
「月見草~渚の愛」(後編)
昨年の夏の夜明け、その人と初めて会ったそうです。
その頃、月見草は潮風に焼けただれて花は焦げ付きそうでした。
土表面の砂地の乾燥と塩分が強いため、生きる闘いに疲れ果てていたそうです。
半ばあきらめかけて枯れ行こうとしていた、と言うのです。
その時、 一人のサーファーが彼女に向かって、水平線を背にして振り返り、褒めてくれました。
「黄色い花か!可愛いなあ!おれ、黄色い花、好きなんだよな!」
枯死を半ば受け入れていた月見草は『可愛い花!好きな色!』ですって?
こんな人がいてくれた。そうなんだ。
頑張って生きて、美しい黄色い花を沢山つけなくちゃ!
その朝から、そう決意したのだそうです。
でも、やはり相当衰弱していたので昨年は数個の花だけ咲かせて枯れてしまったそうです。
そして!来年の夏こそは!と、月見草は、そのサーファーによって希望の力に満たされました。
こうして、さらに一年が過ぎようとしていました。

カモメくんの話では、その人は真冬を除いて一年中いつでも「良い波」がある日は来るという。
『でも、でも、私は、夏の花。そして宵から早朝までの花。あの人が来るその時に、私が咲いて見せるチャンスは、ほとんどありません。でも、やはり希望は私の生きる力なのです!』

そう話す月見草の黄色は、灯火のように静かに輝いていました。
わたしは聞き終えた話の内容に返答できませんでした。
波の音を聴きながら、空を見上げると、雲に隠れていた月が遥か沖で小さな漣に映っています。
それを見たわたしは心が動かされて、とっさに励ましの言葉を思いつきました。

「ほら!雲が切れてきたわ。月が出てきたのよ。明日の朝はきっと晴れるわ。だから、必ず、その人がサーフボードを片手にやってくるに違いないわ」
そう言って月見草の渚を後にして宿泊しているホテルへと戻りました。
そして、今朝、ベランダから見えたのは・・どんよりした夏の最後のような空模様です。
あ~!晴天になりますように!浜辺で、咲きながら待ち続ける月見草の希望の力が費えませんように。心ひそかに祈ります。そうだわ!天気予報は?急いで予報に耳を傍立てます。予報士が言いました。
『今日は、快晴でしょう~!』
まあ~!「良い波」でありますように!
潮風の中を、渚でじっと耐えて咲いている月見草が満開になる歓喜の瞬間がもうすぐです。

あの・・からかいカモメの声など耳に入らないことでしょう。
月見草の黄色い花が好きだ!とつぶやいて、希望を与えたそのサーファーは、きっと!やって来るでしょう。
サーフボードを片手に月見草の待つあの渚へと!
(完 )拙著「夢の散歩道」より抜粋

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(The above is written by ゆうゆ)










