
原っぱの仲間の皆が、市長さんの言葉を聞いて大喜びです。
これまで通りに、仲良し皆で原っぱに住むことができるのです。
緊張がとけて、ほっと安心したアネモネは自分の悩みの種に心が戻ります。
アネモネは『よだれ掛け』が『レースのスタンドカラー』と褒められたことを思い出し、驚きと嬉しさと意外だったことでちょっぴり動転していました。
その時、タンポポが明るく言いました。
「やっぱり、上品なアネモネさんには、レースのスタンドカラーがお似合いよ。」
じつは、タンポポは首のガクである葉っぱのよだれ掛けで、アネモネが密かに悩んでいたことを、初めから知っていたのでした。
アネモネは自分だけのこととして悩み、誰にも知られないように必死に隠してきたつもりだったのです。
それなのに・・・。
でも、アネモネはすぐに気が付きます。
あのカエルやモグラだけではなく、誰もがみっともないと感じるだろうと確信していたガクである『よだれ掛け』が、他の皆にはほんの小さなことだったんだ!と・・・。
それなのに、大げさに悩んでいたことが恥ずかしくなりました。
そして、自分の悩みだけで心がいっぱいになり、もっと大切なことが見えないままで、原っぱで暮らしていたことにも気付いたのです。
もっと大切なこと!
それは、友達や仲間を疑ったり怖がったりするのではなく・・・むしろ、信じることでした。
そして、お互いに親切な気持ちを抱いて、必要な時には勇気を出して助け合うことでした。
原っぱの白いアネモネは、今日の経験で学んだ大切なことを、生涯・・枯れるまで・・ずっと忘れないようにしようと決めました。
今年の春!
アネモネは友達や仲間と共に幸せに満たされて、春風にそよそよと揺れながら楽しそうに、美しく咲き続けます。
素敵で上品な『よだれ掛け』を、堂々と付けたまま!!
(終わり)
拙著童話の宝石箱 よりの抜粋でした!

