※この本を読むかどうかは完全に自己責任になります。霊感がないか、強くて寄せつけないか、とにかく無敵な方だけお読みください

 

出だしから驚かせてすみません。今回ご紹介するのはホラー小説、しかも個人的に日本で最もその手のことに詳しい作家・三津田信三さんの「五感シリーズ」からの一作です。

 

前作「のぞきめ」は視覚を焦点にしたホラーだったので今回は聴覚でいこう!と、出来たのが今からレビューする『みみそぎ』になります。

 

筆者が何か聴覚に相応しい「誰かの体験談」がないかなぁと考えていたときに、手元に届いたのが怪談仲間・三間坂から送られてきた「記録」ノートでした。「記録」ノートとは、三間坂の亡き祖父が収集していたホラー資料の中に隠されていたある心霊体験をした人たちが残した記録のことです。

 

さっそくノートを読んでみた筆者ですが、これが相当意味の分からない、気味の悪い内容で・・・

 

毎回筆者の作品には最後に「なぜそのような怪奇現象が起きたのか」きちんと「謎解き」がされています。また、読者自身がそれを受け入れることで「祓い」の効果があったのだとか。だったら今回もぜひ・・・と言いたいところですが、残念ながら、今回ばかりは無理そうです。筆者自身もノートの謎を解くことができなかったのです。

 

読めばわかりますが、本当にどんな解釈も通用しません。何これ?といった感じ。なので、本書が筆者の最後の著作になるかも・・なんて書かれています。それと同時に読者は自然とこの本の実験台になります。「記録」ノートを読んでしまったものにはどんなことが起きるのか。ちなみに三間坂さんには既にヤバイことが起きています。おお怖っ!と思った方は、決して無理をしないでください。私はというと、この本を読んでいる間、ずっと左腕が痛かったです。なぜか左手だけが冷たくなって、心なしか本自体も異様に冷たかったです。

 

前置きが長くなりましたが、以下にほんの少しだけレビューしていきます。無敵の方だけおすすみください。

 

 

 

 記録ノート

 

本書の大半は、三間坂の祖父が隠していた「記録」ノートの内容(一部)になります。というか、「記録」ノートが多少脚色された状態で、書き起こされています。

 

最初はどこかのお寺で開催された怪談会に参加した三間坂の祖父が百物語をしている時に感じた違和感の記録が書かれています。しかし途中で、他の参加者が語り出した怪談話の記録になっており、そこからさらに同じような展開が何人も続きます。驚くのはここから。なんとこのノートは三間坂の祖父による記録のはずが、すべての話の筆跡が異なっているのです。まるで一冊のノートを複数の人たちが順々に書いているように・・。

 

このように次々と語り手が替わっていき、読者は混乱していくことになります。

 

 

 

 無限ループ

 

しかもこの話は無限ループするんですよ。順番が終わったら、再び何周もして同じような話が語られるようで・・まったく意味がわかりません。だからノートも記録するページがなくて途中で終わっています。

 

話の途中で主人公が変わるみたいに文章や筆跡が変化していくことからも、どうやらこれはお祖父さんがひとりで書いたものではないようです。謎解きという意味ではさっぱりわかりませんが、怪談話自体は筆者の文章力が素晴らしすぎてすんなりと入ってきます。怖がらせる文章を書いたら三津田信三に敵う者はいませんね。

 

 

 

 地名も人名もすべて謎

 

「記録」ノートに出て来る地名や人名はすべて三間坂祖父により〓で非公開とされています。それも謎解きできない要因になっているんですね。

 

ただ、このノートに書かれている話の中にはいくつか、過去に筆者の本で書いた怪談話と類似したものがあります。それでも謎解きはできなかったのですが、これには何か大きなヒントが隠されていそうです。

 

個人的に印象に残ったのは、野辺送りの話ですね。もしかしたら地元の話なのか?とも思えて。何のことだ?と思った方は、ぜひ本書を読んでみてください。ちょっとどなたかに考察してみてほしいですね。

 

 

 

 感想

 

以上が「みみそぎ」のレビューになります。

 

一冊にこれだけの怪談話(しかも超怖い)がつまっている本はなかなかないと思います。

 

まず表紙から怖すぎますしね。

 

 

 

みなさんの中にも、ひょっとすると、この本をひとりきりで読んでしまってから変な声が聞こえるという方もいらっしゃるかもしれません。

 

はじめは二人で話している声がだんだん複数人の話し声になり、やがて音が拾えるようになると、まるで意味をなさない言葉を羅列しているだけということに気づき・・・キャー!!

 

ということで、みなさんの無事を祈ります。

 

どうかご無事で。

 

よく聞き取れない名前の人からの電話には出ないように。

 

 

以上、『みみそぎ』のレビューでした!

 

 

 

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