前に見たように、経済の成長は生産技術の関数で、生産技術が向上すれば所得もそれに比例して伸びるはずだが、アメリカでは1970年代から、日本では1990年代ころから個人所得の伸びがほとんど停滞している。
 もちろんアメリカでも日本でも高度成長期ほどでないにしても、生産技術力はそれなりに向上しているはずであるが、実際停滞したままである。
 その大きな原因が、中国を含めた新興国の経済成長の早さであると考えられる。その理由は以下の通りである。
 新興国がまだ停滞していたとき、先進国は途上国から安く原料を輸入し、またそこに工場を進出させ安い賃金による安い製品を自国に持ってきて膨大な利益を上げてきた。しかしながら途上国が経済成長し始めるとその国の生産技術力が急激に増大し、低技術生産物からしだいしだいにより高度な生産物という様に徐々に先進国と競合するようになる。そしてその低価格、低賃金によりそのシェアーを奪うようになり、交易上の付加価値をより多く獲得できるようになる。そして新興国は成長率(生産技術力の向上)が早いため、交易上獲得できる付加価値分配率が年々増加する。
 先進国は、たとえある程度生産技術力成長があるにせよ、新興国の生産技術力の伸びに比較して相対的に小さいため、交易上の付加価値分配率が低下し、生産力向上による付加価値の伸びを相殺し、それが経済停滞の原因になるということである。
 だからといって交易をやめた方がいいということにはならない。もし交易を止めたら交易による利益を失い、生産可能性が激減するからであり、交易したほうが確実に生産可能性はかなり大きいからである。
 これからもわかるように、経済停滞は新興国の経済成長率が低下するまで続くだろう。逆に新興国が先進国の仲間入りしたときには、その停滞も収まってくるという事である。