庭のミツバツツジと土佐みずきが満開です。
今年初の蕨を採ってきた夫。
「これ、どうやって食ったっけ？
卵とじか？」
ああ、ここまで来たか。
昨年まで夫は、蕨を採ってくるとすぐ自分で灰汁抜きをし、和物を作っていた。
それを忘れてしまったらしい。
夫の物忘れは、もう日常的になったので、驚きはしないけど、その度気持ちが少し凹む。
夫の前で、灰汁抜き専用にしている器に蕨を入れ、重曹を振って、沸騰した薬缶のお湯を入れる。
「どう？ 思い出した？」
夫は、何も言わず、また畑に行き、今度は独活を採ってきた。
「皮は金平、実は酢味噌和えな」
あらー、独活の食べ方は覚えてるんだ。
ちょっとホッとした。
独活は、捨てるところが全くなし。
皮は、ごま油で炒め、金平に。
こんなに美味いものはないと、夫は毎年これを楽しみにしている。
実は、サッと茹でて、酢味噌和え。
葉は、後日天麩羅にします。
灰汁抜きした蕨は、生姜と人参を千切りにし、フジッコの塩昆布とビミサンを少々加え、良く混ぜ合わせたら出来上がり。
晩酌の肴に出した。
「どう、思い出した？」
「ああ、思い出した！ 美味いもんだな。蕨がいっぱい採れたら、ＳとＴにもやるだ」
「そうね、次は自分で作ってね」
「わかった！今日は、全部春の味だ！」
初めて食したかのように、満足そうな夫の表情を眺める私は、次は何を忘れるのかと、複雑…。