数日前にむー母の検査結果が出た。
肺癌 詳しくは肺線がんと言う。
状況から、完治は不可能だと・・
それを聞いた母は驚きもせず、医師が話す抗がん剤、手術、放射線などの延命治療を、おばばギャグを交え笑いながらすべて拒否した。
どれも効果なし・・と言うのだからそりゃそうだろう。
「92年・・もうこれだけ生きればじゅうぶんだから面倒くさいのはや~~よ」と。
さすが、お笑いとギャグはお野人譲りだな。
お野人も医師の言葉を一緒に聞いていたが、動揺はまったくなかった。
最近母はいつもとは違う夢を毎日連続して見た。
親族、古い友人すべてが次々と夢に出て来たらしく、それで近々迎えが来るのを悟ったようだ。
忘れかけてた人まですべてと言うのだからあちらの世界に余程顔が利いてたんだな。
母と腕を組んで歩いたのは子供の時以来だ。
診察室への行き帰り、34キロに縮んだ母は野人の腕にぶら下がるようにして楽しそうに歩いていた。
ロビーで母に言った。
「母ちゃん オレの出番だな・・」
「あんたの・・?」
「医学で治せなければ オレが治してやる」
「あははは いいよ そんなことは」
「またフォークダンスしたいだろ? コーラスも詩吟も読書も 老後の楽しみなんだろうが~」
「そりゃあそうだけど・・」
「じゃ まかせておけ 言う通りにすればいい」
「はいはい わかった」
「母ちゃん スーパー行きたいだろうが 特売所」
「ずいぶん行ってないからねえ」
「今夜はうなぎじゃ 近々天然うなぎも食わせてやる」
母の大好物のうなぎを買いにすぐ前のスーパーへ・・
母とスーパーでの買いものは生まれて初めてだ。
枯れ枝のような手を引いて1周したが、母は疲れるのか時折棚に寄りかかっていた。
「私がお金出すから」と言うのだが、それじゃいつまで経ってもこちらが扶養家族ではないか。
母は、行きつけのスーパーよりマヨネーズはこちらのほうが10円高いと口を出す。
一番安いのでいい・・とか、無駄使いはおやめ・・とか、やたら口うるさい。
それだけピンピンしていれば当分は大丈夫、これからがやっとお野人の出番だ。
母の夢の中で母が一番印象に残っているのは野人1歳の時に亡くなったむー父だ。
その父が若くハンサムな時の姿で、山の上からさっそうと車を運転して目の前を笑いながら過ぎ去ったと言う。
その車は鮮やかな青いスポーツカーだった。
黒い霊柩車ならともかく、免許のない父ちゃんが青いスポーツカーなど乗れるはずもない。
しかも父は母を乗せず笑いながら前を走り去った。
「可笑しいわね~私を乗せないなんて」と母は笑う。
父は余裕の笑顔でヒントを残していった。
青いスポーツカーは青龍・・野人だ。
お迎えの車に乗せるか乗せないか、野人がそのカギを握っている。
母は気付いているだろうが野人の心はまったくブレていない。
それでも涙はこぼれる・・それが人間だろう。
母の好きにさせ、野人流健康法は押しつけなかった。
塩、茶、協生野菜も、自分はいいから必要とする人に分けてあげなさいと母は言い、食べようとしなかった。
食べさせなかったことを後悔などしていない、立場が逆だった遠い子供の頃を思い出しただけだ。
野人の怪我よりも喧嘩相手の怪我を心配する母だった。
子供の頃から祖母と母の凄まじい力を見せつけられて来た。 野人の別の顔「陰陽師ムー」の力はそこから授かったものだ。
母は昔、自力で結核を治したがその力は残っていない。
このままでは母の言う通り近々お迎えが来る。
命運を伸ばせるのは青龍・・
潰れた母の肺は必ず元に戻してみせる。
野人にしか出来ないのだから・・・
大声出せなくなったむー母
http://ameblo.jp/muu8/entry-12048144383.html
むー母 明日から入院
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お弁当
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母ちゃん・・
愛犬ポチ