補強プレート(厚4.5㎜、幅15㎜):4.5*15^3/12=1,266
となります。
数字だけ見ると、補強プレートは+0.05倍程度の補強にしかなっていません。
なので上下の2ヶ所に入れて+0.1倍にします。
それでも丸鋼と併せて1.1倍の強度になった程度です。
...いいのか?
確認のため、たわみを計算します。
たわみは
となります。
ここで変更になるのはL(長さ)とI(断面2次モーメント)とw(荷重)となります。
E(弾性係数)は延長前も延長後も同じとします。
※厳密にはEは延長に使用した材によっては変わります。
※ここではパイプにSTKM、補強プレートにSS400を使用する前提とします。
荷重wはwとしてひとまず残します。
Lは長さを入力し、Eはひとまず鋼材のヤング係数の205,000を代入。
Iは前述の計算によるものとしますが、部分的に補強プレートを入れているのでそれも加味してみます。
※補強プレートのIは、そのまま足すと全体に補強が入っていることになるため、全体の25%に補強プレートがあるものとしてI×0.25としてから加算しました。
延長前 σ=0.106w
延長後 σ=0.231w
仮に荷重wを
延長前:140kg=1,372N→1,372N÷500㎜=2.744Nの等分布荷重
延長後:140kg=1,372N→1,372N÷600㎜=2.287Nの等分布荷重
とすると
延長前 σ=0.291㎜
延長後 σ=0.528㎜
が、最大たわみになります。
たわみ量として1.81倍。
...1.81倍。
色々難しいことを書きましたが、結論としてはこれで安全なのかは分からないままですね。
ただ、やみくもに延長するより多少は計算しましたという経緯がある分、安心感は高まると思います。
少なくとも完全に無茶なことをしているわけじゃないという感覚が持てます。
およそ2倍たわむって考えると建築構造ではありえないことですが、この場合はどうなんでしょうか?
しかし、たわみ増加を±0にするには、補強プレートをスイングアームの全長分入れるか、補強プレートの幅を40㎜にするかのどちらかが必要なので、なかなか難しくも悩ましいところです。
悩みながら進めたいと思います。
ここからちょっと溶接の話に。
スイングアーム延長でよく見るのが、インロー(差し込み)を使った延長です。
割りとインロー部の強度を期待してるのか、容易に溶接面(ビード)を削る人がいます。
あれはまずい。
溶接には有効のど厚というものがあります。
ようするに、溶接部の厚みです。
プロの溶接ならよいのですが、素人溶接でビードを削るなんて強度をわざと落してるようなものです。
もしかしたら、材と材の間を橋のように繋いでいるだけで、溶接下に空洞ができているかもしれません。
工場だとUT(超音波検査)でそのような部分を検査するのですが、素人でやってる人はいません。
なので、汚くてもビードは削らないほうがよいです。
で、見た目を気にするなら、インローを裏当て金に使うような完全溶け込み溶接ではなく、突き合せの完全溶け込み溶接で裏側にビードを出す「裏波溶接」にする方法があります。
これは、建築構造というより水道管などの管工事で行われる溶接です。
完全溶け込み溶接は、母材厚以上の有効のど厚があれば溶接面を母材と同等の強度としてよいとなっています。
表面にビードの突起が出にくい裏波溶接であれば、強度を確保しつつきれいな見た目となります。
裏波溶接は熟練のTIG溶接技術が必要なので、プロにお願いしましょう。
ということで、ここからは溶接のプロに相談に行きたいと思います。