昨日は、長女の「医師の誓い」の儀式がありました。
儀式は伝統的に、コペンハーゲンの街の中心にある大学本堂の祝賀ホールで行われます。
長男、次男の時は冬だったので、曇り空の写真が残っています。
でも昨日のコペンハーゲンは快晴でした。
コペンハーゲン大学は、1479年に創立されたデンマークで一番古く、1920年代までは、なんと唯一の大学でした。
写真の講堂は、キャンパスとして残っている一番古い建物ですが、1836年に建てられた、意外と新しい建物です。
ナポレオン戦争でフランス側で参戦していたデンマークは、1807年、イギリス軍による大砲撃を受けました。街の中心、コペンハーゲンのカルチェラタンとも言える地域は火の海となり、大聖堂の聖母教会をはじめ、そのすぐ隣に位置するコペンハーゲン大学の講堂も焼け崩れてしまいました。
そのため、この講堂は、その後建てられたものです。
入り口にはコペンハーゲン大学の旗。
門にはラテン語の碑文「Coelestem Adspicit Lucem」(天の光を見る)と書かれています。
元々は、「Sublimia petens ingenium/Coelestem adspicit lucem」と言う碑文で「Coelestem adspicit lucem」はその一部。「究極を追い求める心は、天の光を見る」と言うような意味です。
知識が高い方向に向けられることで、崇高な本質の包括的な理解が得られる、と言うわけです。
大学の本堂の碑文に相応しい、そして、全てに通じる素晴らしい言葉だと思います。
碑文の上には、福音書記者ヨハネと全知全能の神ゼウスを象徴する鷲の像が天を見上げています。
文学部の入学式もこの本堂で行われます。三男は心理学科入学を希望しているので入学式はここかな?って思います。
心してこの門をくぐって欲しいです。
長女は、笑顔でこの門をくぐり、かなり緊張しながら医師の誓いを無事に立てることが出来ました。
それに立ち会ったのは、娘の彼、主人、私の3人です。
さて、立会人としてだけこの門をくぐった愚かな人間は、写真でその様子をサクッとご報告します。
入口ホール。
プログラム
上の方には医学部のコーラスの皆さま。素晴らしい歌声でした。
祝賀ホールの壁には、コペンハーゲン大学の歴史を伝える絵がぐるりと描かれているのですが、中心人物の中に女性の姿がありません。
それもそのはず、女性が大学に初めて入学したのは1877年で、148年前。コペンハーゲン大学546年の歴史からすると、最近の出来事だからです。
現在は、ざっと見渡したところ、医学部の卒業生の3分の2が女性です。
「もう少し男性にもいて欲しいのだけど……」と冗談を交えながら、「現在に至るまでの先人たちの歴史を忘れないように」と言う内容を含む、女性学部長のスピーチがありました。
医師の誓いは、学部長が読み上げて、医学生が1人ずつ前に出て、学部長と握手することによって承認する、と言う形で立てられます。
どんな時も、患者に対して、貧富の差なく、公平に医師としての最善を尽くす……と言った内容です。
紀元前5世紀ギリシャで始まった有名な「ヒポクラテスの誓い」を基にして作られた、このデンマーク語の「医師の誓い」ですが、デンマークで民主主義がよちよち歩きしはじめた、1815年以来の医学部の伝統です。
儀式の後は恒例のレセプションがありました。
祝賀ホールの木製の壁が下がると言うカラクリがあり、壁が床まで降りるとその向こう隠れていたホールが現れ、そこには飲み物食べ物が用意されています。
今回は、スパークリングワインやソーダ水などのノン・アルコール飲料、果物、Kransekageと呼ばれる、デンマークではお祝いのつきものの焼いたマジパンのケーキが用意されていました。
お兄ちゃんたちの時は、サンドイッチやカナッペなどもあったので、(えっ?)一瞬ちょっとガックリきてしまった食い意地が張った私(あてにしてお昼ご飯をたべないで出かけたもので……)。
大学も色々節約しなきゃ!みたいです。ケーキはとてもおいしかったです。
そして、儀式の後、私たちは、老舗のケーキ屋さんLa Glaceに寄って、それぞれ好きなケーキを選んで食べながら儀式の余韻を味わうと言う、3回目で恒例になった行事に向かったのでした。
冬場は並ばなければ入れないLa Glaceですが、夏場は外席が沢山あるので余裕があり、並ばずにスーッと午後のお茶を楽しむことが出来ました。