プチ家出☆ | モラハラV系バンドマンに飼われてみた
肉の写メを要求しておきながら、なかなか帰ってこない彼。
写メまで送らせといて帰ってこないとかなしだからね。

深夜1時前。
「駅ついた!」
ええと、世間ではこういうの午前様って言うんだよね?
この時間に駅に着いたってことは終電だよね?
今日はもう帰ってこないのかと思ったわ。

yyyyに会えるのは嬉しいけど、宿題があるって何度も言ってたから、きっとゆっくりはできないんだよね?

そしてこれから私は肉を焼き、彼はお風呂に入って仕事をするのだろう。
私、嫁なのか?嫁だよな?
なんて考えが頭に浮かぶ。

だめだめだめだめ!!!
そんなこと考えてたら彼に会った時に負のオーラが漂ってしまう。

「あとちょっとだね」
とか返信しつつ。
いや、駅から家まで15分くらい歩くからまだまだ遠いね。
帰ったらすぐご飯食べられるように準備しておこうかな。
野菜も食べたいよね。

yyyyは帰ってきてすぐやっぱりスウェットに着替え、ご飯の用意ができるまで部屋に籠っていた。
あったかいうちに食べさせてあげたいのになかなか来ないし。
「ご飯できたよ?冷めちゃうよ?」
「おお!お肉♡」

「今日豪華だね」
って。
相変わらず、美味しい美味しいって食べてくれる♡
そんなところはすごく好き。
「muu天才♡」
とか言ってくれたりして。

でも。
初めてyyyyが家に来て、ご飯を作ってあげたときはシンクまで食器を運んでくれて洗おうとしてくれた。
「あ、いいよいいよ。食洗機に入れるから」
なんて言っちゃったからか、それ以降片づけをしてくれることはなかったな。

今日は…。
会話もそこそこにご飯を食べ終わったら私が食器を片づけている間に、タバコを吸いにテラスに出ていって、それっきり戻ってもこなかった。

え?
なに?
どういうこと?

どうやら部屋に籠ったらしい。

嘘でしょ。
ごちそうさまも言わないで?
食器もそのままで?

私はその事実に嫌な動悸がしてくる。
彼に対する不満が爆発しそう。
怒るとかじゃなくて意味不明すぎて気持ち悪くて吐きそうで息苦しくなる。

なんで自分の家なのにこんなに居心地が悪いの?

気づいたら家を飛び出していた。

携帯を片手に財布は持って出なかったから、どこか店に入るわけにも行かず、近くの公園でただひたすら心が落ち着くのを待つ。
友だちにLINE。

「家出しちゃった…」

友だちには
「多分その彼はmuuが家出したことにも気づいてないよ?」
「寒いし風邪引いちゃうから早く帰りな」
と言われる。

うん。
そうだよね。
わかってる。

私がどうしてるかなんて今の彼にはどうでもいいこと。
きっとこないだの「muuがテレビ見てるんだと思った」って感じだよね。
それより宿題やらないとだもんね。

気づいて探しにきてくれるなんて少女漫画みたいなことは考えてないよ?
私こっそり出てきたから、出かけたことにすら気づいてもいないと思うわ。
馬鹿みたい。
でも息苦しかったんだもん。

なんで息苦しかったのか今でもよくわからないんだけど。
どうしても耐えられなかった。
頭で考えるとかじゃなくて、それはもう生理現象みたいなものだった。
彼が私の存在を無視して私の家で好き勝手にやっていることに耐えられなかったのかもしれない。
あ、これは今になって考えたことだけど。

1時間くらい公園でバスケをやっている青年たちを眺め、気持ちが少し落ち着いたので家に帰る。

彼の部屋のドアは閉じたまま。
ドアの下の塞がれた猫の出入り口から電気の光が洩れている。

家の各部屋のドアには猫用出入り口が開いていて、彼がいないときにはお出入り自由にしていたんだけど。
こないだから彼はその猫用出入り口を塞ぐようになっていた。

ギターケースの中がお気に入りだったのにね↓







「猫追い出したでしょう?」
って聞いたら、
「だって俺、猫アレルギーだよ?」
と返される。

知ってるけど…。
郷に入れば郷に従うみたいなこと言ってなかったっけ?
「セレスタミン飲めば大丈夫」
とか
「慣れるくさいっすね」
とか
「muuんちの猫は大丈夫」
とか言ってたじゃん。
あれは嘘だったの?

そう。調子のいいこと言ってただけだよね。
家に潜り込むために。

でもまだこの時は彼を信じたかった。
おかしい状況だと思ってるし、体が拒否反応を起こしてるにもかかわらずね。笑

今が忙しいだけ。
新しいバンド始めて間もないから。
メンバーともいろいろあって大変そうだし。

今は支えてあげるべきなんじゃないの?

気を取り直してドアをノックする。
なんかもう、彼の部屋になっちゃってる気がして、勝手に入るのも憚られる。
返事なし。
聞こえないのかな?

「yyyy?」
声をかけるのもなんだか緊張してしまう。

「私もう寝るね?」

yyyyは当然のことながら、私が外へ出ていたことも知らず、
「muu―――!テレビ直そうよ!」
と言う。

そう、彼の弟の所に持ってくテレビと交換したいとかなんとかって話もあったけど、実は壊れていた母親のテレビ。

なんで?と思ったら、
「そしたらmuuここにいられるじゃん。俺が仕事してる間」

ああ。
そうきたか。笑

そう言われちゃうとやっぱり嬉しくなっちゃうじゃない。
私のこと気にしてくれてたのかなとか。
前みたいに仕事の邪魔してもいいよって意味なのかなとか。

うん。
yyyyが仕事してる間、せめて傍にいたいよ。
テレビじゃなくてもマンガ読んでるとかでもいい。
おとなしくしてるから。
それでたまに話しかけて。

まぁ、そんなことは夢のまた夢に終わるんだけど。
さっき息苦しくて家出した私はどこへやら。
いや、彼に対する不満が澱のように溜まっていくのを感じていたから、yyyyにちゃんと話さなきゃなぁと考えてた。
じゃないとそのうち爆発するから。

黙ってようかとも思ったけど、やっぱり無理。

「私ね、実は家出してたんだよ」