児童養護施設で働くということ | 児童養護施設で働いて思うこと

児童養護施設で働いて思うこと

元会社員で、転職し、児童養護施設と一時保護施設で働いていました。
そこで考えたこと、思ったこと、願ったこと、綴っていきます。

 

子育てしてみたい人、児童養護施設でやってみませんか、と、声をかけたい。

自分の子どもが欲しい人も、現在育てている人も、育て終わった人も。

子育てはしたくない、自分の子どもは欲しくないけど、人間は好きって人も。

その愛情と、心の余裕を必要としている子どもがいます。同僚もいます!

 

続けられるなら長くやったらいいと思うけれど。

「1年2年でやめるかもしれないから」って、ためらわないでほしい。

短期間だって、こめた愛にかわりはない。

ただでさえ人手不足の業界だから、1年だって施設はありがたい。

少しお手伝いする気持ちでやってみてほしい。

それは、人生を深く豊かにしれくれると思うから。

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

施設の子どもと毎日を過ごすということは。

子ども、それも、心に傷がある子ども達と過ごすということ。

それは、悲しみや寂しさが底にある大きな怒りと付き合うということ。

自分を守るための嘘や暴言、自分を見てもらうための目に余る行動に付き合うということ。

 

それは、とても忍耐が必要で、長い長い時間を要する問題。

繰り返し起こる癇癪や挑発や暴れる姿を、怒るのではなく、受け止める。

愛なんて忘れそうになる日常に、必死に冷静さと穏やかさを忘れないよう握りしめる。

罵声を浴びせられて、愛とか優しさとか、いろんなものが一時的に吹き飛んでも、決して見捨てない。

そんな時、理解や共感、幸せを願い考えることは、相手だけじゃなく、自分の心も強く温かくしてくれる。

 

この仕事を通じて、経験できた、味わえた、感情の濃さ。

自分が他人に愛という感情を感じられる喜び。

同時にどうしても感じられない苦しみ。

優しい自分でいたいのに、穏やかでいられない自分。

頭ではわかっていても、ついてこない自分の心を責めたり、自分に失望したり。

擦り切れる思いになって、自分で自分に寄り添うことを学んだ。

自分は傷つけられても、自分は相手を傷つけないんだと踏みとどまること。

それに耐える人の背中から伝わる重み。

 

優しさを、相手につたわるように表現すること。

声、態度、まなざし。言葉、考え方、体の動き。掌の温度。

子どもに、自分は大切にされていると思ってほしいから。

どうしたら子どもに温かい気持ちを感じてもらえるか。

どうしたら笑顔でいてくれるか。

どうしたら自分自身を大切な存在だとわかってくれるのか。

頭をなでる。背中をさする。ほほえむ。

自分の動作や仕草、動きを考える。まるでダンスのように。

 

 

子どもの心の底に横たわる冷たい痛みを見つめて分析すること。

子どもが必要なものに気づくのを、その時期がくるのを、隣でただひたすら待つこと。

子どもに押し付けないこと。

それはすなわち、何度も繰り返す、目に余る行動も、

いつか、その時がくると信じて見捨てないということ。

逆に言うと、ずっとずっと、あきらめず待つということ。

長い長い待ち時間。

子どものタイミングに、こちらが合わせる。

待つということが、子育てなんだと、ここで学んだ。

 

心がすさむこともあるけれど。

子供と視線が交わり、微笑みあう瞬間は、一瞬で心が温かくなる。

お互いに笑い出すときの心の高揚。

素朴で純粋な子供らしさに感じる安堵。

成長しているのを感じた時の感動。

子どもの瞳がキラキラ輝いているとき。

一緒に声をあげて大笑いしたとき。

何とも言えない、幸せや愛しさでいっぱいになる。

心が満たされる感覚を味わう。

よかった、子供が笑っている。

それだけでうれしいと感じる。

そして同時に、私もここで生きてるんだと感じる。

 

 

 

人は誰でもみんな優しさを持っていて、

人にやさしくする事はいい事だって思っていると思うけれど、

現実的にそれを行動に移すのは、なかなか難しい。

私も、会社員時代にそんな行動していなかった。

本当はやってもよかったのに、他のことに気を取られていた。

でも、この仕事は「優しさ」を業務にしていい。

私には足りないけれど、ユーモアがあれば、もっといい仕事ができる。

 

もちろん、無理して他人に優しくはしなくていい。

自分が無理をすると、結局自分の中に怒りが生まれてしまうから。

 

心とか、精神とか、なんて呼んだらいいのかわからない、でも、

確実に感触のある、見えない世界で、

子どもの心の喜びとか、痛みとか、変化とか、色んなものに触れることができる。

それぞれが、自分の人生を生きている。

苦しみも、涙も含めて、私達、生きてるんだって感じる。

生きることって愛しい、人間て愛しいって、

じんわり、世界が優しく見えてくる。

 

そんな事を、毎日考える仕事。

人生で一度、やってみませんか。

 

もし、興味が少しでもあれば、お勧めします。