2006 四川省成都・臥龍 パンダの旅 その22 ~9月2日 臥龍への道その2~ | Dreams Come True ~私の旅行記~

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車が再び走り出して、暫くすると道路が左右に二手に分かれた。

右へ行くと九塞溝左が臥龍方面なんだそうだ。全さんが「もう少し行くと、道路が舗装されていないところを10キロちょっと走りますので、しっかりと座っていてください」と警告してきた。いよいよかぁ。日本では舗装されていないところと言っても、そんなに長い距離はそうあるものではないし、一応車が通るのでそれなりに均(なら)してある。

 

中国も一応は道路なんだし、少しは均(なら)してあるのだと思っていたら・・・甘かった

ガタガタガタガタと物凄い揺れ。話をしようものならば舌を噛んでしまうくらい

 

山と山の間を川が流れ、片側の山の中腹を削って道路を作ったようなところを走るのである。街灯なんてあるわけも無い。なんせガードレールさえも無いのだから。一部は50cmくらいの高さのコンクリートの石が1mおきくらいに置かれていたけれど、殆どは金属の棒が道の端っこに差してあり、その棒と棒の間をビニールの三角の旗のようなものが付いたロープが張ってあるだけだった。

 

恐ろしいのは、道路が雨や工事の過程で(?)陥没してしまっている部分にも同じように金属の棒が差してあって旗の付いたロープがあるだけ。見ていても「え?これだけなの?下手したら落ちちゃうじゃない!」って思えるくらい。ホンの気休め程度のものなのだから。街灯もない道路だから、いくらヘッドランプで照らすとはいえ、夜暗くなってから走るのはかなり怖いことだと思う。

 

それに、夜になれば工事現場からも人々は引き上げるだろうから、万が一事故にあって崖下に転落しても、翌朝明るくなるまでは発見されないと思う。その状態では、生きる人も死んでしまうぞって感じ(^^;

ガタガタな上に、前の晩の水が溜まっていて、道路は最悪な状態。山側からもむき出しの岩が迫り、あちこちから雨水が滝のように噴出している。日本のように落石防護ネットなんてものは無い。乗っていても、もしここで土砂崩れが起きたら・・・な~んて余計なことも考えてしまうくらいの状況だった。余りにもガタガタと揺れが激しいので、シートベルトをしていた。そうでないと身体があちこちぶつかってしまうからだ。

ガタガタ道を15分くらい走っただろうか?突然前方に車が2台止まっているのが見えた。道路が陥没していて1車線になっているために対面通行が出来ないからではなく、止まっているのである。

 

王さんと全さんは言葉を交わしている。その後私達の居る後部座席に向かって「前方で土砂崩れが起きています今、岩と土砂を退かしているので、それが終わったら通れます」と言った。

えっ!前方で土砂崩れ~?!今、退かしているぅ~?

身を乗り出して、フロントガラスから覗き込んで見ると、確かにショベルカーが動いているのが見える。作業をしている人たちも土砂の上にいるのも見える。

王さんは一旦車から降りて前方の状況を見ていたけれど、すぐに戻り、静かにエンジンを切った。「通れるようになるまで、待ちましょう」と全さん。後ろを振り返ると、次から次へと車がやってきて既に渋滞が出来ていた(私達の車は前から3台目)

待っている間、車の窓を開けて数枚の写真を写した。後ろのほうに停まっていたマイクロバスの中国人観光客一行はバスから降りて、道路から下の川を覗き込んでいる人が殆どだった。

私は山側に停まっていた為、出るのはちょっと出にくい状況でもあったし、突然出発出来るようになった場合のことを考えて、外には出ずに車の中でじっとしていた

 

 

 

30~40分くらい経ったであろうか?エンジンの音で目が覚めた。特に何もすることがないので、ウツラウツラしていたのだった。現場はとりあえず車が1台通れるようにはなっていたけれど、まだまだ土砂を退かしていた。それにしても先頭の車はどのくらい待ったのだろうか?一体誰が土砂崩れを発見して通報したのだろうか?そんなことも一瞬、頭を過ぎったけれどガタガタ道と周りの景色の素晴しさにすぐに忘れてしまった。

