日に日に彩りがます森。10月に入ってデンマークは本格的に秋です。
近所の高台から見渡せる景色。
デンマーク王立劇場では、秋休み恒例、子ども向けのバレエの舞台リハーサルが始まっています。
我が家のバレエ男子は今日もヒヨコさんの影武者になるべく劇場へ出かけて行きました。
再来週の月曜日、この演目の千秋楽までは、高校へは行かず、舞台に集中する毎日が続きます。息子は充実した顔をしています。
高校から課題が送られてくるので、全く勉強していないわけではありません。勉強が好きなので、それが良い息抜きになっているようにさえ感じられます。
ちょっとここでゴシップ話題になってしまうのですが、先週、デンマーク女王、マルグレーテ2世の孫4人の「称号取り消し騒動」と言うのがありました。
王室をスリム化するために、マルグレーテ2世の次男、ヨアキム王子の4人の子どもたちの「プリンス」「プリンセス」の称号は、来年の元旦から取り消されることが女王によって決定されたのが原因でした。
王室を将来のデンマークに適応させ、いつまでも国民に愛される王室であるためにスリム化は必須だと判断した女王でした。
既に2016年に、女王の合計8人の孫が成人した時、アパナージュ(年間王室費)を受け取るのは、長男であり王位継承者のフレデリック王太子の長男、クリスチャン王子のみにする、と決定されていました。
お金の使い道にデンマーク人は敏感なので、もちろんそれは英断として受け入れられました。
今年の5月には、ヨアキム王子の4人の子どもたちは、それぞれ25歳になった時に称号を返上する、と伝えられていたようです。
称号や立場から解放されて自由な人生を送ることができるから、孫たちにとっても良いだろう、これは自分の在位中にしっかりとケリをつけておくべきだ!と決断されたことも、はたから見ると納得できます。
今回の騒動の原因は「4人全員の称号取り消しが、来年の元旦に早まったこと」つまり「25歳までプリンセスのはずだったアテネ王女は11歳になる前に称号を取りあげられてしまうこと」そしてそれが「公表されるたった5日前に、女王自らからではなく、間接的にヨアキム王子に伝えられた」と言うことでした。
以前から、デンマーク王室で、自分の立ち位置が見つからず、次男病に悩まされていたヨアキム王子、この発表で堪忍袋の緒が切れてしまったようです。
デンマーク語ですが、発表直後のヨアキム王子への街頭インタビューを下に貼り付けておきます。
上に「騒動の原因」として書いた点がいかにショックだったかを語り、「お母さまとの関係に影響が出ると思われますか」と言う最後の質問に、「ここであえて申し上げる必要はないと思われます」と答えるヨアキム王子の顔が哀れです。でも、コメントなど読んでもわかるのですが、一般国民のヨアキム王子に対する同情は限りなく薄いと言えます。ヨアキム王子の格式を重んじる人柄はデンマーク人の好みに合わないので残念ながら元々人気がない王子だからです。王族でも、皇族でも、次男の評判が悪いのはなぜでしょう?
このリアクションに驚いた女王はその後、決定内容は変更しないものの、伝え方に関してヨアキム王子への謝罪を公表しています。
同じ父母の子でも、生まれる順でこれ程まで決定的に人生が変わるのは、伝統を重んじる王族や皇族ならではですが、兄弟の何番目に生まれるかがその人の人生に大きな影響を与える、ってことは一般にもよく言われることです。
ここで、我が家のバレエ男子に話を戻しますと、彼は5人兄妹の末っ子です。
息子が男子だけどバレエして、それに青春をかけているのがアクセプトされるのは、末っ子の三男だからだと言えるでしょう。
男子だから、女子だから、これするのはどう?
そんなことが、今の時代でも、デンマークでも、ありえるんですか?
はい、十分にありえます。
ダンサー、特に男性ダンサーに対する偏見は、ダンサーが国家公務員で、リベラル思考のデンマークにもあります。
男性ダンサーに対する偏見は、例えば、「頭はよくない」など、他にも色々あると思われますが、書き始めると長くなるのでここには書きません。
もし、息子がひとりっ子だったら、ここまでバレエを続けていなかったでしょう。
そもそも、姉がいなかったら、バレエが息子の人生とクロスすることはまずなかったろう、と思われます。
ひとり息子がダンサーになると決断したら、偏見に目をつぶってバックアップし続ける勇気があっただろうか?何よりそれが疑わしいです。「お兄ちゃんたちが家業を継いで地道に頑張ってるから、ちょっと変わってるけどやってみたらいいんじゃない?面白そうだし……」こんな風に考えることはなかったでしょう。
生まれる順で決まる人生って、一般家庭でも多少はあるものです。