【 ごちゅうい 】
※ 悪夢シリーズは、「悪魔と人間」「神と人間」「人外と人間」の恋の話
※ 悪夢に見えるけれど、当人たちはすごく幸せなひとりがたり用の台本です
※ これらを元に、創作をされる場合には、必ず所定の方法で連絡をお願いいたします
※ ニコ生などで利用する際には、目次ページのリンク、またはこのページのリンクを張ってください
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【 手のひら数えて 】
目の前には黒く短い髪の毛。
太陽を跳ね除ける、みずみずしい肌。
返事がないと分かっていても、俺へ語りかけられる日常の話。
愛している。
そう口にすることが出来たとしても、
俺ではただの怪談話になってしまう。
熱心にお参りを続ける少女の名前は知らない。
ただ、少しばかりの霊気や神気を持っているようで、
毎日俺のいる神社へやってきては、俺に両腕を回し、
神威を感じて安心感を得ているようだ。
長いことこの社の隣に暮らしている神木である俺は、
例え神社の神主たちであっても、話などしたことはない。
語りかけられることもない。
時折、近所のジジババが根本でひとりごとを言っていく様子に
少しだけ相槌をうっているだけで十分だった。
孤独やら闇やらというものは、むしろ俺の得意なものだったはずなのに。
この少女のせいで、俺は光を欲するようになってしまったのだ。
静かな境内に佇み、月明かりに目を細めても。
そよ風が通り抜ける境内で、枝葉を目一杯に広げて太陽を目指しても。
俺の心は満たされることはない。
そこで気づいたのだ。
俺の心を満たせるのは、あの少女だけなのだと
翌日、いつものように神社へやってきた少女に、俺は枝を五本だけ伸ばした。
左足を絡めとり
右腕を包み
右足を抱きしめ
左腕を引き寄せ
そして最後の枝で、首を捕まえて。
驚く少女を樹の幹に押し付けた。
何も心配することはないのだ。
俺は神威の高い神木。
少女は俺の中へと取り込まれ、もう二度と外へは出られない。
少女は俺の中で生きることで、永遠に俺の側から離れない。
まるで内側から熱を持っているかのよな幸福感に、
俺は少女への愛で、いつか燃えてしまうのではないかと、
嬉しい悲鳴をあげたいほどだった。
あぁ、愛しているよ。
もう二度と離しはしない。
この二人きりの場所で、どちらかが朽ち果てるまで共に居よう。
そしてどちらかが朽ちたのならば、すぐに後を追いかけよう。
これが、これだけが…
俺がお前を愛していると証明できる唯一の方法なのだから。
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※ 少女目線
※ 公開する場合、ご神木目線の次でも前でもいけると思います
私には、ほんのちょっぴりの霊感らしきものがある。
自分の周りに危ないことがあると、何故か気づいてしまうのだ。
例えば、背中がゾクゾクっとしたかと思うと、
後ろから首の無い女の人が追いかけて来ていたり。
例えば、冷や汗がひどくて困っていると、
目の前を百鬼夜行が通り抜けたり。
どっちの時にも、慌てて近所の神社に逃げ込んだから無事だったけれど
見えるし感じるし、予知まで出来るっていうのは凄く困る。
「どうしよう、ご神木さん。また悪い霊に追いかけられちゃったよ…
あれを無視しろって無茶な話だよね…」
答えが無いと分かっていても、ご神木に抱きついて
少しだけ神威を分けてもらう。
そうすると、凄く落ち着くし悪い幽霊も寄ってこなくなる。
なにより、変な話だけれど、私はこのご神木が大好きだった。
側に行くと、なにか守られているような気がしたし
境内にある他の木や、他の神社のご神木とは全然違う。
何が…とはうまく言えないけど、とにかくこのご神木は特別。
そう思っていた。
ある日、私がご神木に神威を分けてもらおうと近づくと
するすると枝が五本伸びてきた。
両手足と、首を捕まえられて、少し…気が遠くなる……
気がつけば、私は狭い暗い場所で誰かに抱きしめられていた。
少ない明かりで見てみれば、私よりも少し浅黒い肌と、
綺麗な緑色をした瞳と髪の毛。
あぁ、彼がご神木なんだと思った瞬間、
私は彼の唇に自分のソレを重ねていた。
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※ 此処から先、役者が二人居るのであれば
■ご神木
これならば、声を届けられるのだろうか
■少女
えぇ、もちろん
■ご神木
お前をもう、ここから出してやる気はない。
■少女
あなたは、私を食べてしまったの?
■ご神木
あぁ、そうだ。お前は俺の中へ。俺だけの、光として…
■少女
あなたにはお世話になったから、構わない。
ただ、お願いがあるの。
■ご神木
お前が望むことならば
■少女
私を愛して、決して離さないで
■ご神木
あぁ誓おう。この身が朽ちようと、お前が逃げたいと泣き喚こうと。
晴れも雨も関係なく、お前の心や腰がドロドロに溶けてしまうほど
俺はお前だけを愛している。(可能ならリップ音)
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