【朗読台本】さいしょのあくむ 【悪夢シリーズ】 | 今も昔も

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「自作歌詞&曲」と「声劇台本」が主食のごった煮ブログ。

【 ごちゅうい 】

※ 悪夢シリーズは、「悪魔と人間」「神と人間」「人外と人間」の恋の話
※ 悪夢に見えるけれど、当人たちはすごく幸せなひとりがたり用の台本です
※ これらを元に、創作をされる場合には、必ず所定の方法で連絡をお願いいたします
※ ニコ生などで利用する際には、該当ページのリンク、またはこのページのリンクを張ってください

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【 さいしょのあくむ 】

少年と少女は、小高い山の上にある集落に、同じ日、同じ病院で産まれた。
その集落では【雷-トール-】が鳴り響いた日に産まれた子には、
【全知の神-ゼウス-】、【豊穣の神-トール-】が司ったという雷を畏れ敬い、
「雷-フール-」と名付ける。

【少年と少女-ふたりのフール-】は、産まれた時から手をとりあい、互いを尊敬し
共に生きていくものなのだと思っていた。
少年は少女の綺麗な黒髪を撫でては褒めたたえ、
愛らしい頬をそっと撫でては喜んだ。

「君は僕の、一番大切な人だよ」

【少年と少女-ふたりのフール-】は、産まれた時から手を取り合い、互いを尊敬し
共に朽ちていくものなのだと思っていた。
少女は少年のまだ小さな背中に勇気を覚え、
暖かな手に、未来への躍動を感じた。

「あたしは、あなたの一番では嫌なの」

少年は困惑した。彼女の気持ちが分からない。
生まれてずっと一緒にいるのに、こんなことは始めてだ!

「僕は、君に何をしてあげたら、許されるの?」

「あたしは、あなたを"一番好き"ではないの」

「君は、僕が一番好きじゃないの?」

「そうよ、そうなのよ。」


【少年と少女-ふたりのフール-】の小さな争いは黒いモヤを生み、
そのモヤの中からは、世界で始めて雷鳴が産まれた。

雷鳴は二人の居る場所から、どこか遠くから、次はまた近くから。
次々と鳴り響いた。大きな音で鳴り響いた。

少女はその音に驚き、少年へ助けを求めた。
しかし少年は、少女の手を振り払い、その黄色い瞳で言ったのだ。


「僕を嫌いだという君を、僕は守れない」

「嫌いだなんて言っていない!」


少年は少女の言葉を聞き入れず、雷鳴の光にまたがると
その雷鳴で少女の喉を引き裂こうとした。
ところが、雷鳴、【雷鳴-さいしょのあくむ-】は言った。


『産みの親たちよ、礼を言おう!さぁ、父上様、最後の仕事だ。このわたしに肉体を与えてくれ!』


【少年-フール-】は【雷鳴-さいしょのあくむ-】に体を分け与え、
【少年-フール-】は【雷鹿-フュルフュール-】へと成り代わった

【雷鹿-フュルフュール-】の心は【少年-フール-】のものであった。


「フール、あたしは、あなたのことが"一番好きじゃない"」

「もう聞きたくない」

「あたしはね、【あなた-フール-】のことを、唯一愛する人と思っているのよ」


少女の言葉に、【少女-フール-】は【召喚者-フール-】として
【翼を持つ凛々しき嵐の雄鹿-フュルフュール-】に永久の愛を誓う

【燃え立つ尾を持つ鹿-フュルフュール-】は【召喚者-少女-】の【愛-みちびき-】で
生まれ育った場所を照らす、唯一の悪魔になった



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フュルフュール⇒「フルフル」
26の軍団を率いる序列34番の地獄の大伯爵。
下半身と頭部は雄鹿、上半身は人間の男性、背中には悪魔の翼。