ブーの小さな船は、途中で巨大なカニに襲われながらも、無難に上陸を果たした。
ここが絶望の島と呼ばれる、恐るべき魔導師、モルドラネスの支配する島だ。
この島のどこかにある、【鉄の地下廟】なる場所に、ブーの探す善なる魔法使いアルサンダーが囚われているというが…
信頼のおけるヴァネスティンの水晶占いはかなり当たる。
彼の話を信じるなら、まだアルサンダーは生きている。
(ともかく、急がなきゃ… アルサンダーを救出する事が先だな。)
ブーはそんな事を考えながら、隠れるように急ぎながら島へと上陸した。
だが、小舟を隠して慎重に砂浜を歩き出した頃…突然彼女に話しかける太い声が聞こえた。
ブーは一瞬驚き、辺りを見回すと…そこには巨人が立っていた。
『!!!』
うっすらともやのような霧の立ちこめる中、その巨人は無表情でヌッと現れると、大きな声で言った。
「こんにちは、人間よ。…いや、エルフか?」
ごくり。思わず唾を飲み込む。
とりあえず敵意は無さそうだ。ブーはエルフ・マチェットを静かに降ろし、巨人の言葉に答えた。
「ああ、そうだ。あたしは 旧世界のレンドルランドの槍鳴り竹一族…ブー・バンブー。」
「レンドルランド…? アランシアか?」
「……いや、旧世界だ。」
「旧世界か。聞いたことがあるが、実際にその国のものと話すのは初めてだ。
……客人よ、絶望の島へようこそ。今夜は私が歓迎するぞ。」
※※※※※※※※※※※※※
絶望の島に到着して数日間、アルサンダーが捕えられているとされる、【鉄の地下廟】にたどり着くまで、ブーは島の外を探索することになる。
巨人と意気投合し、様々な会話を楽しむほどにまで親睦を深める。
そして地下廟はここからはるか西、島のほぼ中央の荒野に存在していることを知る。
それから、ブーはさらなる冒険を重ねた。
喋るエリマキトカゲに遭遇したり、この島の妖精族と出会ったり、原住民の村で情報を集めたり、旧世界とはまた趣の異なる様々な出会いやサバイバルを楽しみ、そして時に命をかけて戦った。
そして5日目の夜の帳が降りようとする頃…
ブーは遠い西の丘に、沈みゆく太陽に照らされて小さな建物があるのを見つけた。
それは岩だらけの荒れ野の向こうにひっそりと建つ、小さな家のようだった。