卒業生ツアー | あるバレエママの告白

あるバレエママの告白

デンマークの暮らし、教育、子どもたちを通して知ったバレエのこと、旅行の話などなど、ふと頭に浮かんだこと、思ったこと、感じたことをそのまま綴るブログです。

所変われば品変わる。


5番目の末っ子の、私たちにとっては5回目の卒業生ツアーでしたが、とてもパワフル、なによりワイルドで、新鮮な体験でした。さすがチーム・デンマークのクラス!


いや〜違っていたのは帽子の色だけではありませんでした〜!


デンマーク6月下旬の風物詩、高校卒業生の卒業生ツアー。


高校によって少しずつ伝統が違うし、クラスの人数や、どんな性格の学生たちがいるのか、もちろん出迎える家族によっても違うんだってこと改めて気付かされました。


だから、これも一例と思ってブログを覗いてみてください。


到着前1時間を切った(この時はそう思っていた)ので、息子の希望通り、出来るだけ直前に作るのが好ましいイチゴ飴を作成中の私の写真。


ゴタゴタの台所で失礼。


息子が電話をして来たけれど、揚げ物をしていたので私が携帯を取れなかったことなどが原因で生じたコミュニケーション・ミスで、もう直ぐ到着だ〜!と勘違いして食べ物や飲み物を庭に運び出す私たち。


学生帽を所有している人は、新しく誕生した学生たちを帽子を被って出迎えるって言うのは、一般的な伝統らしく、主人を始め、兄や姉たちも学生帽を被って到着を待っていた。



同じデンマーク語を話している親子でもでも意思が通じないことはあるものです。


手が離せない私の代わりに息子の電話を取った主人、到着が30分早まるらしいとなぜか勘違いしてしまい、私たちはそう思いこんで、慌てて食べ物を運び出し、準備を完了させてしまっていたのでした。


ようやく勘違いに気づき、飲み物だけは冷蔵庫に戻して、のんびり家族で記念写真して到着を待つ一族でした。


写真は、パリ出発前に寄ってくれた嫁ママが撮ってくれたもの。


重要なポイントで写真や動画を撮影してくれたり、食べ物をお皿に並べたり、庭に運んだり、学生たちと会話したり、嫁ママが大活躍してくれて、本当に助かりました。感謝、感謝です。


卒業生のトラックを家に迎える儀式にやって来るのは、我が家では家族だけの行事ですが、友人やお近所さんも招待して20人くらいで迎える家庭もあるようです。


そして、予定通り、定刻にご来場の卒業生ツアーの皆さま。遠くにトラック見えるかな?


兄や姉たちの時は、ホストになる学生の家が近くと、その学生が選んだ音楽をガンガン鳴らして、到着すると学生たちは比較的静かにトラックを降りて来て、1人ずつホストの家族から祝福されながら普通に敷地に入って行ったのですが、今回は違いました。


末っ子が通った高校のやり方は次のようでした。


家の前にトラックが停まると、その時にホストの学生が選んだ音楽が鳴り始め、先ずはクラスメイトたちが後方に設置された階段からトラックを、踊りながら降ります。


そして、下の写真のように帽子でアーチを作ってホストの学生を迎えます。


ホストの学生は、後で書く「ビール飲み干し儀式」を受けた後で、トラックから降りて帽子のアーチをくぐり抜け、クラスメイトから祝福を受けます。


その後で、学生たちは家族から祝福を受けます。


ちなみに、息子が選んだ音楽は『ガンナム・スタイル』


いいお天気に恵まれて、庭で出来て本当に良かったです。


学生たちは、ストップ地点の移動の間に歌ったり、叫んだりで体力を使うので、ストップ地に到着すると、基本的には、ただ飲んで、食べて、休んで、って感じかなぁって思います。


スピーチするホストの家族はいると思いますが、特別お楽しみなどは用意する必要はありません。


皆んなよく食べてくれて、稲荷寿司以外の寿司は完売でした。稲荷寿司は、大好きで食べてくれるデンマーク人と、手を付けないデンマーク人で分かれますね〜!甘いからかな?


そして、今回はじめてで、素敵だなぁ〜って思ったのは、クラス代表による、ホストになった学生への祝賀スピーチでした。


トレーニングで忙しいのと、元々我が道を行くタイプの息子は、バレエ学校の同期以外のクラスメイトで交流があったのは限られた子たちだけだったけれど、とても優しいお言葉を頂きました。


その前に、これはビックリしたのですが、上にも書いた「ビール飲み干し」の儀式です。


下の写真のように、ジョウゴからホースを通って流し込まれるひと缶のビールを一気飲みします。もちろん強制ではなく自由意志ですが……


ファンタで勘弁してもらって一気飲みする主人。この後、同じ方法で私も一気飲みしたんですよ〜!一生で最初で最後のチャンスだったもので!ストップウォッチで時間を測って行われたのですが、主人より飲むのが早かったと褒められました〜!


