
やがて、枯れ葉がきれいな秋になりました。明日葉くんは、いっしょけんめいにがんばったので、大きくはなったのですが・・・イチジク母さんには、ぜんぜん届かないのでした。
『ぼくは、もう・・・母さんのようにはなれないんだ。いつも励ましてくれる女の子に、甘い実を食べてもらえないまま死んじゃうんだ。』
明日葉くんは、ついにあきらめたのです。
そこへ、女の子とママが来ました。女の子が言います。
「ちいちゃな、ちいちゃな、アチタバくん!おおきくなってよかったでしゅね。ママがよろこんでましゅよ。」
そして、ママが言いました。
「おおきな、おおきな、アシタバくん!明日の夢をかなえたのね。」
女の子が、隣で小さなお手々で精いっぱいパチパチと拍手しました。
ママが、明日葉くんから葉っぱを摘みながら続けます。
「体の弱いむすめのおいしい薬になるまで、大きくなってくれて本当にありがとう!おいしく食べさせてもらいますね。」
おどろいた明日葉くんは、大きなイチジク母さんを見上げます。
すると、イチジクさんは、秋の青いお空できれいな黄色になった葉っぱをゆらしながら答えました。
「明日葉くん。今のあなたこそが、毎日、夢見てたあなたですよ。あなたはりっぱな明日葉になったのですよ。」
イチジクさんが優しくほほえんだその時、女の子が言いました。
「おーきな、おーきな、アチタバくん!あちたのゆめは、あたしのためにお庭で、お医者ちゃまになることでちゅたねー!」
女の子とママが、笑顔いっぱいになったのを見た明日葉くんは、うれしさのあまり、ピカピカの柔らかな葉っぱを思いっきりゆらしました。
すると、庭の木々の枯(か)れ葉たちも、いっせいに踊りだして、祝福するのでした。
その後、明日葉くんは毎年毎年、おいしい葉をしげらせます。
やがて、女の子はお庭に出て遊べるほどに元気になりました。
そして、笑顔で明日葉くんに言うのでした。
「おおきな、おおきなアシタバくん!明日も、わたしのおいしいお医者さまのままで、いてね!」

拙著【プチ童話館】より抜粋。


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