ハーグ条約のこと | 「成功する国際結婚の秘訣」ブログ

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全米ベストセラーの翻訳書「異性の心を上手に透視する方法」の翻訳者&「国際結婚一年生」著者、パートナーシップ専門コーチ・塚越悦子のブログ

ここ数日、ハーグ条約に絡んだ記事を目にしています。

国際結婚のチャレンジについて話す際、ハーグ条約について語らないわけには行かないでしょう。

(このニュースの詳細はこちらをお読みください)

アメリカで子供のパスポートをとるために郵便局で手続きをした際、両親二人ともがその場にいなければなりませんでした。また、パスポートの申請書には両方の親が同意している旨のサインをする欄があったように記憶しています。

そんなところからも、アメリカ人同士の結婚だとしても離婚後の親権争いでもめて、片方の親から子供を「誘拐」し、どこかに連れ去ってしまうような事件が多く起こっているお国柄を感じ取ることができます。

また、最近ではオーストラリア人との離婚の際同様のケースに巻き込まれ、子連れで日本に帰ってきたために誘拐罪で国際指名手配をされている方が体験を出版されたり、ブログで情報発信をされているのを目にしたことがある方もいるでしょう。

ここ数日のハーグ条約に関するニュースを受けてその方のブログを見たところ、読者からのコメントに「そんなひどい国だったなんて。オーストラリアが大嫌いになりました」などというものもありました(文脈としては、そんなひどい離婚相手に味方するような判決をする国だから、というような趣旨でした)。

日本がハーグ条約に加盟することについて、DVや虐待を逃れて日本に帰ってきた妻子についても子どもを戻さなければならなくなる、などの理由で、慎重な姿勢を示している方々も大勢いるでしょう。

これについて、私が考えることは次の二つです。

① ハーグ条約についての賛否両論や、実際にこのために困難な立場におかれるかもしれない方々(実際におかれている方々)のストーリーが話題になることで、これから国際結婚をされるより多くの方々に、『最悪の場合、どういったことが起こりえるのか』を知ってもらうことができる、ということ。

② 日本がハーグ条約に加盟すること自体について、賛成であろうと反対であろうと、確実に言えることとしては、
日本以外の国に住むからには、その国の考え方や法律までも受けいれることになるのだという覚悟が必要ではないか、ということ。

特に、②については、「でも、結婚するときにそんなに細かいところまで知ってからするわけじゃないし」と思うかもしれません。こういうのを英語では"Fine Print"っていうのですが、たとえば家や車など大きな買い物をしてローンを組んだり、病院で手術などを受けるとき、アメリカでは実に大量の書類にサインをさせられます。

もちろん、細かいところまで読んで理解してサインをしている人はほとんどいないでしょう。何枚もある書類をとにかくサインしまくって提出することだけに神経を使い、中身は「スタンダードなものです」くらいの説明をされてろくに読みもしない人が大半だと思います。もし、その後になって何か納得がいかなくて文句を言っても、「でもあなたはこれにサインしたんですよ」と言われて終わりです(サインするところには、ご丁寧にも『私はこの書類を読み、理解した上で合意します』などと書かれているからです)。

ある国の人と結婚することは、実はこれに近いものがあるのではないかな?と感じます。

後になって「そんなの聞いてないよ」と言っても、「でも、あなたはこの国の法律に従うことに合意したんですよ」と言われることでしょう。実際、外国人としてある国の永住権を得るときには、それなりの文言に同意させられているはずです。その時、その時の大統領が好きでも嫌いでもかまいませんが、その国に住むという選択をしている以上、その国の法律に「従います」と、意識していてもいなくても合意させられているのだということです。

これは、何も日本人が外国に住んでいる場合に限らないでしょう。日本人として日本に生まれ育ち、ずっと日本に住んでいたとしても、場合によっては一生知らなくてもすむかもしれない、人によっては理不尽と思えるような法律がきっと存在しているのでしょう。日本の法律であれば、「何でそんなことになってるんだ!おかしいから変えよう、そんな法律は」と言うこともできるし、実際にそういう運動をされている人もいるかもしれません。

でも、外国人として別の国に行き、「住まわせてください」という嘆願をした以上は、その法律や、役所の人の態度や、親権についての考え方、離婚プロセスの方法、それらもろもろが「正しい」あるいは「私たちから見てフェアであるかどうか」などということは別として、私たちは「好意によりいさせてもらっているお客さん」であり、その国にとっては「そんなに私たちの考え方がいやなら、いてもらわなくてかまいませんよ」と言われてしまう可能性のある立場なのだということについても、理解しておく必要があるのではないか、と感じます。

これは、結婚した相手が「日本人の常識では考えられない」思考や言動をする人だったり、実は暴力的な人だった、などということが後になって明らかになり、自分と子供を守る唯一の方法として日本に帰ってきた人々に対する攻撃ではありません。

むしろ、その方たちには、ありとあらゆる方法で声を大きくして、ハーグ条約加盟に反対したり、その理由を啓蒙したり、ブログで情報を発信するなりのことをしていただきたいと思っています。

そうすることこそが、日本がハーグ条約に加盟するのかどうかに関わらず、今後も同様の状況に陥ってしまう人を少しでも防ぐひとつの方法であると思うからです。

実際に、ハーグ条約に加盟してもしなくても、既にこれだけの問題になっていて、とても困っている人がたくさんいるのですから。これは何も日本人の立場だけで言っているわけではありません。中には、自分には本当に何の落ち度もないのに、子供を連れ去られてしまって泣いている外国人のお父さん、お母さんだっているでしょう。

ハーグ条約に加盟したら、現在懸念されているように「今よりもっとひどいことになる」のかどうか、それは私にはわかりません。加盟したら、それこそいざと言うときの逃げ道がなくなるから、もっと慎重になったほうがよいという意識が浸透するかもしれませんし、相手からDVや虐待を受けたりしたときに、言葉もままならない外国においてどうしたらいいのか、誰に相談し、どういう行動をとれば、親権をもっていかれないように自分と子供を守ることができるのか、そのあたりのノウハウがもっと蓄積されシェアされることによって、長期的に見ればよい方向に物事は進むかもしれません。

いずれにしても、このブログを運営しながら「国際結婚をする前のコーチング」を普及させようとしている者として、著書「国際結婚一年生」を始めとしたさまざまな情報源を通じて、これから国際結婚をするすべての人の意識を、「ハーグ条約」を知らずして国際結婚はありえない、というレベルまで高めること・・・

それも私の使命だと思っています。