【朗読台本】ふぉーすてっぷ かにばりずむ【悪夢シリーズ】 | 今も昔も

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「自作歌詞&曲」と「声劇台本」が主食のごった煮ブログ。

【 ごちゅうい 】

※ 悪夢シリーズは、「悪魔と人間」「神と人間」「人外と人間」の恋の話
※ 悪夢に見えるけれど、当人たちはすごく幸せなひとりがたり用の台本です
※ これらを元に、創作をされる場合には、必ず所定の方法で連絡をお願いいたします
※ ニコ生などで利用する際には、該当ページのリンク、またはこのページのリンクを張ってください

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【 ふぉーすてっぷ かにばりずむ 】

私のお祖母様は、魔女でした。
あの忌々しい魔女狩りから生き延びて、お薬を作る方法を私に残してくれました。
魔女の中でも、お祖母様はお医者様だったのです。
お祖母様は、私に「スピカ」という輝く星の名前をくださり、
とても博識で夜空のことも、お薬のことも、色んなことを教えてくれました。

だから私は、お祖母様のために、毎日西の山へ行って薬草を採り、
東の川へ行って綺麗な水を集めていました。

お祖母様や村の人に聞いたのですが、西の山には賢いオオカミがいるそうです。
人間を襲わず、時には薬になる草を教えてくれる、
地球が回っていることや、読み書きを教えてくれるオオカミが居るのです。

そんなオオカミさんに出会ったのは、お祖母様が亡くなって
私が小さな病院の先生になったばかりの頃でした。

手の届かないところにあった薬草に手を伸ばしていると、誰かが体を支えてくれたのです。
薬草を手に入れて振り返ると、みすぼらしい洋服と、健康的な体。
けれど人間の耳は見当たらず頭のうえでヒョコっと揺れる白い耳、
人間よりも尖った牙、それから腰に揺れるふわふわの尻尾。

彼が、西の山のオオカミだったのです。

私はオオカミにゼフェルという名前をプレゼントしました。
彼は名前も私のことも気に入ってくれたようで、
毎日のように一緒に過ごしました。

知識を交換することはとても楽しく、病院のことでも彼に相談することが増えました。
そんなある日のことです。


「スピカ、お前を食べたい」


ゼフェルに、そう言われたのです。
私は、知らぬまにゼフェルを愛していました。
人間とオオカミを司る神様では、到底敵わない思いでしょう。

ですから私は、彼がオオカミとしての本能を覚えていることを知ったうえで、
こう答えるしかなかったのです。


「はい、どうぞ」


ゼフェル。
あなたが私との子を残すことを望むのならば、
私は私の持てる限りのちからで支えましょう。


「スピカ、お前を食べたい」

「はい、どうぞ」



ゼフェル。
あなたが私を己の血肉とすることを望むのならば、
私は私の全てをあなたに捧げましょう。

ゼフェル。

ゼフェル…

ゼフェル!

あぁ、愛しい西風のお方、


「スピカ、お前を食べたい」


私の愛しい西風のオオカミよ、己が欲を、全てを私にみせてください。
私は私の全てを持って、あなたの全てを愛しているのですから、ねぇ、ゼフェル。


「はい、どうぞ。召し上がれ」



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狼人間