今回は真梨幸子さんの『教祖の作りかた』をレビューします。先にお伝えしておくと、面白さ★★★★★。最初から終わりまで全く飽きさせない展開になっており、ところどころでクスっと笑えます。いつものようにメモを取らなくてもわかりやすいストーリーになっているので、気軽に手にとってみてください。

 

 

 
<あらすじ>
あなたの”教祖(推し)”は誰ですか?恋も不倫もアイドルも宗教もお酒も子育ても……沼に入ったら地獄へズブズブ!沼落ちミステリ

「同窓会で不倫しちゃっただけなのに」郊外のペンシルハウスに暮らす普通の主婦、奥寺色葉は夫と息子との3人暮らし。ある日引きこもりでゲーム実況YouTuberの息子に1千万の税金の督促状が届きーー。家のローンもあり、夫は詐欺にあっている。そんなお金、払えるわけがない。そんな時、高校の同窓会で久しぶりにあった同級生とついつい不倫をしてしまいーー。弁護士の彼に「節税のために、宗教法人をやれば?と持ちかけられるが。まさかこんなことになるなんて!あなたの平凡ないつものある日、天使のラッパが鳴り響き、汚れた世界の終焉が訪れる。「日本人ほど神を信じたがる国民はいません」

 

 

前作『ノストラダムス・エイジ』と同系統の、90年代のオカルトにまつわるストーリーなので、「ノストラ~」ファンにはツボる一冊かと思われます。

 

 

<レビュー>

ひきこもりユーチューバーの息子が1000万の脱税をしていたことが発覚!そんなに稼いでいるのなら、きちんと払いなさい!と、言いたいところですが、このバカ息子、なんと全額使い果たしてしまって大ピンチ。それが両親にバレると、母親の色葉は大慌て。何を思ったか色葉は、高校の同窓会に出かけ、現在弁護士をしているという同級生の西脇に家庭の事情を相談します。すると「宗教法人をやれば税金を払わなくてすむよ」と持ち掛けられ・・・

 

西脇の提案はこうです。一から法人を立ち上げるとなると、二、三年もかかってしまう。しかし、現在教祖が亡くなってから空中分解して活動実態のない宗教法人があるので、そこを引き継げば、すぐに代表になることができるらしい。息子は既に有名ユーチューバーで、ファンからもカリスマとして崇められているため、簡単に教祖になれるだろうとのこと。

 

こんな話を誰が引き受けるか!と言いたいところですが、詐欺師に騙されやすい色葉の夫は「いいんじゃない?やろうよ」と、後日正式な契約を結ぶ約束をしてしまいます。しかし次の日、西脇は河川敷でバラバラ死体となって発見され、あっけなく退場となります。

 

ここで久斗というひきこもりの少年がネットで仲間と話している場面に切り替わります。彼はヒロシとナオミという同年代の子たちと何やらオカルトっぽい話で盛り上がっています。そんなとき、突然久斗はナオミから呼び出され、会いに行くのですが、いつのまにか薬を盛られ(?)、気づいたときには変な部屋に監禁されていたのです。ナオミが言うには、久斗は教祖に相応しい人間なので、これから自分が完璧な教祖に仕上げるとのことらしく、飲むと意識が混濁するあやしい液体や錠剤をたくさん飲まされます。

 

一方、色葉は同級生の「みっちょん」と「モンちゃん」から話があると呼び出されますが、当日何らかの理由で行けなくなってしまいます。二人は西脇と親しくする色葉に「あいつはとんでもない詐欺師だから気をつけて」と忠告したかったようなのですが・・・。

 

実はこの日、もう一人「牛田」という同級生も参加していました。彼女は色葉たちと親しくはありませんでしたが、西脇の訃報を”確認”したので、ぜひ話したいことがあるとやって来たのです。

 

実は色葉たちが高校生の頃、通っていた高校の近くで殺人事件が発生していました。それはある一軒家で、生きたまま臓器を取り出された男性が発見され、緊急搬送されたものの即死亡したという事件でした。なんと牛田は事件前に、その家を出入りする西脇の姿を複数回目撃していたと言うのです!驚くことに、その家の二階の窓に包帯でぐるぐる巻きにされた人が立っていたのまで目撃していたのです!

 

その後、牛田はみすぼらしい女性からアンケートの協力を求められ、喫茶店に誘われたそう。しかし、しばらくすると彼女の仲間がやって来て、牛田は取り囲まれるかたちで尋問を受けることになったとか。そう、彼らは「妙蓮光の会」という宗教団体の信者だったのです。危険を察知した牛田は、思わず西脇の名前出し、例の家と事件の関係性を問うことでバリアを張ろうとしますが、その瞬間「調子にのんなよ」と言われ、彼らは逃げるように去って行ったと言うのです。

 

その夜、今度は牛田の家に西脇から電話がかかってきたそうです。おそらくアンケートに書いた連絡欄を見て、番号をゲットしたのでしょう。彼は「あの家には近づくな」「ご愁傷様」「このことは誰にも言うな、言ったらとんでもないことになる」と脅し、極めつけは奴らお決まりの台詞、「調子にのるんな」と言い電話を切ったのでした。

 

この経験から牛田は、西脇は「妙蓮光の会」と繋がりがあり、「妙蓮光の会」は臓器売買を行っているとんでもない宗教だと確信します。しかしアンケートに住所やもろもろの個人情報を書いてしまったことから、身の危険を感じ、今日の今日までこの話を誰にも打ち明ける事ができなかったと言います。

 

すごい展開ですよね。ただ驚くのはまだ早いですよ。こんなのは序の口ですから。まず監禁された久斗はどうなった?というのと、なぜ西脇は殺されたのか?というのと、途中から色葉は全く登場しなくなるけれど無事なのか?とか、いろんな疑問が残ったままです。そもそも久斗を監禁したナオミは何者なの?というのが、一番の大問題。どうぞ皆さん、筆者のミスリードに引っかかってくださいませ。

 

しかしカルトの仕掛けが容赦なく書かれていて、とても面白いったらありゃしない!宗教のはじまりは恐怖から来ており、それをつくっているのが宗教という、とんだ矛盾。節税目的で立てた宗教法人がいつのまにか反社に目をつけられ、薬、臓器売買、結婚詐欺と、次々と犯罪に手を染め、やがて隠蔽するための殺し合いに・・・。いやおそろしい世界です。これは本書のネタバレというよりは、一般的なカルト問題のお話でした。カルト設立の裏側、教祖の作りかたなんて、こんなものだから騙されないでねーという話。とにかく最高でした。

 

オチは読めそうで読めませんでした!冷静に読めばわかりそうなのに、読んでいるときは夢中で推理どころではありません。早く次のページに行きたいとかのレベルではなく、「え?もうこんなに読んじゃったの?」というレベル。そのくらい面白かったです。

 

さて息子の税金はどうなったのでしょうね。秘密を暴露した牛田のその後は?色葉の夫は本当に宗教家になるつもりなの?

 

結末は激ヤバです。狂ってるー!!

 

ああ、ここから先は言えないので、ぜひ皆さんに直接読んでほしいです。最初に紹介した『ノストラダムス・エイジ』とあわせて読んでみてください!

 

 

以上、『教祖の作りかた』のレビューでした!

 

 

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