それは家族で温泉旅行へ行った帰りのことでした。
自宅近くに新しくできた葬儀場の前を通ると、父は「死んだときは、ここで葬式をして欲しい」と言い出しました。
当時はまだ葬儀屋なんて馴染めない時代です。とても父が希望している発言のようには思えませんでした。
しかし、元気だった父は一週間後、突然亡くなってしまいました。
家族は、父が自分の死を予感し、家族の前でそんなことを言ったに違いない。父の希望通りの葬儀場にしよう。父も安堵していることだろうと思いました。
しかし、葬儀場は亡きお父様が希望したのではありません。
彼の口をついたその言葉は、一族の守り神が父の死を家族に伝えたかったのです。
よもや神様の言葉だったなんて、当時の家族は気付けるはずもありませんでした・・・。