今回ご紹介するのは、望月麻衣さんの『満月珈琲店の星詠み~本当の願いごと~』です。

 

こちらは『満月珈琲店の星詠み』シリーズの第二弾になります。前作を知らない方のためにチラッと説明すると、満月珈琲店とは満月の夜にしか開店しない移動式の喫茶店で、店員はすべて人間に変身した猫という設定です。満月珈琲店は悩める人の前だけに出現し、そこでは猫たちが西洋占星術でお客様の人生を占ってくれます。

 

シリーズ第二弾では、満月の夜にしかオープンしないはずの珈琲店が特別営業で大盤振る舞い!物語の中がクリスマスシーズンということで、どうやらその期間はオープンしてくれるようです。

 

さっそくですが、少しだけどんなお客様が来店したのか以下にレビューしたいと思います!

 

 

 

 

 

 

本当の願いごと

 

『満月珈琲店』の店員たちはすべて猫。しかし接客中は人間の姿に化けています。彼らの名前は惑星から由来したもので、その性格もそれぞれの星の特徴をあらわしています。

 

今回、星詠みに選ばれたゲストは、結婚と仕事の間で揺れる聡美、父の死後から明るい優等生を演じている小雪、そして横暴な父によって家族がバラバラになった純子の三名です。

 

前回と同様この三人には繋がりがあり、そのうち一人は満月珈琲店で故人と再会するという設定になっています。そして今回占いのメインとなるのが「本当の願いごととは何か」です。

 

みなさんは自分の願いごとがわかりますか?本書では小雪という女性が満月珈琲店で同じ質問をされ、「宝くじが当たりますように」と答えて、「それは本心ではないから叶わない」と言われます。店員が言うには、本当の願いごとには”叶う力”があるが、そうではない願いごとは、自分の想いとはちょっとズレた内容になっているため、願いが叶わないのだそうです。

 

宝くじに当たりたいというのは、つまり”お金が欲しい”というわけで、そのお金というのは「経験と引き換えができるチケット」だと言います。たとえば「旅をする経験」「美味しいものを食べる経験」「家を買う経験」―だから本当の願いごととは「あなたはどんな経験をするチケットが欲しいのですか」という質問に対してのアンサーでなければなりません。「宝くじに当たりたい」というのは、星たちに「とりあえずなんでもいいからチケットをください」と言っているのと一緒。それでは星たちも困ってしまうという理論です。その結果、小雪は「自分を赦す」という願いにたどり着きます。

 

今回なぜ「本当の願いごと」がテーマになっているかというと、それはやはり「本当の自分を知る」ことに繋がっているからだと思います。西洋占星術は自分を知るための占いと言われていることからも、願いに行きつく前に、自分の心を知るという手段が必要なのでしょう。これはとても面白い発見でした。

 

 

 

アセンダント

 

また、その際にヒントをくれるのがASCです。ASCとはアセンダントの略で、人から見た第一印象をあらわします。本書では自分を知る手がかりとして、「太陽星座」「月星座」「ASC」の三つを軸に悩める人々の相談に乗ります。

 

太陽星座とは、そのまま星占いで使う看板星座のことを言います。一方、月星座とは、自分の内側、本質であり本能、素の部分をあらわす星座のことを言います。しかし月は未熟なため、同じ「牡牛座」で考えたとしても、太陽星座が牡牛座の人と、月星座が牡牛座の人とでは、牡牛座の能力を競った場合、どうしても太陽星座の人には敵わないそうです。

 

そのため月星座と言うのは、その人のコンプレックスになりやすいのだとか。自分も持っている特性なのに、太陽星座の人ほど上手く使いこなせないという理由からも、ホロスコープで自分を知ることが大事になってきます(ちなみに私の月星座は水瓶座ですが、太陽星座である天秤座よりも基本性格を見るとしっくりきます笑)。

 

そしてASCについて、本書では「持って生まれた性質や才能、能力は、すなわち前世から引き継いだもの」と解釈しています。つまり自分のASCが魚座なら、生まれながらにして魚座力を持っているというわけです。ASCは修行もしていないのに装備している武器のようなもの。私のASCは乙女座なので、どうやら乙女座力があるらしいです。自分のホロスコープはネットで検索すれば自動的に出せるので、ぜひみなさんも調べてみてください。

 

 

 

前世

 

今回の物語には、前回登場した悩み人たちが見事復活して再登場します。といっても、名前だけしか出てこない人もいますが、こちらが嬉しくなるくらいの成功を遂げています。

 

第二弾で印象的だったのは、第三章の「前世の縁と線香花火のアイスティー」ですね。一家がバラバラになった長谷川家。その原因は横暴な父親でした。ただせさえ冷酷で厳しい父親は、純子の弟・次郎がオネエであることを知ると、怒り狂い勘当してしまいます。その際、父親への長年のストレスをぶつけた次郎がいざこざの末に暴力をふるってしまい、二度と家族が集まる雰囲気ではなくなっていました。

 

また、純子も大学時代に父親から勘当されており、それ以来一度も顔を合わせていません。かろうじで母親とは娘の愛由の顔を見せに会ってはいますが、家出した次郎とは音信不通状態で・・・。

 

しかし、離れ離れになった家族をひとつにしてくれる存在がいます。それが愛由です。愛由には生まれつき不思議な力があり、いつも純子を助けてくれる天使のような子でした。それもそのはず、愛由は純子が小学生の頃に家で飼っていたワンコの生まれ変わりだからです。

 

愛由はバラバラになった家族を引き合わせるために長谷川家の仲介人となって活躍します。それを満月珈琲店の店員から聞いた純子は感動と困惑でいっぱいになります。

 

実は亡きワンコの最期の瞬間。父親は母親に「自分は出かけたことにするから、純子を家に呼んでやれ」と伝えていたのです。しかし純子は急いで実家に駆け付けたものの、時すでに遅し。ワンコは既に息を引き取っていました。

 

当時犬を飼うと決めたのは純子でしたが、そのお世話を担っていたのは父親でした。子どもたち二人が出て行ったあと、誰よりもワンコの傍にいたのは父親でした。それなのに父親は、ワンコは、別れの瞬間を共にできなかったのです。

 

長い時を経て、人間として、長谷川家の孫として生まれ変わった愛由は、再び家族が集まるように願います。この物語はちょっとホロリとくるので、みなさんにもぜひ読んでいただきたいです。

 

 

 

おわりに

 

ほんの一部のレビューでしたが、いかがでしたでしょうか?本書を読んでいると、占いというよりは、人生の指南書を読んでいる気持ちになります。自分に気づく、向き合うことの大切さが重要だと教えてくれるのです。

 

さいごに、私お気に入りの台詞をご紹介して閉じたいと思います。

 

 

あなたという宇宙では、あなたが決めたことに星々は力を貸します。苦労をしても遠回りをしても、それはすべて正解なんですよ。星は道を照らしてくれますが、行く先を決めるのはあくまで自分なんです。(P173)

 

みなさんも満月の夜には、このシリーズを。

 

 

以上、『満月珈琲店と星詠み~本当の願いごと~』のレビューでした!

 

 

 

シリーズ一作目のレビューはコチラから