今回は、あんびるやすこさんの”魔法の庭ものがたり”シリーズから『ハーブ魔女のふしぎなレシピ』をご紹介します。
本書はシリーズの第一作目。このあと巻ごとに題名が変わっていくのですが、こちらが一巻となっているので、これから読む方はお間違えのないように。一応、目印としては”魔法の庭ものがたり1”と小さく書いてあるので、そちらを参考にしていただければ、順番通りに読めるかと思います。
簡単なあらすじを説明すると、ある日ジャレットという女の子のもとにふしぎな手紙が届き、あなたにはハーブ魔女のトパーズの家を相続する権利があるので、興味があるなら一度家に来て欲しいと言われます。すっかり舞い上がったジャレットは、両親の反対を押し切り、トパーズ荘へ向かいますが、そこでは管理人から相続するには条件があると言われます。
ちなみにジャレットは魔女ではなく普通の人間。本来ならトパーズの後継者は同じ魔女であることが望ましいはずですが・・・。
実は遺産相続人に該当する女性は他にもたくさんいましたが、なんとその全員が「不合格」になってしまったようです。そんなわけで、ジャレットは魔女でもなく、トパーズとはものすごく遠い親戚であったものの、101番目の相続人となったのです。
相続の条件
相続の条件はシンプルでした。それは一週間この家に住み、その期間内に「家から気に入られること」。しかし、どうしたら家に気に入られるかはノーヒントになっており、ジャレットは自力でこの条件をクリアしなければなりません。
トパーズ荘には相続管理人のガーディ・メープルという女性がおり、一週間分の食材の調達はしてくれますが、それ以外の家事はすべて自分でしなければならない決まりになっています。これは音楽家の両親と日々世界中を回り、ホテル生活をしてきたジャレットにとってはかなり不利に思えます。なぜなら、今までは洗濯も、掃除も、料理も、すべてホテルの人がやってくれていたからです。しかし「自分で何もかもしなくちゃならない自分の家」での暮らしに憧れていたジャレットは、むしろこれが自立のチャンスになると前向きにとらえます。
一日のうちで、『しっぱい三回までOK』、がっかりしたり、おちこんだりするのは、四回目からでいい
ジャレットは、はじめての一人暮らし+家暮らしをするにあたり、マイルールを設けます。これで困難を乗り切ろうという作戦です。しかし、はじめてだらけの一日目は失敗の連続で・・・。
トパーズ荘がしてほしいこと
トパーズ荘にはハーブの庭があります。生前、トパーズはこの庭で取れたハーブで薬草を作り、村の人々を癒していたそうです。しかし、今は家も庭も荒れ放題。そこでジャレットは家を綺麗にしたり、庭を生き返らせようと頑張ります。ただ、それだけではダメなんですね。そんなことは、今までの相続人たちがみんなやって来たことです。では、どうすればいいのでしょうか。
「自分が気持ちよくすごすために、部屋をそうじする」のはあたりまえのこと。だから、ただそうじするだけでは、「家」のしてほしいことにはなっていない・・・。
ジャレットは人の気持ちになって考えることが、「家」がしてほしいことに結びつくと考えつきます。同じ掃除をするにしても、魔法でパッと綺麗にするのと、トパーズ荘を大事に思って掃除をするのは違う。ジャレットはただこの家が好きだという気持ちから、一生懸命に家と庭の手入れをします。
そして時は流れ、いよいよ約束の一週間を迎える前夜。ジャレットにふしぎなことが起こります。
ハーブ魔女のレシピ
それはお世話になったガーディに何かプレゼントを用意しようと思っていたときでした。突然トパーズの肖像画が「耳をすまば聞こえてくる」と囁いてきます。素直にそうしてみると、修行中に拾った子猫の鳴き声がいつのまにか人間の言葉として聞こえていることに気づきます。そしてそのうちの一匹が「目のまわりをきれいにするハーブ水で、目をふいてほしい」と訴えていることを知ります。
さっそくキッチンに向かったジャレットは、テーブルの上に見たこともない本が置かれていることに気づき、驚きます。表紙をめくってみると、そこにはトパーズがハーブ薬をつくるときのレシピがたくさん載っていました。さっそく、目次の中に「目を清潔にするハーブ」という章を見つけたジャレットは、レシピに従ってハーブ水をつくります。おかしなことに、はじめは目次以外のページは白紙だったのに、ジャレットが子猫のために薬をつくりたいと思った瞬間、そこに文字が浮かび上がったのです。これは一体・・。
翌日、ジャレットはガーディへのプレゼントに、昨夜こっそりハーブでつくったやけど用のクリームを渡します。実はこれもやけどをして痛がっていたガーディに薬をつくりたいと思っていたら、あのレシピ本の中のやけどに効く薬のページが読めるようになったのです。これにはガーディもとても感動してくれました。(ちなみにガーディの正体を知るともっと泣ける)
さて、かんじんの相続人の合否はというと・・・・それはお楽しみに。ぜひ直接読んでみてくださいね。
感想
本書には、暮らしを豊かにする知恵がいっぱい詰まっています。巻末にはハーブレッスンもあるので、これからハーブを学びたい方には必見です。
読むだけでハーブについて知れるし、児童向けではありますが、大人が読んでもファンになってしまうくらいワクワクする一冊。想像以上にハーブの世界を知ることができるので、騙されたと思って読んでください。
イラストもかわいいし、癒されるし、読んだあとも夢がふくれる「読んで良かった一冊」になること間違いなし。
これからどんどん登場人物も増えていくので、ワクワク感を期待しながらシリーズを追う楽しさもアリ。
本書を読むときは、ぜひハーブティーをおともに。
以上、『ハーブ魔女のふしぎなレシピ』のレビューでした!
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