ダンサーMorten Eggert | あるバレエママの告白

あるバレエママの告白

デンマークの暮らし、教育、子どもたちを通して知ったバレエのこと、旅行の話などなど、ふと頭に浮かんだこと、思ったこと、感じたことをそのまま綴るブログです。

今日は、デンマーク王立バレエ団(RDB)、キャラクター・ダンサー、モートン・エガート(Morten Eggert)さんの講演会に行ってきました。

演技が巧みなダンサーが多いRDBの中でも、彼の演技は極め付き繊細で惹きつけられます。2009年に来日した時は、「ロメオとジュリエット」マキューシオ役を演じた2人のうちの1人だったそうなので、最期のシーンの彼の演技を覚えている方もいるのではないか?と思います。

RDBでは、バレエの公演前、30分くらいの演目紹介無料インストラクションがありますが、モートンさんはその仕事もされていて、お話が上手なのは有名です。だから、私はこの日を心から楽しみに出かけて行きました。

モートンさんは1978年生まれの38歳、吸い込まれる様な透き通った青い目の持ち主です。

父親は医者で、自然豊かな土地に生まれ、三銃士に憧れ、乗馬、剣術、ダンスの練習に励む、と言う面白い子だったようです。

9歳と10歳の時に2度デンマーク王立劇場バレエ学校オーディションにチャレンジしたものの、弱い足首が原因で不合格、でもバレエが好きで、バレエ教室へ通い続けました。

運命だったのでしょう。ある催しで踊った所、当時RDBの芸術監督だったフランク・アナセンの目に留まり、再度オーディションに挑戦、13歳で規定年齢を超えていたものの特別許可で入学しました。

彼はバレエ学校に入学するまで、ルドルフ・シュタイナー教育の学校に通っていました。「シュタイナー教育」は子供の創造性、自主性を重んじた自由教育方法です。

私のバレエ少年も近所のシュタイナー幼稚園に通いました。だから、モートンさんが「シュタイナー学校で受けた教育は一生の宝」と語っている意味が私はよく分かります。

五感をフル回転させて、創造の世界で自由に遊び、絵を描いたり、音楽を奏でたり、歌ったり、物語ったりした毎日が、彼の人生に大きな影響を与えた事間違えなしです。(4年生になるまで字が読めなかったそうです!)

さて、講演ですが、三幕に分けて構成されていました。フォーメーション時代、ダンサー時代、そして今。

私は見たことのなかった珍しいバレエの録画を交えて、とても興味深い講演でした。

フォーメーション時代に憧れたダンサー(若いルドルフ・ヌレエフ「海賊」)感動した作品(ジョン・ノイマイヤー「オセロ」PDD) 。影響を受けた先生(オーレ先生)

ダンサー時代の心に残る役、作品(「カロリーン・アメーリー」クリスチャン7世、「ロメオとジュリエット」マキューシオ)(イリ・キリアン「シルクとナイフ」)

休憩を挟んで、第3幕の今現在。自作のバレエとタンゴをスペシャル・ゲストと踊って見せてくれました。2人のうちの1人は去年引退した元プリンシパルのグドロン・ボイセンさんだったので驚きました。

2009年に腕を骨折して、第一線を退いて以来関心を持ったと言うタンゴも素晴らしかったです。

芸術的才能溢れる彼は、アマチュア写真家でもあるらしく、劇場内で撮ったダンサー達の写真を、最後にスライドショーで見せてくれました。

モートンさんは、テーブルのロウソクに先ず火を灯して、会場は密着感のある雰囲気タップリでした。ドイツ語で詩の朗読(私はチンプンカンプンでした)や英語で「マキューシオの最期の節」の朗読もあり、濃い内容の2時間半の講演会はあっという間でした。

「私はダンサーでした」と言う言葉で始まり「私はダンサーです」と言う言葉で終わったこの講演会。物語るダンサー、モートン・エガート、これからまだまだ注目したいRDBの団員だと思います。

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