大学3年の夏、空手部の同輩、合気道部主将と、3人で静岡県御前崎の水産会社に就職した合気道部の先輩の家に泊りがけで遊びに行った。
大きな借家で部屋も広く、美味い魚介類がたらふく食えると言うので期待に胸躍らせていた。
田舎の漁師町だから飲み屋さんもなく、明るいうちに一軒の酒屋へ行った。
酒屋なのだが奥に広間があり、宵の口から漁師が集まり、樽から酒をついで飲んでいた。
10人近い漁師達と話がはずみ その内の一人が・・
お野人が水泳の国体選手だったと先輩から聞いて・・・
御前崎の海は荒いので有名、皆子供の頃から泳いでいたが、ただ一カ所だけ誰も入れん絶対に泳げん海がある。
水泳のオリンピック選手でも絶対に不可能な魔海じゃ
そこに飛び込んだ男は 大昔から誰もおらんわ・・
と・・自慢げにおっしゃった。
先輩が・・
「おい・・ここまで言われて 黙っとるんか」
お野人は・・
「世の中に絶対などないわ やってやれんこともやれることも・・」
漁師は、この海はプールとは勝手が違うと、海の男のプライドがそう言わせたのだろうが・・
台風の大波でも海に飛び込んでサザエ獲っていたから、それくらいは行けるかも・・と、つい、言っちゃったのだ。 つい・・
「やれん」を強調、やれるかやれんか見んとわからん
・・と、言いたかったのだが、国語力がなかった。
後で考えたら、どちらもやれると言っているではないか外科産婦人科
余計なこと言わなきゃ良かったのだが、後の祭り・・
漁師の顔色が変わり
「それじゃあ お前 飛び込んでみい
それが出来たら 家一軒建てたるわ」
回りの漁師達も
「おい兄ちゃん家一軒じゃ こいつ必ず約束守るぞ
やってみんかい~」
とはやし立てているし
まず、海 見てから・・と言おうとしたのだが
「じゃ やってみっか・・」と簡単に言っちゃった。
先輩が・・
「ビール一本飲んどるし、すぐ暗くなるから止めとけ」
と心配して言ってくれたが この雰囲気は止まらない。
漁師はトラックの荷台に酒持って乗り込み、駆け付けたギャラリーは十数人に膨らみ、一大イベントに発展してしまった。
「行け~海洋魂じゃ 一発やっちゃらんかい」
・・と、無責任な応援をしていた海洋学部の仲間も、現場に着いて荒れ狂う海を見た瞬間
「な・・やめよ やめとこ・・漁師に謝れ 」
・・と、急変心 ポリシーに欠ける奴らだ
その漁師も
「ほれ見ろ・・この海に人が入れるはずなかろうが」
勝ち誇ったように言った。
どうしよか迷っていたお野人の 眉が・・ぴくぴく
年中速い潮流がぶつかっているみたいで渦巻き、急深で頭ほどの大きな石がえぐれるように盛り上がり、3m近い波が二等辺三角形に逆立ち、水面は白い泡で雪が積ったようになっている。砂利なら楽勝なんだが・・
お野人の想像をちょいとばかり、いや・・
かなり超えていた。
飛び込んだ瞬間波に戻され、石に打ち付けられそうな雰囲気・・
電気洗濯機の中のミンチ・・が、思い浮かんだ
これではサーフィンどころではない。
たしかにこんな海に飛び込むバカはいない・・が
後には引けん我が身がうらめしあさめしひるめしや
小学生で8mの岩山から海に顔面から飛び込んで失神した時も同じだ。 その ピクリ・・が災いを招いた。
漁師達は酒呑んでお祭り騒ぎ、止める者もいない。
絶対に入れんと安心し切っているからだ。
進めば天国へ行けるかもしらんが、止めれば恥地獄・・
おやじん・・ 四面サケ・・いや、四面楚歌
晒しの腹巻きと八尺ふんどしを外してスッポンポンになったが
坊やも寒そう・・ ピクリともしない
何処から海に入るか考えていたら その漁師が・・
「な・・悪いことは言わん もういい お前の度胸はわかった
な・・って、何度も
お野人は ピクリ・・と笑って言った
「おい・・家・・忘れんなよ・・男の約束じゃ」
続く・・
飛んで落ちてキンキラキン1
http://ameblo.jp/muu8/entry-11599048876.html
飛んで落ちてキンキラキン2
http://ameblo.jp/muu8/entry-11600284806.html
弁天島 高さ8mくらいかな・・
冷たくて 冷たくて ピクリとも・・
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