2008年に就任して、アメリカから帰国して間もない就任直後は、デンマーク人だけどアメリカ式の芸監と団員たちの間で、文化の不一致で折り合いがつかずゴタゴタ揉め事があったり、予算削減で大人数のダンサーが解雇されたりして、不穏な雰囲気が暫くの間漂っていました。
でも2012年後半頃にはそれも落ち着いて軌道に乗り、『民話』『ナポリ』『ラ・シルフィード』と次々とブルノンヴィルの作品の改訂版が発表されました。そして改訂版はブルノンヴィルのみに留まらず、『ジゼル』、そしてロシア古典バレエの代表作『白鳥の湖』『ラ・バヤデール』『ドン・キホーテ』『ライモンダ』といった作品も、新解釈付きで意欲的にドンドン発表されて行きました。
テレビの人気エンターテイメント番組『ダンスに夢中』に審査員として出演するなど、積極的にバレエ普及活動も努めて芸術監督の人気が高まりました
ダンサーのレベルが上がって、外国人ダンサーも増えて、バレエ団の雰囲気も良く、順風満帆に見受けられ、芸監はまだ若い(現在56歳)から、もしかしたらこのまま暫く王様のように君臨し続けるのかなぁ〜って思われていたのではないかなぁ?
ですが、2022年のジョン・ノイマイヤー『オセロ』キャンセル事件で影が差し始めたように思われます。
そして、『オセロ』の代わりにやはりジョン・ノイマイヤーの『真夏の夜の夢』が上演されたのだけど、その年の暮れにジョン・マイヤーとデンマーク王立バレエ団の絶縁が発表されると言うスキャンダルが続きました。
振付家と若い世代のダンサーたちとのコミュニケーションの問題か?
原因は今でも謎めいています。
いずれにしても、デンマーク王立バレエ団とはとても深い関係だったバレエ界の巨匠的存在と絶縁する、と言う手段に踏み切った芸監に対して、メディアや、昔からの王立バレエ団ファンの中に不信感が生まれ、これはかなり痛い事件だったし、反芸監派の良い餌になってしまったように思われます。
その間も、お抱え振付家による『ブリクセン』『シンデレラ』と言った全幕の新作は発表されていたし、最近では画期的な試みのコンテの新作『under dybet』も発表されて話題になっていたけれど、近年のプログラムは過去の繰り返しが目立ちました。だから新シーズンのプログラムが発表されてもワクワク感がありませんでした。
2024/2025年シーズンの演目にも、お抱え振付家などによる実験的なコンテの新作はあるけれど、古典の大作の初演はゼロです。
「後2年今まで通り全力で頑張る」と宣言はされているようです。
が……いや〜色々問題を抱えていらっしゃるようで……大変そうです。
本当にご苦労さまです。
新芸術監督は、誰になるのか?
関係ないと自分に言い聞かせながらも、全く無関係と言うわけでもないので……心配で、ちょっと恐ろしいです。