車は細い路地に入ると、フッと時間がずれたようでした。昔に戻ったのです。
茶屋はどれかと運転手に聞くと、分厚い塀に囲まれ緑の中にあって中は見えません。ちょっと立ち入り難い感じです。
噂通り歴史を感じさせる風情ある木造建築です。
三階建ての本館玄関には人力車が置かれていました。
全てが古風な設えは、心地よい異空間でした。
時空のずれはこの辺りから激しくなりました。
食事を頂き、芸妓の舞を鑑賞することができました。
踊り・唄・三味線・鳴物など数々の芸を身につけた彼らは、お酌の接待と場馴れした話術で、私達を楽しませてくれます。
世俗を忘れるのは、この場所だからかもしれません。
ここだけ、今ではない世界がありました。
茶屋を出ると、現世に戻っていました。
誰でも感じることのできる雅なひと時でした。
魂は、ほんのひと時でさえ日常のリズムを変化させる、あるいは日常を離れることで、より豊かに成長するのですから!