即身成仏義 科目試験「法然具足薩般若について述べよ」 | 「明海和尚のソマチット大楽護摩」

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法然具足薩般若について述べなさい。

 

 「法然具足薩般若」を意訳(私見)すると、「ありのままに、佛菩薩の智慧が過不足なく十分に備わっている。(=ありのままの大日如来)」である。弘法大師空海の論法を著作にみると、多くが最初に結論を明確に述べ、そのあとに論拠を記載していくパターンである。『即身成仏義』の二頌八句は全句が重要であるが、即身の偈の第一句「六大無礙常瑜伽」と成仏の偈の第一句である「法然具足薩般若」は特に重要だと思う。対句とさえ思える。

 仮に対句として見た場合、「ありのままの大日如来(成仏)」=「六大無礙常瑜伽(体)」となる。これに関しては「法然具足薩般若」の空海の説明を確認したあとに確認する。

 空海は「法然具足」に関し五つの証文をあげ、意義を解説している。

 第一証文:『大日経』第三の転字輪曼荼羅行品で本具の義を説く。(注1)→如来蔵思想(有情は自性清浄心を有する。)及び三三平等観(我、衆生、仏は三密により平等である。)により衆生は本来寂静であると説く。

 第二証文:『大日経』第三の悉地出現品で因果を遠離する義を説く。(注1)→真言の果を『秘蔵宝鑰』の第十住心(=菩提心論)に説かれる法無我(=無自性の空)であるとする。

 第三第四証文:『大日経』第二具縁品の「我覚本不生」等の句と、金剛頂三摩地法の「諸法本不生」等の句を証文とする。(注1)→即身の偈の「六大無碍常瑜伽」で解説済み。

 第五証文:『金剛頂瑜祗経』の文で本具の義を説く。→金剛界曼荼羅の諸尊流出(微細法身の金剛を流出)を以て全ての存在には、ありのままに仏の智慧があることを説く。

 以上五個の証文により「法然」とは諸法自然のことであり、「具足」とは成就、無欠少の意味であると説く。

 次に「薩般若」を説く。「薩般若」は梵字であり、一切智智と訳す。「智」の意味は、「決断簡択」であり、これは根本煩悩(貪・瞋・痴・慢・疑)を断ち切るには三学(戒・定・慧)の内の慧、つまり智慧によらないと断ち切れないの意味での智である。これは『具舎論』に説かれている。「一切」は五智三十七智から刹塵に及ぶまでの仏の智慧があることを説いている。

 以上が空海による「法然具足薩般若」の説明である。この句を含む成仏の偈は、即身の偈に比べると、偈に関する説明が少ないと感じる。最初にも記載したが、成仏の偈は即身の偈の対句であり、即身の偈で説明したこと+αのα部分だからである。

 「六大無礙常瑜伽」で説かれた内容を確認する。

1、六大とは、地・水・火・風・空の五大とそれらを統合する識である。

2、地大・水大・火大・風大・空大・識大はア・ビ・ラ・ウン・ケン・ウンの梵字に配当できる。

3、梵字の字義として阿字諸法本不生及び第一命、縛字離言説、羅字清浄無垢塵、訶(吽)字因業不可得、欠字等虚空、識は我覚を意味する。五大は『大日経』『金剛頂経』に説かれ、識大は空海が説く。

4、六大は能く四種法身、四種曼荼羅(五字厳心観も説く)、三種世間を生じ、無障無碍で相互に渉入し相応し、常住不変でまさに今活動し続けている。

 再度、「法然具足薩般若」と「六大無碍常瑜伽」の内容を要約すると、六大、四種曼荼羅、三密論を説き、その裏付けとして無自性の空(中観)、阿頼耶識、如来蔵、自性清浄心(瑜伽行唯識)が説かれ、三三平等が結論づけられ我=衆生=如来の即身成仏が成立する。

 私見ではあるが、6大とは地球のことではないだろうか。陸地、海、マグマ、大気、重力・時間、地球生命(ダイナミックな動き)に配当できる。密教は壮大な教えである。 

 

(注1)小田慈舟『十巻章講説』高野山出版社 昭和59年発行