昨日の夕方、ホテルのラウンジで久しぶりに親族と再会したが・・
むー母はじっとコップの水を怪訝そうに見つめていた。
「母ちゃん コップの水がどうかしたか」
「何で 水が出て来るのよ」
「何でって・・飲食店は何処でも水かお茶が出る」
「頼んでもいないのに 何で出すのかねえ・・」
「出すのかねえ~って、出すようになっていればしょうがないだろうが」
「お前・・いつも水飲むのかい」
「ほとんど飲んだ記憶 ないな・・ カレー食っても」
「でしょ? 飲みたい人が頼めばいいのに・・」
「そうだな サービスのつもりでもサービスになってないな」
「この水捨てるでしょうしコップも洗うでしょ?」
「無駄と言えば無駄な労力だな」
「もったいないじゃないの 水は大切にしなくちゃ」
「砂漠の店じゃ とてもやれんな・・」
「お前の店は 水出すのかい」
「いや・・飲みたければ自分で好きなだけ何杯でもどうぞと ポットにむー茶入れてドンと置いてる」
「それでいいんだよ これじゃ水も可哀そうだけど 出す人も報われず可哀そう」
母はまったく外食する事がないが、ないからこの矛盾がよくわかるのだろう。
慣れてしまえば当たり前、当たり前にはなかなか感謝の気持ちは湧かない。
飲食店で料理が来ると・・「ありがとう」とお野人は礼を言うが、水持って注文聞きに来た時は言わないな・・「水 ありがとう」って。
水を出す方も出される方も事務的で当たり前になり、深く考えることもない。
野人は、当たり前の常識の矛盾を崩し続けて来たが・・ むー母 まだまだ鋭いな。
何故水が出るのよ・・なんて聞かれたのは初めてだ。
「母ちゃん・・コーヒー飲めるか?」
「コーヒーくらい飲めるわよ 砂糖があれば」
スティックシュガー1袋入れてあげると・・飲んだ瞬間
「苦いじゃないの これじゃ飲めない」
もう一袋の半分入れてあげると・・
「ケチらず 全部入れなさいよ・・」
「母ちゃん 甘過ぎないか」
「丁度いい湯加減よ 角砂糖にすれば好みで入れられるのにね~
」
「これも便利だろうが・・」
「不便よ 両手使って破らなきゃ出ないし ゴミが4つも出るわ こんな袋などなくても誰も困らないし まったく必要ないものでしょ」
「誰が考えたのこんなバカなことを・・分量が決まったお薬ならともかく 砂糖や塩の量は自分で決めることでしょうが 塩だったらどうするのよこれ」
「・・・ ・・」
94歳が客を訪ねて来ると聞いて、ホテルスタッフは大変気を使ってくれた。
野人車も一般駐車場ではなく玄関横の社用車の場所を空けてくれた。
親切なドアマンが母に言った。
「車椅子 ご用意しましょうか」
「あれはお年寄りに使わせてあげなさい」
「94歳にしてはお元気ですね~」
「まだ93歳よ・・」
むー母はラウンジのソファーでブツブツ・・
「1歳違えば随分違うのに お前と一緒でデリカシ~がないねえ」
ホ・・ホ ホケキョ
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