祖父が遺体となって自宅へ運ばれてくる日のことでした。
大人たちが部屋の片付けに追われていると、幼かった私の腕をつかむ者がいました。強い力で私は引きずられ、居間のテーブルの辺りで転がされました。
「何をしているの」と叱られたようです。どんな風に説明してよいのか分かりませんでした。
その晩、お風呂に入ろうと脱衣所にいると窓の外に人影がみえました。怖くなって母を呼びましたが、母には何もみえなかったようです。
再び一人になると、また人影がありました。
頭のハゲた祖父が上半身だけの姿で、私をじっとみています。
額に白い三角巾があり、亡くなった祖父だと思いました。
怖がる私の話を聞いて、父は外へ出て様子をうかがいに行ったようでした。母は風呂場の窓の外で、私が入浴を終えるまで待っていてくれました。
葬儀のために自宅に集まった他の大人たちは、誰も私の話を信じてくれませんでした。
伯母はバカげた話をする悪い子と言わんばかりに、私をさげすむような目でみていました。
つづく。