あちこちに道路が陥没している部分があったので、対向車とすれ違うのは至難の業の場所もあった。特に家畜や野菜を積んだトラックが多いので、そんなときは山の斜面ギリギリ、相手とも擦れる寸前という恐ろしさ。王さんのドライバーとしてのテクニックには脱帽するばかりだった。

景色はというと、前夜の雨で川はかなり増水していて、茶色の濁流が流れているところもあったけれど、次第に上流へ行くにつれて、穏やかに流れ始め、一部では九塞溝の五彩池のように、エメラルドグリーンに水を湛えているところもあった。それを見て、あぁ、この辺もあの辺りと同じような部分もあるんだなぁと思ったりも。そして、更に、この時期に見ることが出来るなんて信じられないような現象にも遭遇した。なんと、川霧が発生していたのである。川面から立ち上る霧が水面を覆い、あたかも水の代わりに霧が流れているような感じで、霧の上に見える山の樹木の濃い緑とのコントラストはなんとも幻想的な風景だった。

ちょっと調べてみたら、川霧とは、主に日本では冬の間に北海道などで見られる現象で、気温が下がると川の水温が高いために水が蒸発し、それが凝結して霧になるものだそうだけれど、この場合は前日に雨が降りそもそも湿度が高いため、水蒸気が凝結して発生したのかもしれない。まぁ、そのいずれにせよ、1キロほどの間、幻想的な景色を楽しむことが出来たのは、なんとも幸先の良いことのように思えた。

残念ながら、川側には母が座っていたうえ、対向車がかなり来ていたので、窓を開けて写して貰える状況ではなかったため、写真はないのである。

あちこちで行われている工事は道幅を広げ、より安全な道路を確保するものらしい。なんせあの道は、臥龍の人々が生活物資を運んだりするための道でもあるのだから。成都から臥龍へ抜ける高速道路が出来るという話もネットなどでチラリと見たので、全さんにそれを言うと「今のところは無いと思う」とのこと。もっとも高速道路が臥龍まで繋がったら、車や人がどんどん入り込み、パンダの生息地は荒れ、絶滅してしまう可能性のほうが高いと思う。ただ、2006年7月に臥龍地区が世界遺産に登録されたので、まずあり得ないことだと思いたい。

そうそう、この道中の工事現場には色んな注意書きがあったっけ。「小心=注意」はどこにでもあるものだけど、「前方爆破 小心○○(○○部分はあまりの衝撃に忘れてしまったので、あしからず)」ってあったのには、ビックリどころか、ぶっ飛ぶって感じ。 前方爆破~?ただでさえも崩れている道路なのに、これ以上どこを崩すんじゃ~?って感じ。野生動物には影響ないのかしら?って思ったけど、無いってことなあり得ない!でも、事前調査なんて、きめの細かいことをする国民性じゃないかなぁ・・・。パンダよ、逞しく育ってくれ~!

それにしても、このガタガタ道なのに全さんはウツラウツラとしていて舟を漕いでいる(笑)。たまに身体が大きく揺れて王さんの方へ乗り出すくらい。まだ運転の邪魔にはならなかったので良かったけれど、邪魔になるようだったら、王さんも全さんのことを叩き起こしたと思うウシシ

ガタガタ道も抜けると、道路も川から離れ、周りに民家や建物がチラホラと増えてきた。やっと人間の生活の匂いを肌で感じられるような場所に辿り着いたのである。

 

そして「熱烈歓迎 中国四川省大熊猫生息地」というような赤い布の垂れ幕もあった。

多分数年前の国家のお偉方の為のものだとは思うけれど(その証拠にパンダ博物館の入り口の文字は、数年前の朱鎔基首相の文字だった)。

突然目の前がパッと開けたところに出た。すると全さん「パンダ博物館へ行きます」とのこと。ん?パンダ博物館?ってことはまだパンダ基地じゃないのね?少しがっかり。でも、「パンダ基地へ行く前にパンダのこと少し勉強しましょう」とのことで、納得。

なにはともあれ、

臥龍へ着いたのだ!

いよいよ、これからパンダに会えるのだ!