「青い猫と虹の一族」三章~信じる心(15)・・・冬編
ジョイは、目の前で苦痛にもがく飼い主の顔をしっかり見つめて、耳をそばたててサムの指示する声を待ってみる。
するとサムの低い呻き声をジョイの耳が捕らえた。
「ウ、ウ・・・ジョイや・・・ありがとう。おかげでわしは・・・ウッ!」
電話の向こうのローズの騒ぐ声で、サムの言葉はしっかり聞き取れなかったが、感謝の言葉だった。
ジョイは焦る。
どうすればいいのだろう!
電話の向こうのローズの泣き声が、床の上に落ちた受話器から響いている。
ジョイの眼が光り、身を翻して玄関へ突進する。
彼は冬の早い夕闇の外へ駆け出し、隣家の庭へ繋がっている秘密の出入り口の小さな塀の穴を潜り抜ける。
そこは、ピースのいる庭。
ピースは突然目の前に現われたジョイに驚くが、何か大変なことが起きたのだと本能的に察した。
巨体を急いで起こし、真剣な眼差しをジョイに向ける。
『「どうしたんだい?ジョイ!何が起きたんだ?」』
『「お願いだよ、ピース!急いで君の飼い主たちを呼んでくれ!サムが倒れたんだ!」』
ピースは返事をする時間を惜しみ、飼い主の家族が食事をしているダイニング近くへ庭を猛突進し、外から
「ワンッ! ワンッ!」
と、あらん限りの力で吠え立てた。
世帯主である飼い主のマークが、小太りの体を窓から出す。
「おいおい!ピース!珍しいな、一緒に夕食をしたくなったのかい?」
と、愛犬に語りかける。だが、ピースの隣で、夕闇に光るジョイの眼に気が付いた。
「おや、ジョイだね。どうしたんだい?この寒い中を・・・」
と、不審そうに外に出て来た。
ピースは吠え続け、ジョイは滅多に出さない鳴き声を盛んに聞かせる。
その異常を感じ取ったマークは、広い庭を駆けて門へ向かう。
ジョイは、塀の穴から自宅へ駆け込み、先回りして床に横たわっている主人の傍らに立った。
マークが、滅多に訪ねたことのない玄関で
「失礼します」
の、一言と共に入り、そこで目にしたのは、床の上で動かないサムだった。
その(16)へ続く (by ゆうゆ)
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