愛犬家の義母 | 大好きな日々の覚え書き

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デンマークの暮らし、教育、天然酵母、麹、発酵の話、旅行の話、子どもたちを通して知ったバレエのことなどなど、ふと頭に浮かんだこと、思ったこと、感じたことをそのまま綴るブログです。

今日の話は、愛犬家の義母の話です。


ちょっと愚痴っぽくなるかもしれないので、嫌な人は読まないで下さいね!


私の義母は、いわゆる「68年世代」と呼ばれる世代のちょっと前の世代の人で、「68年世代」の、既存秩序からの解放、女性解放、自由、平等、リベラルな理念の影響を大きく受けた人です。


結婚して子どもを産んだ後も、常に仕事を持ち、家庭内の家事は分割し、食事も1週間交代で代わりばんこに作り、夫とは別姓を貫きました。


誰よりも先に有機食品の価値に気付き、家庭菜園で有機野菜を育て、鶏を飼って卵も自給自足していました。基本的には、高校の教諭をしていましたが、以前にも書いた、日曜日には国民教会のオルガニストをしていました。そして他にも色々とボランティアの仕事にちょこちょこと手を出す忙しい人でした。特に動物愛護には熱心で、動物愛護協会でその地域の代表なども勤めていました。


とても頭のいい人です。


88歳ですが、一人でアパートに暮らしています。 3年半前に腰の骨を折ってしまってからカートが手放せなくなりましたが、元気です。市の介護施設に繋がるアラームに登録していて、万が一の時はボタンを押せば、誰かが送られてくるようになっています。週に一度お掃除のヘルパーさんに来てもらっているだけの援助を受けて日常生活を送っています。今でも車を運転するので、自分が納得がいく物を買うために遠出できることが大きな喜びの一つみたいです。


そんな、他人から見たら素晴らしげな彼女です。


義母は、大変な愛犬家で、過去60年間、犬を飼っていなかった時期は、地方の一軒家から、我が家の近所のアパートに引っ越してきたばかりの頃、約半年間のみです。後は、犬と共に、犬中心の生活をしてきました。


地方の大きな家に住んでいた時も、家は一部「犬小屋化」していました。


アパートに引っ越して来てからは、ほぼ犬小屋に義母が住んでいる状態になっています。


ちょっと困ったことに、義母は、片付けが苦手です。


片付けが苦手で、犬小屋に住んでいる彼女のアパートがどんな状態であるかは、皆さんのご想像にお任せします。


「(今飼っている)犬が一番大切な家族」と宣言しているので、その犬のためなら、どんな出費も惜しみません。


もちろん、受け取っている年金や未亡人年金を義母が好きに使うことに、主人も私も文句を言ったことは一度もありません。


何もハプニングがなかった月でも、月々少なくとも30万円は犬に貢いでいると思われます。


今飼っている犬は、高齢になってから飼い始めた犬なので、「自分では十分に散歩させてあげることが出来ないから」と、月曜日から金曜日まで、日中3時間くらい、「資格を持った」犬の専門家に預けて他の犬と遊ばせてもらっています。犬を保育園に通わせているようなものです。義母のその出費は、孫のT君の保育園より高価です。


腰の骨を折ってしまってからというもの、自分では散歩してあげることが出来なくなったので、朝の散歩は私の日課になりました。日中は保育園に預け、午後は人を雇って散歩して貰っています。


私はボランティアですが、午後の人には結構いい給料を払っています。


義母の骨折後、はじめのほぼ3年間は週に7日、毎朝私が犬の散歩するために義母宅に通っていました。今は、週末はお休みにさせて貰うことにしました。だから義母はその分人を雇わなければならず、出費は益々増えたと思います。


その犬は、とても美しい犬ですが、物に喩えたら、不良品です。一歳の時、野放し飼いにされたいたその犬を義母が引き取りました。小さな犬で、大きな犬にいじめられて育ったらしく、知らない犬を見ると取り敢えず狂ったように吠えちぎるくせがあります。躾け直すことは義母には出来ませんでした。心(頭の中か?)に傷を負ったその犬を、高齢の義母が溺愛してしまったのも躾が行き届かなかった原因かと思われます。


そして、その犬がやって来て以来、飼育に必要不可欠な出費以外にも、問題と緊急の出費が絶えたことがありません。


歯が悪いので、歯医者に通っています。義母曰く「デンマークで唯一の犬専門の歯医者」による歯の治療は、全身麻酔で、人間と比べ物にならないくらい高価です。アパートからかなり離れた場所ですが、車を運転して連れて行ってます。


特別な食事への出費も馬鹿にならないと思います。他にもちょっとした体調の変化でも義母は病院に駆け込むので、犬にかける医療費は大変なものです。


他人に噛みついて、穴が空いた服を弁償したことは一度ではありません。


一度噛みついた時点で殺処分するべきだったと、主人は言っています。


主人は週に一度義母を訪ねる習慣がありますが、その度に軽く噛まれるそうです。それを義母は「キスである」と言っています。


先週の金曜日の夜、義母から主人に電話がありました。


「異物を飲み込んで、犬は今病院にいる。用心のために病院に一泊させて、明日迎えに行く。治療費(レントゲンと宿泊費)は10.000kr.( 約16万円)だった。銀行が閉まっていてお金をおろせない。そのお金を立て替えて欲しい」


道にある食べられそうなものには食いつく悪い癖もあるので、異物を飲み込んで病院に運ばれるのも初めてのことではありません。


保育園で行った森で、異物を食べた犬は、午後、何度も吐いたそうです。そのため義母は、金曜日の午後に診てくれる救急獣病院に飛び込んだ、というわけですが、それがとんでもない医療費を請求する病院だったのでした。


診察、レントゲン、一泊の宿泊費のみで約16万円です。


義母にとっては、当然の価格だったようです。「そのくらいはするものだ」と納得していました。


ちなみに、例えば孫(私たちの子ども)への出費であれば、その20分の1でも渋る人です。


「そんな金はない、自分でなんとかしろ」納得がいかない主人は、立て替えをキッパリ断って電話を切ってしまいました。


そして「その金があったら、新しい犬が2匹買える!と怒って言っていました。義母の犬中心主義にはうんざり気味の主人です。


翌朝、私にも電話があり相談されました。


義母は何故か現金で支払わなければならないと思っていたようだったので、藪医者でなければカードで払えるはずであることを説明して「とにかくお金が入っているカードを持って出かけるように」伝えました。


義母は、何とか分割で払う契約をして帰ってきました。


流石の義母にも、突然の高額の出費だったようです。


犬は、金曜日の午後に吐くだけ吐いて、胃は空だったようで、何事もなく、元気で帰宅したようです。つまり、今回も、義母の取り越し苦労だったというわけです。義母はもちろん「病院に行っていなかったら犬は今私の側にはいなかった」と、犬の命を救った自分の行動に満足しています。


いや〜ビックリしました。


ここまで来たら、お見事な?義母の愛犬ぶりです。


でも、残念ながら、この犬を愛する心は、子孫には伝わりませんでした。


結婚する前に「犬を飼いたいとだけは言わないで欲しい」と主人から言い渡されました。


息子たちも、嫁たちに同じように言ったようです。


主人も、私の子どもたちも、犬を飼うことは一生ないと思います。