船酔いの洗礼 | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

穏やかな海

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穏やかなしょうへい君

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穏やかではなさそう・・・ 悶絶しとる
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1週間前、福岡から伊勢へ越してきてマリンビレッジの手伝いをしているアトピー青年「しょうへい君」を海に連れて行った。

この日の客は10人、お手伝いは出航準備と入港後の片付けだけで、客同様に自由に釣らせることにした。

クーラーも持たせ、スタッフの昼食「キスの天ぷら」はしょうへい君にかかっていた。

ところが・・釣り場に着いて釣りを始めた途端に船酔いでダウン・・

キャビンに横になり、トイレに走ってはまたダウン。

他の客はまったく酔わず元気よく釣りに励んでいる。

結局、入港までしょうへい君は・・寝た切り老人だった。

入港後は飛び起きて元気よく「お片付け」に励んでいたからまあいいだろう。

最初はこんなものだ、そのうちに慣れる。

昨日、また福岡からお母さんが伊勢に来て三日間滞在。

しょうへい君は親孝行していたがムーさんは多忙で親孝行出来なかった。

船酔いほど苦しいものはないが、船酔いで死んだ奴もいない。

友人のマグロ船の船乗りは、出航の度に最初の数日間は必ず船酔いしていた。

野人が最後に酔ったのは大学2年の3日間の夏季海洋実習だ。

「台風で欠航だろう」と各地から集まった学生は予定の半数に満たなかった。

台風接近中と言うのに船長は出航したのだが、その理由がまたばかばかしい。

「君達の根性に応えてここで出航しなければ男がすたる」・・とのたまうのだ。

別に根性に応えなくても、男がすたっても良いではないか。

皆、単位を落とすと困るから来たので、海に出る気などさらさらなかった。

海洋調査船は清水港を出航して最初に駿河湾の水深3千mの底の水温を測るのだが、波高は700トンの船のブリッジの高さをはるかに超えていた。

「この船は45度傾いたら危ないが、あと3度あるから大丈夫よ」・・船長は言った。

合羽着用でも頭からまともに海水を被ればパンツまでずぶ濡れだ。

エレベーターのような状況で、ゲロ吐きながら一抜け・・二抜け・・野人はゲロ吐きながらも船長の根性に応え任務を全う。

最後に教官までが「う・・いかん オエ」と抜けた時、太平洋一人ぼっちになった。

他に誰もデッキに残っていない。

「何でこんな大時化の中、測らなきゃならんのよ、海の底の水温・・・」

そんなもんは年中一定に決まっているだろうが。

バカバカしいので野人もリタイヤ・・船倉のハンモックの寝床で寝た。

ありゃあ・・・一般人ならバカでもないかぎり酔うだろう。

バカでなくてよかった・・・