サイバーバズさんからの依頼で、「TSUTAYA発掘良品」より、映画「ジャガーノート」のご紹介。
最近の映画事情、皆さんも感じてませんか? おかしいって。
ヒット作の2作目や3作目、スピンオフが多いですよね。
それに、DVD落ちがすごく早くなってませんか? ジョニー・デップの出演作品「アリス・イン・ワンダーランド」なんて、劇場公開中にDVD発売とレンタル開始が告知されました。 これってすごく危機的なんじゃないでしょうか。映画だけの興行収入だけじゃなくて、DVD化の利潤もすでに加算された上で、制作されているんじゃないかって。
さて、映画「ジャガーノート」について。1974年公開、監督はリチャード・レスター、主演はリチャード・ハリス。
北大西洋を航海する豪華客船ブリタニア号に仕掛けられた7個の爆弾。折りからの悪天候で救護艇は間に合わず、1200人の命は風前の灯火。タイムリミットは22時間、迫り来る危機に爆発物処理班の男達が果敢に挑む王道海洋パニック・アクション巨編。
嵐の海、脱出不可能な豪華客船に爆弾が仕掛けられた。解体しなければ、逃げ場のない乗客たちの命はない! 爆破回避のために空から海へ爆発解体のプロが降ろされたが……とのハラハラドキドキのサスペンス映画。
なはずなんですけど、おそらく「なんか古くさい」とか「観たことがあるシーンが多い」とか「テンポが遅くてハラハラしない」と感じる人が多いかも。
って、母、実はそれがとっても恐いんです。
ちなみに、タイトルの「ジャガーノート」は止めることのできない巨大な力、圧倒的破壊力という意味。
冒頭、むかーしの船舶出航の際に行われたテープ投げのシーンから始まります。テープの清掃、実際大変だったでしょう。エコなご時世、ああいうことは行われないでしょうけれど、航海が命がけだった時代、無事を願い別れを惜しむ「つながり」だったんです。
さて、船内での食事シーンで、おいしそうにもくもくと食べる男性のテーブルから何人ものご婦人が立ち去り、次に厨房で大量の料理がガシャガシャ廃棄されていくシーンがあります。
今の映画だと、技術もあるし画像処理も迫力のあるものにできるだろうから、もっとわかりやすい表現にしちゃうと思うんですが、こんな風に抑えているところが特殊技術の無かった時代現実だけで架空世界を作る必要があった時代の映画だなあと感じたりしました。
単に画像技術が無かったからかも知れませんが、それでもきちんとこういう形で表現できるんですよね。今の映画ってマンガや映画から、さらに派生しというか進展した映像なので、より映像的(?)になってるんだなと、この映画を観てあたらめて感じたり。
なぜ料理が廃棄? のネタバレ? 以下、白黒反転で
船が嵐の中にいるから、みーんな船酔いで食べるどころじゃないのです。救命ボートで船から逃げられないという描写。現在なら、特殊効果やセットを揺らすことで揺れを表現できるだろうけれど、当時はなかったのかも。かといって、カメラを揺すれば観客が酔っちゃいますもんね。
爆弾があると知っても乗客はあんまりパニクらないし、ヘリから荒れ狂う海に降ろされた海兵隊や主人公が、波にもまれ、流されるシーンもあんまり迫力がない。爆弾解体のシーンはさすがにドキドキしますが、なんとなーく先が読めたり。
どこかで観たことが、って、実はこの「ジャガーノート」こそがパニックサスペンスの先駆け。他の映画こそが、あと、なんですけど。
パワーインフレって、言葉を知っていますか? マンガ「ドラゴンボール」で、主人公の孫悟空が強くなるにつれ、敵もどんどん強くなっていきます。そうしないとお話が進まない、というか読者が要求する。で、強く強く強く強くで、結局、通常、行き着く先は物語の「破綻」という結末になります。ドラゴンボールは作者の手腕で回避されていますが。
近年の映画は、おもしろさと完成度の高さを求められた「エンターテインメントインフレ」とも言える状態にあるんじゃないかと思うんです。観客の要求が、よりおもしろく、より美しい映像と音楽をってものに。
それ自体は映画の進化で、よいことだと思うんですが、映画制作には他のジャンルのエタンーテインメントよりお金がかかります。だから、スポンサーとしては売れる映画、売れることがより確実な映画に資金を出そうとします。結果が、シリーズ化、スピンオフにつながつているのではと。
高名な監督、高名な俳優の映画は作るけど、無名の監督、無名の俳優は使わない。
でも、ジョージ・ルーカス監督だって、ジェームス・キャメロン監督だって、ジュード・ロウもジョニー・デップも、はじめは無名だったわけで。
今の「エンターテインメントインフレ」は、これから出てくる新しいおもしろさを作る、新しい監督や、技術者、俳優を育てる環境になっていないんじゃないかと心配なんです。どんなに才能があっても、最初からおもしろさ最高で完成度の高い作品を作れる人ばかりじゃないはず。
おもしろい映画を観たいからこそ、まだ未完成の、可能性のあるおもしろさを持った人材や映画を「観客」が見つけて、育てる、っていうか、認めていく必要があるんじゃないかと。
だから、TSUTAYAさんの「発掘良品」には大賛成です。「おもしろさ」を多視点から観るチャンス。今のおもしろさだけを、全部のおもしろさなんだとは思わないで。新しいおもしろさを見つけるために、昔のおもしろさを感じてください。
さて、「ジャガーノート」の大詰め。爆弾解体で「赤のコード」を切るか「青のコード」を切るかの定番的シーンが登場します。この爆弾解体のつきものともなった二者選択、ジャガーノートこそがお初なのです。
なぜ犯人は、○色のコードを切れと言ったのか、そして、なぜ主人公は○色を選んだのか、直接的には言葉などで理由は語られませんが、作中ではちゃんと描写されています。
だからこそ、ラストで去りゆく主人公が背中を向けて歌う歌が、誇らしくも、もの悲しいものとなるのです。
この「ジャガーノート」、TSUTAYAでレンタルして、おもしろくなかったらレンタル料金を返してもらえます。(一部店舗を除く) ぜひ、お試しあれ。
TSUTAYA「TSUTAYA発掘良品」
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