次男の博士論文審査会 | 大好きな日々の覚え書き

大好きな日々の覚え書き

デンマークの暮らし、教育、天然酵母、麹、発酵の話、旅行の話、子どもたちを通して知ったバレエのことなどなど、ふと頭に浮かんだこと、思ったこと、感じたことをそのまま綴るブログです。

昨日、1月18日(水)、コペンハーゲン大学医学部で博士論文審査会があり、次男が無事に医学博士になりました。


審査会は大学のホームサイトで告知され一般公開されるので、基本、誰でも入って聴講することが出来ます。

とは言いましても、やって来るのは主に研究に関わったグループのメンバーたちや教授陣なのですが、たとえ専門的で内容はよくわからなくても、友だちや家族は出向いていくのがデンマークの慣習になっています。


私たち家族は、トレーニングを休めなかった末っ子以外の全員で押しかけていきました。


審査と言っても、博士論文の場合、論文が大学によって受理された時点で、ほぼ合格と思って間違いないので、それほど神経質になる必要はないのですが、私は少し緊張していたらしく会場に向かう時は横っ腹がチクチク痛んでました。


コペンハーゲン医学部のビル。


後ろのカラフルな煙突のビルがトレードマークだった医学部ですが、今は左に写っている2017年に完成したMærskTårnet(マースク・タワーと言うのが、新しいトレードマークとしても、観光の穴場としても知られ始めているようです。


なぜ大学の建物が観光の穴場であり得るのか?と言いますと、15億デンマーククローネ(約280億円)と言う巨大な建築費がかかっていて、最新の医療研究設備が整っているだけでなく、サステナブルでモダンなデニッシュデザインが駆使された、超カッコイイ建物だからです。


最上階には毎日8時から17時まで一般の人も登ることができます。最上階は15階なのですが、高さは75メートルで、高層ビルの少ないコペンハーゲンではずば抜けて高く、景色を楽しむことができます。


マースク・タワーと言う名前がついているのは、建築費の約半分は、国際総合海運大手A.P.モラー・マースクの創業者一族が運営するマースク財団によって寄付されたものだからです。


外装は意見が別れるかもしれませんが、現代デンマークを代表するアーティストたちの芸術作品があちこちにセンス良く飾られていて、とても美しい内装です。毎年恒例のカルチャーナイトでも人気のスポットみたいですが、私はなぜか今まで足を踏み入れたことがありませんでした。昨日は審査会のことしか頭になくて見学は出来なかったのですが、今度じっくり訪れてみたい場所です。


正門から入ってまず目に飛び込んでくるのはホール右手のToning Rasmussen(トーニング・ラスムセン)によるカラフルな『復活したアトランティス』と言うタイトルがついた絵です。これは、彼の絵画の熱心な収集家の一人だった「タンタンの冒険」の創作者エルジェへのオマージュだそうです。


次男の審査会は、ホール中央の階段を上がって右に曲がったところにある講堂で行われました。


審査会の前後で出す飲み物などをアレンジした嫁を手伝うために、私たちは会場に一番乗りで行きました。


20分前くらいから人が集まり始め、最後に審査員たちが入場して審査会は14時シャープで始まりました。



先ずは始めの45分間に博士候補者(次男)が論文の内容を発表しました。

そしてその後で、3名の審査員による質疑応答がありました。


博士論文は英語で提出され、審査会も全て英語で取り行われます。


審査員は、デンマークの地方の大学とスウェーデンのルンド大学、コペンハーゲン大学からいらしてました。


論文の内容を会場で一番わかっていなかったのは、私だったかな?と思われますが(おっと!孫のT君もいたぞ)、そんな私の緊張した顔をみて察してくれたのか?発表が始まる前に挨拶した審査員のお一人が「息子さんは良い仕事をしたからご安心ください」って言ってくださり、ホッとして横っ腹の痛みがひきました。


主人曰く、45分後、休憩が入る時もあるのですが、次男の場合は即、質疑応答に移りました。その時点で私の喉はカラカラで、嫁によって十分な数が用意されいたお水を、遠慮してとっておかなかったことを後悔しました。


審査員が一人ずつそれぞれ30分間くらい、研究に対する専門的な質問をし、もちろん何を質問されるか知らない候補者はその場で即答できなければいけません。落ち着いて答える次男を、親バカ世界一の私は誇らしく見守りました。


質疑応答が終わると、審審査員は別室に移り話し合います。その間、聴講者は講堂にとどまり待ちます。


私たちは、次男と嫁によって用意されたコーヒーを飲んで待ったのですが、飲み終える前に審査員たちが再入場したので、私たちはコーヒー片手に慌てて元の場所に着席しました。


そして、次男は無事に博士号を取得しました。ちなみに彼の専門は心臓です。論文のタイトルは「細胞外カリウムと全身カリウムの相互関係、心筋力学、不整脈のリスク」でした。


審査会の後はレセプションが用意されるのが慣習です。


嫁がアレンジしてくれた美味しいケーキとシャンパンで乾杯しました。




レセプションでは指導教授もスピーチしてくれました。


国民が研究に協力的で、臨床試験のデータが豊かなことでデンマークは有名ですが、教授曰く、息子は控えめで優しく、人当たりが良いので、研究に協力して欲しいと患者に頼んだ時に、Yesを貰うことが出来ると言う、研究者には必要不可欠な才能があるのだそうです。


私は以前病気をした時に、患者より研究を大切にしているような医者の態度が気に食わなくて、頼まれた研究に協力するのをキッパリ断った体験があります。今はあの時、あの女医のせいで、心を閉ざして医学に貢献出来なかったことちょっぴり後悔しています。だから、不安な患者の心に寄り添いながら心を医学の発展に開かせることが出来る、それが本当に凄い才能だってこと、実感してます。


次男はきっと良い研究者になることでしょう。おめでとう!これからも活躍に期待しています。


17時半、私たちは講堂を後にし、次男たちが予約してくれたレストランに向かいました。指導教授たちや、友人、家族が集まって夕食会/パーティーが開かれました。


大学からそれほど遠くないところにある、若者に人気のおしゃれなレストランで美味しい食事を頂きました。

良いのがなくてお料理の写真を載せられないのが残念です。


去年8月に自分たちの結婚式/披露宴と言う、大きな祝いごとを見事にアレンジして、「次のお祭りを待ちに待っていた」と言う我が家の嫁でした。


今回も細やかな気配りに完璧なアレンジで企画の才能を発揮してくれました。心から感謝しています。