サマンサは、再び都電に乗り雑司ヶ谷へと戻りました。
トコトコと街を縫うように走る都電は、急ぐことを忘れさせてくれます。
駅と駅の間が短く、信号で静かに停車するたび、どこか懐かしい時間の流れの中に身を置いているような感覚になります。
雑司ヶ谷の駅で下車し、東京都指定有形文化財である旧宣教師館を訪れました。
入館は無料。静かな佇まいの館内に、観光客の姿は見当たりません。
洋館は、装飾を誇るというよりも、慎ましく、しかし確かな意志をもって建てられた印象です。
建築意匠に目を留めながら、用意されたパンフレットを手に、上履きに履き替えて館内を歩きます。床がきしむ音が、時を超えて語りかけてくるようでした。
建物には、人の思念と時間が静かに染み込んでいます。
そこに立つだけで、言葉にならない記憶の層を感じ取ることができます。
旧宣教師館を後にし、雑司ヶ谷霊園へ向かいました。
広い霊園の中を行きつ戻りつしながら墓所を探す姿は少し滑稽に思えますが、この「探す」という行為そのものが、導きの一部であることもあります。
やがて、小泉八雲の墓に辿り着きました。
花立には、手向けられたばかりのような美しい墓花。今なお多くの人々に想われ、静かに語り継がれている存在であることが伝わってきます。
文学者として、異界の語り部として、この地に眠る理由をあらためて感じさせられるひとときでした。
さて、あなたも一日かけて、神社仏閣を参詣しながら、都内をゆっくりと歩いてみませんか。
足を運ぶことでしか感じ取れない気配が、きっと、静かにあなたを迎えてくれるでしょうから・・・。
旧宣教師館
小泉八雲の墓






