ちなみに、後から分かったのは、炭酸水で勘弁してもらったのは、我が家だけで、他の家の保護者たちは皆んなビールを一気飲みしていたそうです。


クラスメイトの家が離れた距離に位置しているために、2日間かけて行われた末っ子の卒業生ツアー、いつもなら20分くらいの訪問で、バババーっと来て、バババーっとさる感じだったのですが、今回は30分いてくれて、バレエ学校の息子の同期の他に、はじめて会ったクラスメイト数人とものんびり話すことが出来て面白かったです。


このツアーを実行するためには、幹事になる子がクラスに少なくとも1人はいなければなりません。


トラックの予約、お金集め、物品の購入、訪問先の順番やルートの相談、などなどなどなど、仕事が山ほどあります。


そういうことができる子が、どこでも、必ず1人はクラスにいるものだって言うのは、不思議ですね〜〜!ホント!感心します。


末っ子のクラスの幹部は、とても魅力的な女子サッカーの選手でした。彼女の所属するクラブは、最近開催された国内戦で優勝したそうです。


バレエ、アイススケート、アイスホッケー、サッカー、ゴルフ、テニス、自転車、ボーリング、などなど……


皆んな、それぞれの部門で、行けるところまで頑張ってね〜!


活躍をお祈りいたします。


再出発するトラック。


全員乗り込んで、階段のドアが閉まった後、音楽が鳴って、トラックがユッサユッサと揺れ動くほどフリフリ踊ってお別れの挨拶をしてくれました。


トラックに何が書かれているか?ですか?


側面には、乗っているクラスを象徴するようなスローガンが書かれています。後部に書かれる言葉は、どのトラックも多少の違いがあってもほぼ同じです。


写真のスローガンの絵をじっくり見ると分かると思うのですが、あまり品がいい書き方ではないので直訳は避けます。


意訳すると……左は「16人の男子と8人の女子。クラクションしてくれたら、フリフリして答えるよ」ってとこかな?そして、右は「クラクション1回で、一口飲んで乾杯。クラクション2回で飲み干します。3回で見せちゃうよ〜」ってことかな?


こう言うことが書いてあるから、卒業生のトラックが通る道は、クラクションが鳴り響いて、うるさ〜いです。


いや〜、このデンマーク独自の伝統、オープンで、自由、寛大。でも限界が見当たらなくってちょっと〜!?、現代デンマークの良いところも悪いところもぜーんぶ出ちゃっている感じです。


でも、卒業生にとっても一生に一度の思い出の日ですからね〜!許しますよ、もちろん!


伝統、伝統と言っても、世代と共に変化して来たと思うし、地方によっても違うだろうし、今回は、高校によっても違うんだって気付きました。


学生帽にしても、1856年からある伝統なので、89歳の義母が高校を卒業した時も学生帽はあったけれど、今のように学生が各自購入して準備するものではなく、高校が準備して授与したものだったそうです。


今回驚かされたのは、末っ子の高校では、最終試験後、試験官が帽子を授与すると言う方法ではなく、試験会場を出た後、保護者が帽子を授与する、と言うやり方でした。


高校を卒業する人が増えた今、ひとつ4万円くらいする帽子を高校が準備するのは経済的に難しいのでそれぞれ準備して持参するって言うのは仕方ないことかもしれません。


でも、(大切な儀式を、公が自信と責任を持って授与しないで、プライベート(保護者)に任せるとは、一体どう言うことなの?)と言う感想を持たずにはいられませんでした。


卒業生ツアーも昔はもっと静かなものだったようです。


コペンハーゲン中心部のフレデリクスベアと言う場所で育った義母の体験例を参考のために書くと……クラスメイトに警察官の息子がいて、その方の顔で数台集合してくれたパトカーに乗って、それぞれお手製の囚人服を着た卒業生は街を走り、高校に到着して、その後釈放された、なんて言うお楽しみが、家庭訪問ツアーの代わりにあったそうです。義母にとって、若き日の懐かしい思い出の一つであることに疑いはありません。


この卒業生ツアー、型破り度がエスカレートして行ってるのかもしれません。もっとも、パトカーを私用に使うなんて、今では絶対出来ないことと思われますが……。


一族の次回の卒業生ツアーは16年くらい先の孫のT君。


見届けてみたい気持ちが増しました。


長生きしなくちゃなぁ〜です。