久しぶりの『くるみ割り人形』 | 大好きな日々の覚え書き

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デンマークの暮らし、教育、天然酵母、麹、発酵の話、旅行の話、子どもたちを通して知ったバレエのことなどなど、ふと頭に浮かんだこと、思ったこと、感じたことをそのまま綴るブログです。

クリスマスのシーズンのバレエと言えば、やっぱり『くるみ割り人形』だと思います。


デンマーク王立バレエ団では、今年は例年より少々早く、昨日がその初日でした。


12年前に初演されて以来、ずーっとバランシン版『くるみ割り人形』が上演されていています。


長年NYCBで踊っていた現芸術監督によって2011年に導入されて以来それが恒例になりました。


2011年はうちの子たちがバレエ学校に入学した年のことなのでよく覚えています。


5年くらい前までは、12月の演目が『眠りの森の美女』だったり、『不思議の国のアリス』だったりして、一年置きに『くるみ割り人形』が上演されていたのですが、最近は毎年『くるみ割り人形』が上演されています。


今年は上演回数が合計29回と多く、クリスマスとお正月の間に地方ツアーもあるのでダンサーたちは大変だけど、間違いなく「満員御礼」が見込まれる稼ぎどころの作品で、ワクワク気分の観客で溢れていると、そのポジティブ・エネルギーもダンサーたちに伝わって、より一層やり甲斐もあるのかなぁ?って思います。


毎年同じ作品だとある程度ルーチン化していてリハーサルは少なめで済むと言うメリットもあるのかもしれません。


でも、出演する60人のバレエ学校に通う3年生から7年生までの生徒たちには同じことが言えないってことを知ってます。


踊りの難度、子どもの身長などに合わせて毎年ガラッと配役が変わるので、今年もきっと10月の秋休みが終わった頃からリハーサルを積み重ねられて来たことが推測されます。


初演前2週間くらいは、普通の授業は全てキャンセルになってリハーサルに集中する毎日だったことでしょう。


「バレエ学校の生徒にとって『くるみ割り人形』は躾の道具」「カンパニーのダンサーたちと一緒に舞台に立ち、チャイコフスキーの音楽を聴き、バランシンの振付を踊りながら、物語の中で主役のマリーが夢見るように、バレエ学校の生徒たちはプロのダンサーになる夢を見る••••••」公式サイトのトレーラーで芸術監督が語っていました。


ハードなリハーサルの後で、実際何人の子どもたちがダンサーを夢見ながら舞台に立っているか?は分かりませんが、舞台に立つことが、ハードなトレーニングのご褒美なことは確かです。


キラキラのおとぎの国のような舞台に立つのはマジカルな体験だし、観客から受ける拍手はなによりも嬉しい、出演料も貰えます。


最近また、前回と同じ、とある全国紙によって、バレエ学校バッシングが大々的に報道されました。


先生方があ〜言った、こ〜言った、こんなことをした、それが心の傷になっている、摂食障害やノイローゼの原因になった、辞めて行った/辞めざるえなくなった元生徒達によって、次々と暴露されていました。


先生方は匿名で書かれていましたが、それが誰のことを言っているのか関係者なら分かります。


暴露している元生徒たちの多くが実名で、写真入りで掲載されていて、うちの子たちとは学年が違っても、覚えている子ばかりです。


「子どもたちにちゃんと伝わるように、時にはズバッと言うことがある」と、ひとりの先生が新聞社へメールで返答されたようです。


「歯に衣着せぬ」表現は、バレエ学校の先生方の世界共通な特徴かと思われます。


(一々傷ついていたらやって行けないわ)って感じに、例えばうちの子たちなどは、適当に対応していたやっていたと記憶しています。


実際、先生方が指摘することは、多少言い方を変える必要はあったかもしれないけれど、真実であることがほとんどだそうです。


誰もがバレエダンサーになれるわけではありません。


教育者としてはイマイチかもしれないけれど、ダンサーとしては一流だった先生方の言動をどう受け止めるかは自由だけど、ある程度のリスペクトを持って敏感に受け取り、精神的、身体的な我が子の限界を手遅れになる前に判断して、必要ならばサッサとこの世界から足を引かせる勇気を持つ、それが保護者に求められているのではないか?と私には思われます。


さて、今年は久しぶりに『くるみ割り人形』のゲネプロに行って来ました。


前回見たのはコロナの前なので4年以上前です。


今年は舞台装飾が新しくなっていて、とても新鮮でドキドキして、本当に楽しく観ることが出来ました。


金平糖の精には7人のバレリーナがキャスティングされていて、プリンシパルもいるけれど、その中の4人はソリストで、いつプリンシパルになっても不思議ではないと言うダンサーたちです。


リハーサルで踊ったのはソリストのスペイン人のバレリーナ、余裕満々で踊っていて、凄く素敵でした。


でもなんたって最高に良かったのは露の雫の精を踊ったオーストラリア/デンマーク国籍のタラさんでした。タラさんもソリスト……。


次のプリンシパルは選ぶのが大変そうです。


バレエ学校の生徒たちも良く頑張っていました。主役級の子たちは、流石の演技力でお見事でした。


やっぱり、先生方、鋭いです。


リハーサルの日は、全国紙の文化欄にバッシング記事が丸々5面バーンと載ったその日でした。


王立劇場に掲げられた国旗が半分までしか上げられていない状態(何か不幸があった時はそうなる)で、その日はなぜそうなっているのか私には理由が分かりませんでした。息子に尋ねると……



答えは、


「新聞社のせいかもね!?」


でした。