前にも書いたが、景気循環の大きな原因は労働市場の調整の遅さがその要因の大部分と自分は考えている。その理由を以下に述べよう。
 まずある好況時からはじめるとして、好況状態が続くと、労働市場が売り手市場になり賃金相場が上昇する。そうすると一生産物あたりの単位労働コストが上昇する。そうすると企業利潤が減り企業経営側は生産規模を減らそうとする。生産を減らしても、減価償却費は減らない上、労働市場の調整の遅さにより賃金水準はなかなか下落しない。であるから企業収益は悪化し、企業側はさらに加速して生産規模を減らそうとする、つまり不況状態が発生する。しかし不況がある程度続くと、減価償却費も減少し労働市場もゆっくりであるが買い手市場となり賃金水準も低下し、単位労働コストも低下し企業利潤が発生する可能性が出てくる。そのときが景気の底で企業経営側は将来の利潤獲得のため事業規模を増やそうという兆しが生まれる。そしてその事業投資がある程度の利潤を生むようになる。そして労働市場の調整は緩慢なため賃金は低く抑えられているため事業を拡大すればするほど利益が拡大し、それがさらに投資を呼びというように好況状態に突き進んでいく。しかしある時点で労働市場がその調整に追いつき労働単位コストが上昇し・・・という具合に景気が循環する。
 つまり景気循環の大きな要因が労働市場の調整の緩慢さにあるということである。自動制御工学ではある要素の調整遅れは必ず振動を引き起こすのが確認されている。つまり経済の景気循環も自動制御上の振動という自然現象と同じ原理が働いているといえよう。もちろんこれを微分方程式で表現するのは至難の技であるが。
 注意しなければならないのは、この現象は一地域独自で起こっているというものではなく、一大経済圏で起こる現象であるということである。ある意味地域経済といえる各国景気循環はそのそれが属する一大経済圏の景気循環がその輸出入や資金移転を通して連動して発生する景気循環といえる。だから景気循環を小国内だけの理論で解明することはできないだろう。