それは明け方のことでした。
寝ている私の顔をのぞき込む者がいました。
寝ぼけまなこでしたが、私を見ているのは仏だと分かりました。
その夜、夫の様子がいつもと違うと思いました。
救急車をよびました。
はじめての出来事でしたが、落ち着いている私がいました。
脳梗塞を経験していた夫の言動がおかしいと感じた、とっさの行動でした。
ふと、明け方見た仏の顔が脳裏に浮かびました。
仏は私に尋ねたのです。
「夫を助けますか、それともあきらめますか」と。
仏は、夫をわずらわしいと思っている私を知っているようです。
私は迷わず「助ける」と答えていました。
夫は、何事もなかったかのように元気な姿で病院から戻ってきました。
恐ろしくなりました。
「わずらわしい」という私の思いで、夫をあきらめる選択ができたということ。予期せぬ現実をつくるところだったのですから・・・。