密教学概論 科目試験「現代に活かす密教の智と実践」 | 「明海和尚のソマチット大楽護摩」

「明海和尚のソマチット大楽護摩」

ソマチット大楽護摩は、古代ソマチットを敷き詰めた護摩壇
で毎朝4時から2時間かけ護摩を焚きカルマ浄化、種々護摩祈願を行なっている。

 これまでの学習を踏まえて、現代に活かすべき真言密教の「智」と「実践」について論じなさい。

 

 ピアニストが毎日ピアノの練習をするように、密教行者は毎日行法を修さなくてはならない。事を行い、理を学び、相乗効果で智が涌出し、実践が深まる。

 空海は『即身成仏義』の中で「大金剛薩埵五密瑜伽の法門を四時に於て行住座臥の四威儀の中に無間に作意し修習すれば、見聞覚知の境界に於て人法二空の執悉く皆平等にして現生に初地を證得し漸次に昇進す。」(注1)と説く。「五密瑜伽の法門」とは、『金剛頂瑜伽金剛薩埵五秘密修行念誦儀軌』であり、空海はこの儀軌の優れている事を、『辯顕密二教論』『御請来目録』『三昧耶戒序』にも記載、引用している。この儀軌は理趣経系の儀軌であり、金剛薩埵所説の曼荼羅を説いている。

 中院流では『五秘密儀軌』は、能説曼荼羅としての理趣経法となる。

 「事相研究(聖教の伝授と演習)」で理趣経法(自行用)の伝授を授かった。伝授後に行法を開始した。

 『秘蔵記』の三平等観に「これに因って我衆生のために悲愍を発せば吾が所修の功徳自然に一切衆生所作の功徳と成る。これすなわち真言行者の利他の行なり。真言行者当に手印を作すも真言を誦せんにもないし一切の時にも恒にこの観を作すべし。」(注2)とあり、四時の修行がそのまま利他行に通じる事がわかる。

 では、理趣経法のなかに密教の思想(智)がどのように織り込まれ実修(実践)できるようになっているのか探ってみる。

 1荘厳行者法

 塗香を塗ることにより、戒→定→慧→解脱→解脱知見のプロセスを辿り三学、特に十善戒を唱え仏道の基本を身につける。

 護身法により金剛薩埵となる。如来蔵に基づく三密加持の瑜伽を修する。極めればこの時点で悟れる。

 2普賢行願法

 顕教の階梯を経て、密教の門を臨む。『菩提心論』の勝義、行願の菩提心、『秘蔵宝鑰』の第九住心に至るまでの段階である。発菩提心、三昧耶戒(併びに四重禁戒暗誦)の三密瑜伽で仏の大悲に浸り、大乗菩薩の智が沸き出し、五大願を誓願し、三力加持をもって、密教に臨む準備が整う。

 3結界法

 『菩提心論』で説く三摩地の菩提心の開始である。四無量観で前五識、六、七、第八阿頼耶識による慈悲喜捨の三密瑜伽で普賢、虚空蔵、観自在、虚空庫菩薩の三昧に入り、無量の福徳を集め、諸仏菩薩を迎える壇具を準備する。

 4荘厳道場法

 種三尊の観法により道場を荘厳する。数息観、月輪観、阿字観の修練をさらに高度に展開すると共に、大日如来が「一塵の中の土なり、遍法界の身なり、我が身なり、一切衆生の身なり」(注3)と三平等観も含む現世即浄土となる七処加持を行う。

 5勧招法、6結護法

 種々の三密瑜伽により諸仏菩薩を勧招し、道場を結護する。

 7供養法

 閼伽、花座、振鈴、理事の二供養(六波羅密)を行じ、四智讃で如来金剛の智徳を賛嘆し、普供養、三力加持で供養する。礼仏により道場内に成身会三十七尊、理趣会十七尊を明瞭に観じ諸仏の働きを理解し礼拝する。

 8念誦法

 密教瑜伽の醍醐味である。入我我入観、本尊加持、正念誦、本尊加持、字輪観、本尊加持、佛眼佛母加持、散念誦と「六大無礙・四曼不離・三密加持の即身成仏の秘儀に住し、般若智を得、無限慈悲の愛染の三昧」(注4)に没入し三三平等により自利利他の向上をはかる。

 9後供方便法

 本尊聖衆に感謝賛嘆供養し、この功徳を四恩、天下法界に至心回向し、願くは諸尊暫く虚空に住したまえと観じ解界する。

 行を始め79座目であるが、体調、精神状態により行法は座により様々の態をなす。勉強により、お次第の一字一句の深みが増し、行に大きく影響を及ぼしたりもする。(4月から僧侶として社会に復帰するが、行を継続し智を深め、少しでも世の中のお役に立ちたい=実践。)

 

(注1)『定本弘法大師全集』『即身成仏義』高野山大学 密教文化研究所

(注2)『定本弘法大師全集』『秘蔵記』高野山大学 密教文化研究所

(注3)三井英光『理趣経法 一法界そりや法に就く五種別行立、但し自行用』次第 1982年

(注4)三井英光『加持祈祷の原理と実修』高野山出版 1958年