石段の上りは問題ないのだが、母はいつも下りに気をつけていた。
たまたまこの日は足を踏み外してコケてしまった。
コケたと言うより落ちた・・が正しいのだが、石段はわずか2段だからどちらでもよい。
勢い余って1回転、あちらこちら激痛で動けなかったらしい。
石段から転げ落ちれば誰だって痛い。
その痛さの話が延々と続くので・・
「母ちゃん 怪我の具合・・」
90歳ババがコンクリートの石段で一回転すればただでは済まない。
骨折や捻挫やたんこぶが気になる。
「痛さ」の程度の話を神妙に聞かない野人に不満そうな母の話は続いた。
医院から5人が飛び出してきて助け起こそうとしてくれたが・・
「痛いから 動かすんじゃない~」 と・・
母はのたまった。
その迫力に誰も手を出さなかった。
皆さんに見守られながら母はコンクリートの上にしばらく寝ていた。
病院の前だから救急車もいらない。
あちらこちらの骨がポッキーチョコのように折れたと思いきや・・
何ともないようなので母は・・結局
自力で転び 自力で起きて・・歩いて帰った。
膝も痛いが、腕を見ると内側が強烈な青あざになっていた。
階段の角で腕の内側を思い切り打ったようだ。
内側・・って、いったいどんな転び方したのか見当もつかない。
途中の公園のベンチで湿布薬をさっそく貼り付けたようだが・・
いただいたものがすぐに役に立ったと・・
喜んでいた
怪我の痛さより、先見の目で湿布薬をいただいた方がはるかに嬉しかったようだ。
ルンルン気分で湿布を貼る姿が目に浮かぶ。
災い転じて福と考える思考は野人譲りだな・・
「母ちゃん・・湿布 役だって良かったな」
「そうなのよ~ ドッグタイミングう~」
「結局 骨も折れなかったんだな」
「そう~なのよ~~ ラッキョ~~」
「おババ・・ギャグ・・か?」
「得意の受け身・・役に立ったなあ」
それから、フォークダンスとシビンと短歌で鍛えた足の運びや受け身の講釈が・・始まった。
言わなければ・・・良かった。
結局たいしたことはなかったのだが・・たいしたものだ。
本能と知性であみ出した独特の杖術も素晴らしいが、運足と受け身も素晴らしい。
一回転して床運動のように何事もなくスパッと置き上がればもっと素晴らしかったな。
いただいた鼻水止め薬はよく効くが、眠くなるので一回使って止めたと言う。
最初からそんなものはいらない、ティッシュでも詰めておけばいい。
最後に母がいった。
いつものように・・・
「ところで・・お小遣い・・あるの? 」
野人にお小遣いをやるのが母の生き甲斐で、その為に長生きしているのだ。」」
だから野人は・・「ビンボーの男」に徹している。
人は、必要とされる限り生き続けようとする。
御馳走が人間の主食 母の理論
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母ちゃんの究極の杖術1
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母ちゃんの究極の杖術2
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母ちゃんの究極の杖術3
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