ステレオ音源が多すぎると…。 | 気ままに音楽

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ステレオ音源が多すぎると、ミックスが飽和したり、不明瞭になりやすい。
理由は簡単だ。それはステレオフィールド上で、「楽器同士が重なり合う面積」が多いからだ。ミックスを明瞭に保つために分離すべきは周波数だけではなく、ステレオフィールド上での楽器の重複もできるだけ避けなければいけない。それがPanの存在意義の一つでもある。

生のドラムはOH(オーバーヘッド)以外はmonoが基本。ルームマイクもmonoが多いがこれはステレオでも構わない。打ち込みドラムの場合はなるべくスネア、キック、タム、ハット、ライド、クラッシュ等を単体にバラして個別に処理したほうがより洗練されたミックスになる。この時、クラッシュ以外はmonoがいい。ベースがmonoなのは言うまでもないが、音楽的な表現を理由にステレオベースを使うなら、それはそれでアリ。

ギターも左右に振る場合はmonoのほうが絶対的に安定して聞き取りやすく、鳴っている方向も感知しやすくなる。ダンス系の場合もステレオのメインリードに、似通った音色のmonoリードを重ねることで、芯が通って太く安定した音になる。mono適合性をあまり心配する必要もなくなる。

ステレオ音源を左右に振るのはあまりよろしくない。その音の鳴っている方向が分かりにくいだけでなく、例えば右に振った場合、右側の音像を濁してしまうことがある。それに従来のPanというのは単に「左右の音量の違い」を調整するものなので、左右非対称な音源をパンした場合、ステレオバランスが崩れ、片側の音色やニュアンスを失うことになる。

しかし、Pro ToolsやStudio OneにはDual Panという機能があって、これを使えばステレオ音源も元のバランスを保ったまま綺麗にパンすることができる。LogicならDirection MixerというDAW付属のプラグインで、同じように綺麗にパンすることができる。mono音源をパンする時はミキサーのPan、ステレオ音源をパンする時はDual PanやDirection Mixer、というように使いわけるのが得策だろう。といっても、やはり左右に振る音源はmonoが好ましい。ステレオ音源を一度monoに切り替えてみて、音色の変化が趣旨や方向性に反するものでなければ、そのほうがいいかもしれない。

リバーブでさえ、左右に振るものはmonoが良かったりする。ただ、IR(コンヴォリューション)リバーブの場合は、monoにしてしまうと元の空間のニュアンスを失いやすいため、そんな時はアルゴリズミックで代用できるか試してみるといいだろう。

因みにパンはできるだけ大振りがいい。チマチマとセンター付近でパンをしてもステレオフィールド上での分離感は得られないし、ステレオ音源をそうやって小振りでパンしても何の意味もない。勿論ピアノやパーカッションやドラムのパーツで小振りでなくてはいけない音源もあるだろう。そういう時はできるだけmonoにするといい。あるいは、ピアノ等monoにすると不自然になってしまう楽器の場合、ステレオイメジャー系のプラグインで敢えて音像を(広げるのではなく)狭めてから、Dual PanやDirection Mixerで小振りパンをする、みたいなこともできる。

話は戻るが、オーケストラ系でさえもオーボエやバイオリンはmonoのほうがよかったりすることもしばしば。ストリングスもステレオ音源が多いが、コードでも奏でていない限り、できるだけ(音色に変化がなければ)monoにしたほうがミックスがスッキリとする。

最終的にまとまったミックスはステレオが当たり前だが、良いステレオミックスは70%のmono音源と、30%のステレオ音源から成り立っていると言える。(ジャンルによって差はある)