ミキシングの流れ『カットEQの話』 | 気ままに音楽

気ままに音楽

ブログの説明を入力します。

「ミックスは引き算」とよく言われる。これは大部分においては正しい。

私が日常的にやるミキシングの流れを大雑把にざっくりと説明しよう。私が日頃取る方法は至ってオーソドックスな方法だ。細かい所ではちょっとした自分流のテクニックを使うこともあるが、全体を通して見ると、その流れにはなんの変哲もない。

まず、全トラックの音量バランスを、フェーダーワークだけで整える。EQなし。コンプなし。エフェクターなし。そしてメイン・アウトでピークが-12dB ~ -10dB辺りになるように全体の音量を調整する。これには個人差があるが、私自身はこの音量でスタートすることによって、ミキシングを最後までスムーズに流すことができ、マスタリングへの移行も楽になる。次に、パンニングで各パートのステレオフィールド上の大まかな配置を決める。

ミックスにしろマスタリングにしろ、使用するエフェクトができる限り少ないのが理想だ。フェーダーワークやパンニングで基盤となるミックスバランスを築く前にEQやらコンプやらをかけてしまうと、余計にエフェクトを使ってしまう可能性がある。だからまずは何も挿さずにフェーダーワークとパンニングだけで、できるだけ理想に近いバランスを作り上げる。

これがしっかりできてからやっと、EQに移る。まず初めに取り掛かるのは、「カット」。全パートのハイパスは勿論、各楽器から不要な帯域をできるだけ多く、しかし不自然にならない程度に除外する。ここでの理想は、できるだけ「加工感」を出さずにカットすること。コンプやEQブーストに移行するまではできるだけ自然にやりたい。

この時、どうやったら無駄な帯域が分かるのか、と疑問に思う方もいるだろう。経験を重ねていくと直感的に分かるのだが、誰でもできる方法が一つある。それはFrequency sweepingという方法だ。やり方は簡単。まず、どこでもいいから周波数を決めて、10dBかそれ以上ブーストする。この時、Qの幅は狭くしておくこと。そして、周波数以外の条件はそのままで、トラックを再生しながら周波数だけを右へ左へと動かす。この時、1~数箇所他よりやけに共鳴して耳障りに聴こえる部分がある。大抵の場合それは110Hz~400Hzの間に存在する。それを見つけて狭めのQでカットすればいいだけの話。ただしその周波数は時にその音源の「核」となる主成分だったりするので、その辺は見極めが必要だ。

他にも4kHz~12kHzの間に耳障りな高域が存在することがあるから、Frequency sweepingを使って探してみるといいだろう。ただし、高域の場合狭いQでカットすると不自然になりやすいため、Qを少し広げたほうが無難と言える。

人によってはベースやキックにハイパスをかけない人もいるが、私はベースやキックも必ずと言っていいほどハイパスをかける。キックの場合は超低域をカットすることによって全体がタイトで締まりのいい音になり、あたかも90~120Hzを軽くブーストしたかのようなパンチ感の強い音になるからだ。ベースも超低域をカットすることによって、より明瞭になり、後段のコンプも掛けやすくなる。

それに超低域を削ることで、実はキックやベースだけでなく、他の楽器の”抜け”も向上されることになる。後々音圧を稼ぐときにも超低域が邪魔になるため、できるだけ早い段階でカットしておいたほうがいい。

(ここでの超低域とは主に20Hz~40Hz以下のことを言っている。)

ローパスに関してだが、私はあまりローパスは使わない。ステム・バスにローパスを掛けて全体を馴染ませつつ高域のエッジを削ったりすることはあるが、各トラックでのローパスは本当に必要な時しか使わない。高域を削りたい時はローパスよりシェルフカットをよく使う。

尚、この「カットEQ」段階では、「楽器同士の分離」つまり「棲み分け」を目的としたカットより、「不要な帯域の除外」を優先している。楽器同士の分離に関しては、各楽器の音をある程度作り込んでから分離を試みたほうが、音楽的表現の妨げになりにくく、尚且つ結果的に綺麗に分離できるからだ。

カットEQの次は大体コンプを掛けるんだが、それについてはまた別の機会にでも書こう。